2024年3月14日 予算特別委員会
農林水産部(第二部)に対する質疑(大要)
・水産業再生の取り組みについて
【斉藤委員】
今年度の主要魚種であるサケ・サンマ・スルメイカの水揚げ量、魚市場ごとの水揚げ量の現状と震災前との比較を示してください。
【漁業調整課長】
令和5年の主要魚種の水揚げ量として、サケは134トンで震災前の0.5%、サンマは4366トンで震災前の8%、スルメイカは2589トンで震災前の14%となっております。
魚市場の総水揚げ量については73000トンで震災前の41%、水揚げ金額は160億円で震災前の68%となっております。
【斉藤委員】
特にサケが0.5%と激減して、前年と比較しても30%程度と。壊滅的な状況という感じがします。
先ほどサケの資源回復のことで、海水温の上昇に対応した稚魚を育成するということは前も言われたことで、あのときは北上川に上ってくるサケも話題になりました。いま北上川にほとんど戻ってきていないんですね。やはり海水温の上昇に対応する前にあった議論というのはなかなか厳しくなっているのではないかと思いますがいかがですか。
【水産振興課総括課長】
サケの回帰については、これまでの研究結果で、高水温にさらされると、細胞を守る仕組みが働くという研究結果が出ており、それらの遺伝形質が引き継がれるかどうかということをいま研究しているところでございます。
具体的には、研究の途中ではございますが、サケの精子を凍結しておいて、早い時期のサケというのは暑さに強い形質を持っているので、その精子を凍結して保存しておき、後半のメスと掛け合わせる形で遺伝形質が引き継がれないかということを研究しているところです。
【斉藤委員】
決算のときにも聞きましたが、魚市場別の水揚げ状況で、震災前を超えているのが普代村と野田村なんですね。普代村は153%、野田村は162%です。理由は「ブリ・マイワシなどの水揚げ量が増えた」と。しかしこれはどこでも増えているんですよね。普代村と野田村で震災前と比べて1.5倍以上の水揚げになっている理由は真剣に検討したでしょうか。
【漁業調整課長】
個別の魚市場の水揚げ状況の解析については、現段階ではやれていないところでございます。ただ、漁協の関係者の方等にもおききしておりますと、やはりサケがダメになってきた段階で、マイワシ・ブリ等の青い魚といいますか、回遊してくる魚に比較的早くシフトしていたということを組合長からもお話を受けていたところなので、先ほどの答弁につながっていたところでございます。
【斉藤委員】
普代村・野田村は小さいところですが、普代4662トン、野田2515トンなんですね。釜石よりも少し少ないぐらいの規模です。やはり震災前から1.5倍に水揚げ量を増やしているということで、これは突出しているんですよ。全体が41%なので。それがどのように漁業の振興に力を発揮しているのかどうか、そういうところも含めてしっかり分析する必要があるのではないかということを問題提起しておきます。
次に、岩手の強みである養殖なんですけれども、ワカメ・コンブ・アワビ・ホタテ・カキ、これはデータいただきましたので、私から紹介しますと、ワカメは震災前比51%、コンブは35%、アワビ29%、ホタテ20%、カキ53%と。岩手の強みの養殖がこれまたことごとく大幅に減少していると。この要因についてはどのように受け止めているでしょうか。
【水産振興課総括課長】
ワカメについては、親潮の張り出しが弱く、水温が2〜3度高かったということ、降水も少なく栄養塩が不足したということで、伸びが悪かったという理由でございます。
アワビについては、磯焼けが拡大しましてエサとなるコンブ等が不足したことから、成長や実入りが悪かったものと考えてございます。
ホタテについては、夏場の表面水温が平年比2〜4度ほど高かったということで、ホタテ貝の生き残りに影響します23度を超過したことから、これらが影響して生産が少なくなったととらえております。
【斉藤委員】
ワカメは前年比だと94%、アワビは91%なんですね。だから前年度から落ちていたということですから、ワカメの場合は日本一といっていて、震災前比で51%まで落ち込んでいるというのは、岩手が押し出す、力にするという意味でいけば、やはりワカメで震災前比に戻すぐらいの取り組みが必要なのではないか。担い手不足が大きな要因になっていないか、もう一度そこをお聞きします。
【水産振興課総括課長】
ワカメに関しては、震災後養殖業者が減ったということで生産が減少したということも一因としてございます。
【斉藤委員】
岩手県が水産業リボーン宣言に基づく取り組みを進めていますが、成果はどうなっているかまとめて整理してください。
【水産振興課総括課長】
主なものとして、サケ資源の回復については、北海道から種卵の確保に努め、現在大型で遊泳力の高い稚魚を生産してございます。目標の7割となる5600万尾を今月から順次放流しているところでございます。
海の資源の有効活用については、12漁協で実施しており拡大しております。
サケ・マス類の海面養殖については、今年度6地区で約1800トンということで、前年度比1.5倍の生産実績となっており、さらに来年度は9地区で2000トンを超える生産が計画されており、取り組みが広がってございます。
貝類については、ホタテ貝に比べまして高水温に強く出荷までの期間が短いアサリの試験養殖を3漁協で実施しており、これらによってリボーン宣言に基づく取り組みをしながら、水産業が持続的に発展するよう取り組んでおります。
【斉藤委員】
クロマグロについてお聞きします。
令和5年度のクロマグロの漁獲状況、定置網に入っている状況、漁獲割り当ての状況はどうなっているか示してください。
【漁業調整課長】
令和5年度における漁獲量は、2月29日現在、小型魚が93.1トンで漁獲可能量の96%、大型魚が64.1トンで漁獲可能量の99%を消化しております。前年同期比で小型魚が110%、大型魚が101%となっております。
定置網では、漁獲可能量を超過しないように、入網したクロマグロの放流を行っており、令和5年度は2月29日現在で、小型魚・大型魚あわせて推定で約37万9000尾、重量で2700トンを放流したと定置漁業者から報告を受けているところでございます。
これまで県では国に対しまして、クロマグロの資源量の増加にあわせ、漁獲可能量を速やかに増加させるよう要望しているところであり、今後も国に対して積極的に働きかけていくとともに、クロマグロの漁獲管理を国際的に行っている中西部大平洋マグロ類委員会の年次総会で、小型魚の漁獲可能量を1.47倍にして大型魚に振り替え可能とする数量の拡大が採択されたことから、国は令和6年度に都道府県管理の大型魚の漁獲可能量を増加させる方針を出しておりますので、これを活用しまして漁獲可能量の増大に向けて関係者と調整しているところでございます。
【斉藤委員】
今年度の漁獲が小型魚・大型魚あわせて157トン、定置網から放流したのが2700トンで漁獲の17倍なんですよ。去年聞いたときには5倍でした。去年と比べてもかなり大量に定置に入っていると。資源が確実に回復しているということを示しているのではないか。これだけ定置に入って、漁獲の17倍も放流しなくちゃならない事態、本当に漁民から見たら、一番水揚げしたいものを放流するという、この点政府はどういう取り組みをしているのか。国際条約に基づくので、そういうところも含めてどんな議論になっているか分かりますか。
【漁業調整課長】
日本国内の漁獲可能量については、国の方針では令和4年から6年度にかけては「一定にする」ということで、現在の当初配分については固定化されているところでございます。
先ほどありました中西部大平洋マグロ類委員会については、資源が増加しているということは事実として認めているようであり、令和7年度から新しい資源管理の取り組みについて検討するとなっていますので、また来年度以降の中西部大平洋マグロ類委員会で新しい資源管理の取り組み等が議論されていくものと思っております。
【斉藤委員】
本当に去年と比べてもとんでもない規模で定置にクロマグロが入っているので、令和7年度から新しい枠組みという話もありました。遅くとも令和7年度には今の資源量の回復に合った漁獲割り当てができるように、あと国内の問題でいくと、沿岸漁業の割り当てより大型巻き網の割り当てが倍なんです。これは海外は逆なので、国内の割り当ての見直しも求めていく必要があると。定置にこれだけ入っているということを、漁獲の実績だけでなくて、実際に定置に入っている漁獲枠でしっかりアピールする必要があるのではないかと思いますので、ぜひこの問題しっかりやっていただきたい。
最後、漁業の就業者数、担い手確保の現状と取り組みについて示してください。
【漁業調整課長】
本県における漁業の就業者数は、漁業センサスによりますと、平成20年が9948人、平成25年が6289人、平成30年が6327人となっており、直近のデータである平成30年は平成20年と比べ約4割減少しておりますが、5年前の平成25年と比べるとほぼ横ばいの状況となっております。
また、販売高が1000万円以上の中核的漁業経営体数は、令和4年度は3年度より140経営体多い414経営体となっております。
県では、市町村や関係機関などと連携し、いわて水産アカデミーを核とした人材育成等により、新規漁業就業者の確保・育成に取り組むとともに、養殖業の規模拡大や法人化、新しい漁業・養殖業の導入などによる漁業経営体の経営力向上を図ることにより、中核的漁業経営体に取り組んでいるところであり、新規就業者が今後も将来の本県の漁業をけん引する担い手として活躍できるように、きめ細かな支援を行っていきます。
【斉藤委員】
中核的漁業経営体が令和4年度414ということで、前年が277でしたからこれはかなり大きな成果だと思います。
ただ、新規漁業就業者は令和4年度30人、令和3年度47人ということでありました。新規漁業就業者数の目標と比べて令和4年度の30人はどうなのか。どのぐらい必要というとりくみになっているか示してください。
【漁業調整課長】
新規就業者の確保目標としては、年間平均40数人必要というところで見ておりますので、先ほど言いましたような数字でいきますと、もう少し上積みがほしいところでございます。
【斉藤委員】
40という根拠はなんですか。
【漁業調整課長】
そちらについては、アクションプランの第二期計画で、就業者数ということで示している数字でございます。
【斉藤委員】
40というのが漁業の振興にとってどういう意味があるのかと。それがなかったらだめじゃないですか。
【漁業調整課長】
そこの部分については、ご指摘を踏まえ、今後の漁業の将来的な姿を見ながら必要な人数については改めて検討していきたいと思います。