2024年7月1日 6月定例県議会本会議
議案に対する質疑
(大要)


・能登半島地震への職員派遣について

【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。議案に対する質疑を行います。
 議案第2号は、2024年度岩手県一般会計補正予算第2号であります。20億3649万円余の補正予算であります。
 第一に、能登半島地震への職員派遣に要する経費が1060万円余、本県介護施設等職員が行った救助に要する経費が972万円余となっています。
@今回の補正予算にかかわる職員、介護職員の派遣数はどうなっているでしょうか。これまでの職員派遣数の職種と実績を含めて示してください。
A職員や介護職員の派遣要請はどこから出されているでしょうか。
B報道によると、被災自治体からの応援要請に対し、全国からの派遣数は、公費解体にかかわる分では約半分にとどまっているとのことであります。今後の職員派遣等の取り組みはどうなっているのでしょうか。

【復興防災部長】
 本県から石川県能登町への対口支援については、事務職を中心に延べ222名の職員を派遣し、住家被害認定などの業務にあたったところであり、今回の補正予算には、そのうち今年度分の県職員51名の人件費の一部や旅費などを計上しております。また、介護職員については、先月末までに延べ28名を派遣して、福祉避難所での業務などに従事いただいており、今回の補正予算案には、その実績や今後の見込みを含む人件費や旅費などを計上しております。
 職員派遣の要請元についてでありますが、被災地への応援職員のうち、対口支援のマッチングは、総務省や全国知事会などで構成する応援職員確保調整本部が担っており、介護職員のマッチングは、厚生労働省と災害福祉支援ネットワーク中央センターが担っております。また、中長期派遣については、全国知事会や全国市長会、全国町村会などがそれぞれマッチングを行っております。
 今後の取り組みについてでありますが、ご指摘の公費解体については、石川県内で22000棟余りのニーズがあるとされる中、先月24日時点では、すでに9割ほどが申請済となる一方、解体工事に着手されているのは全体の1割ほどであり、解体業者による工事の加速化に向けた方策を環境省などが検討しております。本県から能登町への対口支援は5月末で完了しておりますが、現在は中長期派遣として、土木職9名、事務職2名など計14名の県職員を石川県や能登町などに派遣しております。被災地のニーズが応急対応から復旧・復興へと移る中、道路や漁港の災害復旧業務などに従事しているところであり、今後も被災地のニーズを踏まえながら必要な支援を行ってまいります。

・経営者保証非提供促進貸付金について

【斉藤議員】
 第二に、経営者保証非提供促進貸付金が新規事業として2億7091万円余計上されています。国の新たな制度と連動した経営者保証を不要とする融資にかかる貸付原資の一部を金融機関に預託しようとするものであります。
@今回の新たな制度の意義、目的を示してください。
A岩手県信用保証協会が保証承諾した法人に対する融資の保証債務残高のうち、経営者保証を提供していない割合、件数、金額はどうなっているでしょうか。
B融資枠が10億円、貸付限度額が8000万円となっていますが、融資枠を超えた場合はどうなるのでしょうか。借換も可能だと思いますがいかがでしょうか。
C保証料率は高くなると思いますが、国の補助を含め示してください。

【商工労働観光部長】
 制度の意義、目的についてでありますが、中小企業が融資を受けるにあたって、経営者個人が会社の連帯保証人となる経営者保証については、思い切った事業展開を躊躇させる、また、円滑な事業承継や早期の事業再生を阻害する要因になっているなどの課題があり、国において経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた検討が進められてきたところでございます。今般、都道府県等における制度融資において、経営者保証を不要とした場合に上乗せされる保証料率の一部を補助する制度を国が時限的措置として創設したところでございます。このため県におきましても、この制度を活用した新たな融資制度を創設しようとするものでございます。
 保証債務に占める経営者保証を提供していない割合等についてでありますが、令和6年4月末現在の法人に対する保証債務件数は18023件となっており、このうち経営者保証を提供していないものは1435件、割合は8%となっております。同じく、保証債務残高2596億1130万円余のうち、経営者保証を提供していない金額は359億423万円余、割合は13.8%となっております。
 融資枠を超えた場合の対応についてでありますが、融資枠については、現在の県単融資制度の貸付状況等を踏まえたうえで、十分なものとして設定したところでありますが、仮に想定以上の申込みがあった場合等においては、必要に応じて追加の予算措置等を検討してまいります。また、県の融資制度の既存借入金の借り換えも可能としております。
 保証料率についてでありますが、まず本制度の保証料率は、事業者の財務内容等に応じて0.25%または0.45%が所定の保証料率に上乗せとなります。この上乗せ分に対しまして、令和7年3月末までの保証申込み分については、0.15%、令和7年4月から令和8年3月末までの保証申込み分については0.1%、令和8年4月から令和9年3月までの保証申込み分については0.05%に相当する額が国から補助されることとなっております。

・緊急雇用創出事業臨時特例基金条例の一部改正について

【斉藤議員】
 議案第6号は、緊急雇用創出事業臨時特例基金条例の一部を改正する条例です。基金条例の有効期間を2029年(令和11年)3月まで延期しようとするものであります。
@事業復興型雇用確保事業が、当初予算では9717万円計上されています。沿岸12市町村に所在する事業所が、被災3件に勤務または居住していた求職者を雇用した場合、一人当たり3年間で最大120万円を助成するものであります。昨年度の実績はどうなっているでしょうか。
Aこれまでの累計の実績はどうなっているでしょうか。

【商工労働観光部長】
 事業復興型雇用確保事業にかかる昨年度の実績ですが、求職者の雇い入れ費については、新規として14事業所で、久慈市1人、岩泉町1人、宮古市21人、大船渡市4人、陸前高田市9人で計36人、1518万7千円余の助成を行っております。また、継続分を含めると、8市町村の48事業所186人に対して4591万4千円の助成を行っております。また、住宅支援の導入等における住宅支援分の助成については、一事業所に対して45万円の助成を行っております。
 事業復興型雇用確保事業にかかる累計実績についてでありますが、平成29年度から令和5年度までに沿岸11市町村の159事業所・562人に対して、4億7934万7千円の助成を行っております。

・閉伊川筋藤原地区水門災害復旧工事の変更請負契約について

【斉藤議員】
 議案第13号は、閉伊川筋藤原地区水門災害復旧工事の変更請負契約の締結に関し議決を求めるものであります。
@今回の変更請負契約は、水門土木工事の分でありますが、14回目の変更で、当初の契約額70億3652万円余が、今回の変更では353億3043万円余と5倍以上となるものです。事業費が当初の5倍以上となるのでは入札をした意味がなくなるのではないでしょうか。
A工期は2014年3月6日から2027年3月15日となっています。すでに10年が経過し、さらに3年かかります。あまりにも工期が長すぎするのではないでしょうか。今後も事業費の変更はあるのでしょうか。
B宮古湾の津波対策については、当初水門案と河川堤防かさ上げ案がありました。水門案が約167億円、堤防かさ上げ案が約235億円という試算が示され、水門案になったというのが経過であります。結果的には、河川堤防かさ上げ案のほうが早く、安く実施できたのではないでしょうか。しっかり検証されるべきではないかと考えますがいかがでしょうか。
C現在工事中の閉伊川水門では、どの程度の津波に対応できるのか示してください。今検討されている千島海溝沿い日本海溝沿いの津波には対応できるのでしょうか。

【県土整備部長】
 閉伊川水門工事の発注方法については、被災地の復旧・復興を最大限早めるため、入札公告において、詳細設計にともなう工事費の変動については、設計変更で対応するという条件を明示した上で波注する標準断面図等による発注方式により進めてきたところです。この方式では、工事の内容の細部の設計にかかる時間を前倒しして請負契約を締結できるものであり、労務者や資材等の準備を含め早期に着工できるものです。一方でこの発注方式については、地形の条件や近傍の類似施設の構造など、積算の開始時点で得られる情報をもとに最善の設計による発注をしたもので、工事着手後に当初想定できなかった地質条件等により工事費が増額となる場合がございます。変更請負契約の議案については、工事で使用する作業船を工事場所に進入させるため、浚渫作業を追加することによる増額変更について、内容を十分精査した上で提案しているものであり、ご理解いただきますようお願いいたします。
 閉伊川水門の工期についてでありますが、閉伊川水門は施工箇所の水深が深いこと、航路部を有することなどから、他の水門と比べて規模が非常に大きく、コンクリート打設や基礎、仮閉切など、それぞれの施工量が多いものとなっています。また、施工においては、地中の岩盤の起伏が大きく、多数の巨礫が確認されるなど、複雑な地質条件であることが判明し、その対応に時間を要したことに加え、平成28年台風第10号により現場が被災し、手戻り工事が発生したところです。さらにこの現場において、常に航路を確保しながら工事を行う必要があり、並行作業ができないことなど、施工上の制約があることから、他の水門よりも多くの工事日数が必要となっています。
 今後の事業費の変更の見込みについてでありますが、今後実施する工事の期間中において、資材等の価格変動や施工条件の変更にともなう工法の変更など、設計変更の検討が必要となる場合には、発注者において、受注者および必要に応じて設計コンサルタントと協議した上で、内容を十分に吟味し工事費について精査していきます。
 宮古湾の閉伊川河口部における津波対策についてでありますが、平成23年度に水門案と河川堤防かさ上げ案を対象として、まちづくりへの影響や最大クラスの津波による影響、経済性等を総合的に検討し、宮古市の意向もうかがったうえで水門案を選択し、工事を進めています。河川堤防かさ上げ案につきましては、現在の水門案と同じレベルで事業費や公共施設とするためには、より詳細な測量・地質調査・設計ならびに用地交渉をその堤防の地点等において行う必要がありまして、現在の水門案の工事に見合う費用での比較は困難であると考えています。水門案につきましては、経済性や工期だけでなく、まちづくりへの影響や最大クラスの津波による影響など、総合的に勘案して選択したものであり、現時点においてももっとも優良な案であると考えています。今後も工事の縮減に努めながら、宮古市民の安全安心の早期確保に向けて、早期完成に向けて取り組んでまいります。
 閉伊川水門の津波への対応についてでありますが、本県の津波対策については、数十年から百数十年の比較的頻度の高い津波に対し、防潮堤等により人命と財産を守ることとしており、閉伊川水門についてもこれに対応できる高さとしています。一方、最大クラスの津波に対しては、住民の避難を軸に、土地利用、避難施設の整備など、ハードとソフトを総動員する多重防御の考え方で減災することとしています。宮古湾におきましては、最大クラスの津波として、東日本大震災津波に加えて、日本海溝モデルおよび千島海溝モデルによる津波を想定しており、これらの津波は水門や防潮堤を越えるものでありますが、ソフト施策として市町村の避難計画等を検討するための基礎となる津波浸水想定を令和4年3月に公表しています。住民の円滑かつ迅速な避難行動を促すため、津波出前講座や現場見学会など、さまざまな機会を通じて津波ハザードマップの確認等にかかる周知等について引き続き取り組んでいきます。

<再質問>

・能登半島地震への職員派遣について

【斉藤議員】
 能登半島地震への県職員の派遣ですが、取り組まれた職員の皆さんには心から敬意を表したいと思います。
 ただ、ちょうど今日で半年が経過したと。新聞・ニュースは一様に「復旧が進んでいない」と。先ほど公費解体の答弁もありました。完了は4%なんですよ。元旦の被災のままの姿が能登半島の特に北東部はまったく変わっていないと。本当に大変な状況です。日本共産党は、現地に民主団体と共同支援センターを設置して、被災者、特に仮設住宅を訪問しています。そうした声も含めて、私は大変切実な深刻な実態は変わっていないと。
 一方で応援職員は、これはおそらく国が音頭をとっているんだと思いますが、本当にこれで十分なのかと。やっと今日国が150名規模でタスクフォースを設置すると。おかしいんじゃないでしょうか。半年経過してから部局横断のタスクフォースをこれからやると。ちょっと違うんじゃないかと思うんですね。
 それで、岩手県の応援本部の対応状況、一番新しいのが第40報、5月21日付なんですが、4ページにこういう記述がありました。自治体支援で、「東日本大震災津波の経験に基づく知見の提供等を行ってきた」と。知事も石川県にそういうことをやったということもありました。東日本大震災津波のどういう経験・教訓を伝えてきたのか。それは生かされているのか。このことをお聞きしたい。
 もう1つは、応援本部の資料を見て、いろんな総務省や内閣府や全国知事会、下水道協会など、いろんなところから要請がきているんですね。窓口が一本化されていないんですよ。これが今度の復旧の取り組みの障害になっているのではないかと。これは6月28日付の朝日新聞ですが、災害が多発しているイタリアでは、1980年のイルピニア地震直後に「市民保護局」というのをつくり、ここに警察、消防、ボランティアが24時間体制で常駐の体制をつくって、被災後48時間以内に食事・ベッド・トイレを配置する状況をつくっていると。やはりこういう教訓をしっかり学ぶ必要があるのではないかと思います。

【復興防災部長】
 知見の提供でありますが、本県からは被災者の支援の取り組みを含めて情報提供、助言させていただいておりまして、石川県においても心のケアセンターをはじめ被災者支援の体制が随時整いつつある状況と認識しております。
 被災地の課題についてでございます。かなり課題が数多くご指摘されておりまして、政府においてもそういった課題を含めて、現在ワーキンググループにおいて今後の災害対応を含めて検討を行っているという状況でございます。
 いずれにしましても、石川県の意見をうかがいながら、被災地において必要な支援を引き続き私ども行ってまいりたいと考えております。

・閉伊川水門工事について

【斉藤議員】
 当初水門が167億円、堤防かさ上げ案が235億円でした。先ほど契約変更で出ているのは土木だけの契約額で、合計すると475億円なんですよ。本当に大変な額に上がっていると。そういう意味で、今でも水門が良いという部長の答弁でしたけれども、5倍以上に土木工事だけでふくれ上がってしまった。10年間だけで14回の変更契約ですよ。そのうち2回は1回で100億円以上の契約額の変更です。これからも変更はあり得ると、異常な答弁でありました。本当にこんなことでいいのかと。しっかり検証すべきではないかと思います。答弁を求めます。

【県土整備部長】
 閉伊川水門につきましては、先ほどお話しましたけれども、他の水門と比べて非常に現地の地形の状況等が複雑であるということと、水深が非常に深いということ、そしてこれまでT期施工―左岸側の施工とU期側の施工を今やっているのですが、ボーリング調査をするにしても、中をすっかりドライにしなければ詳細なデータ等がとれないということもありましたので、その段階段階でできる地質調査、そしてその時点で得られた知見、その時点での設計の基準に当てはめて適正な設計・積算を行った上でやってきております。
 この変更数につきましては、受注者もそうですが設計したコンサル等を交えて、三者できちんと吟味して、その都度その都度得られている技術的な知見をもとに必要な設計を行った上でやってきたものでございますので、ご理解をお願いしたいと思います。