2024年10月7日 9月定例県議会本会議
議案に対する質疑(大要)
・台風5号被害への対応について
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第2号、岩手県一般会計補正予算(第4号)、議案第32号、補正予算(第5号)について質問いたします。
補正予算第4号は、2024年台風5号の被害に対応した災害復旧及び三陸鉄道への支援に必要な予算を計上したものなど総額3億2500万円余となるものであります。
8月12日に大船渡市に上陸し岩手県を横断した台風5号は沿岸で記録的な大雨となりました。48時間降水量は久慈・下戸鎖で481.5ミリ、大槌で319ミリ、久慈・山形で283ミリ、岩泉で250.5ミリで観測史上最大となりました。久慈市は滝ダムの緊急放流に伴い、長内地区と小久慈地区に警戒レベル5にあたる「緊急安全確保」を発令し、放流後に解除しました。公共土木施設と農林水産関係の被害額は市町分を含めて31億6985万円余となっています。
1)記録的な大雨でしたが2016年の台風10号災害と比べて大きな被害とならなかった要因は何でしょうか。今回の台風5号による災害の特徴とこの間の河川改修等の効果、滝ダムの効果等について示してください。
2)台風5号にかかる災害復旧事業の今後の見通しはどうなっているでしょうか。
3)三陸鉄道の被害額は2億200万円となっています。今回の補正額は5100万円ですが復旧事業費の内訳と復旧の見通しを示してください。田代川の氾濫の影響で宮古―田老駅間で運休が続いています。改良復旧が必要と思いますが被害の状況と復旧事業の内容を示してください。
【県土整備部長】
台風第5号の特徴と河川改修等の効果についてでありますが、まず、令和6年台風第5号による災害の特徴は、短時間の強い降雨はなかったものの、長時間に降雨が続いたものであり、平成28年8月に、岩泉町の小本川において甚大な被害をもたらした台風第10号と比較すると、岩泉雨量観測所における総降水量は、いずれも251ミリと、同程度の降雨を観測しましたが、最大3時間降水量を比較した場合は、平成28年台風第10号の138ミリに対し、今回の台風第5号は40ミリとなっています。こうした雨の降り方の違いが、災害の発生状況に違いをもたらしたものと考えています。
次に、河川改修等の具体的な効果についてでありますが、県では、これまで河道の拡幅や築堤等により河川改修工事を進めてきた岩泉町の小本川や安家川などにおいて、整備がなかった場合と比べて、水位が低減していることを確認しており、河川改修工事の効果が表れていると認識しています。また、久慈市の滝ダムにおいては、台風第5号による大雨に備え、事前放流により追加で容量を確保した上で、洪水調節を実施し、計画を上回る大雨により緊急放流に移行したものの、洪水調節により、下流の河川の氾濫を防ぐとともに、水防活動や避難行動の時間を確保したところです。
【復興防災部長】
まず、台風第5号に係る災害復旧事業の見通しについてでありますが、各部局に確認したところ、公共土木施設については、既に応急工事に着手しているものもある中、緊急度などを踏まえて今後順次着工していく予定であり、農業関係施設については、令和7年中の営農再開に向けて、林業関係施設については、令和7年度中の工事完了に向けて、水産関係施設については、今年度中の工事完了に向けて、順次着工していくことになっております。
【ふるさと振興部長】
三陸鉄道の復旧事業費についてでありますが、三陸鉄道の復旧には国庫補助事業の活用を予定しておりますが、復旧費総額2億200万円のうち、国の負担が4分の1で5,050万円、地方負担分が同じく4分の1となり、これが今回予算案に計上している5,050万円となります。
残る2分の1が事業者負担分となり、1億100万円を見込んでおりますが、この事業者負担分については、基本的に三陸鉄道が加入している土木構造物保険を活用する予定としております。
なお、地方負担分5050万円については、県と沿線市町村により2分の1ずつ負担することとしております。
被害の状況については、田代川の氾濫により、佐羽根駅から田老駅間の線路の路肩が約25mに渡り洗堀され崩壊する被害があったものです。
復旧の見通しについては、被災した場所が河川の対岸であるため、一時的な河川の流路の切替や仮設道路の設置が必要であること、鮭の溯上期に配慮する必要があること、天候不順など、不確定な要素があることから、復旧までは数か月を要する見込みであると聞いております。
復旧事業の内容については、基本的に原状復旧が原則とされているところ、三陸鉄道では、再度の洗堀を防止するため、復旧箇所の法面下部に大きい石を詰めた金属製の籠を設置し、強度を高める方針で復旧を行うと聞いております。
・盛岡市を中心にした大雨被害対策について
【斉藤議員】
議案第32号補正予算(第5号)は、8月15日から9月2日の大雨被害に対応した道路・河川の災害復旧経費などに対応したものであります。
8月27日には、内陸に線状降水帯が発生し、1時間当たりの降水量は盛岡市で68ミリ、盛岡薮川でその後99.5ミリと観測史上最大となりました。3時間降水量でも盛岡で108ミリ、盛岡薮川では191.5ミリと観測史上最大でした。市街地を流れる中津川は氾濫危険水位を超え、1万4千世帯に避難指示が出されました。中津川はギリギリのところで氾濫しませんでしたが、上流の米内川は氾濫し、畑橋が流出するなど住民が孤立するなど大きな被害が発生しました。
1)今回の被害総額は74億2千万円余ですが、盛岡市の豪雨災害による被害状況、被害額は県分、盛岡市分でどうなるでしょうか。
2)災害復旧事業の見通しはどうなっているでしょうか。激甚災害の対象になるのでしょうか。
3)米内川の氾濫等によって9月6日現在、7世帯18人の住民が孤立しています。流出した畑橋の仮橋の整備、林道矢沢線の緊急拡幅が求められていますが、孤立状態の解消はどう図られるのでしょうか。
4)農地に土砂や流木が流入するなど農業被害の復旧は急務です。被害と復旧の見通しを示してください。農家は農家負担を心配しています。最大限農家負担のないよう早期の復旧を図るべきですが見通しを示してください。
5)盛岡市における大雨豪雨災害については17時49分に大雨警報、19時17分には記録的短時間大雨情報が出されました。米内川は急速に水位が上昇し2時間程度で3メートルを超え氾濫しました。しかし盛岡市からは避難勧告も避難指示も出されませんでした。盛岡市は市の対応を検証するとしていますが、県の対応としてはどうだったのか。県と盛岡市との連携、風水害対策支援チームの取り組みを含めて何が課題だったか示してください。
【復興防災部長】
盛岡市の豪雨災害の被害状況についてでありますが、先月末時点で、住家の床上浸水が25棟床下浸水が39棟、公共土木施設では、河川33か所、道路47か所、農林水産関係では、水稲の冠水のほか、農地160か所、農業用施設11か所、林道53か所、作業道8か所、林地荒廃10か所、上水道施設では、2か所でそれぞれ被害が発生しております。
それらの被害額については、調査中のものもありますが、公共土木施設は、約40億8千万円のうち、県分が約34億7千万円、盛岡市分が約6億1千万円、農林水産関係は、約9億円のうち、県分が約300万円、盛岡市分が約4億1千万円、その他が約4億8千万円となっております。
上水道施設は、約3億4千万円で、全て盛岡市分となっております。
次に、8月15日から9月2日までの大雨に係る災害復旧事業の見通しなどについてでありますが、各部局に確認したところ、公共土木施設及び林業関係施設については、既に応急工事に着手しているものもある中、緊急度などを踏まえて今後順次着工していく予定でございます。
また、台風第10号による災害については、激甚災害に指定される見込みであることが先月20日に公表されましたが、その具体的な対象範囲について、国に確認を行ってまいります。
次に、米内川の氾濫による被害への対応についてでありますが、林道米内川線は仮復旧済みの箇所もある一方、同路線の畑橋が流失したため、現時点で7世帯18人が孤立状態となっております。
盛岡市に確認したところ、現時点で、議員ご指摘の林道矢沢線は10月末頃、流失した畑橋は12月中旬頃に仮復旧の見込みと伺っております。
孤立世帯の中には一時的に転居されている方もおられますが、孤立状態が解消されるのは、12月中旬以降になるものと考えられます。
次に、県の対応等についてでありますが、線状降水帯による大雨については、気象庁から半日程度前の呼び掛けがなされる場合もありますが、8月27日はそれがない中で盛岡市が急遽対応する事態となりました。
気象庁による呼び掛けがなされない場合であっても、住民の皆さんに避難情報を正確に伝達し、避難所を迅速に開設することが重要であり、河川管理者による水位周知河川以外についても、ウェブサイトで水位情報を確認することが可能となっております。
そのため、県としては、これらの点を風水害対策支援チームに諮問した上で、先月30日に改めて市町村に助言通知を発出したところであり、今後、住民の皆さんが的確な避難行動をとることができるよう、市町村と連携して対応を図ってまいります。
【農林水産部長】
農地等の被害と復旧の見通しについてでありますが、8月15日から9月2日の大雨により、盛岡市では、9月20日時点で農地や水路など171箇所で、5億9千9百万円の被害が確認されていましたが、10月1日に被害額が確定し、農地や水路など183箇所、6億3千百万円の被害となりました。
来月中旬から災害査定が予定されており、県では、国事業を活用し早期復旧を図るため、査定後速やかに、復旧工事に着手できるよう事業主体である盛岡市を支援していきます。
また、先ほど、復興防災部長から答弁があったとおり、本県が激甚災害の対象となるか確定していませんが、激甚災害に指定された場合、国庫補助率が引き上げられ、農家負担の軽減が見込まれます。
引き続き、盛岡市と連携して、早期復旧に向けた取組を進めていきます。
<再質問>
【斉藤議員】
答弁ありがとうございました。
8月27日の盛岡を中心にした豪雨災害でありますけれども、扇状降水帯が盛岡北部・盛岡南部と発生すると。いま全国的にこういう集中豪雨型の災害が増えていて、こうした短時間で集中的に降る災害に対する対応というのは、県も本格的に対応を考えるべきではないのか。
風水害対策チームというのは、台風などの場合には一定程度事前に進路が予測できる。時間も一定の余裕がある。しかし今回のような扇状降水帯とか短時間豪雨情報とか、そういうときにはせいぜい半日ぐらいですよね。こういうときに、県もあげて市町村と連携した体制というのが必要なのではないか。そういう意味で、風水害対策チームのあり方というのを聞いたのです。そういう県と市町村の新しい災害に対する対応をしっかりやるべきではないか。
それから米内川は、何の避難勧告も指示もなしに氾濫をしました。形式的には、水位周知河川ではなかったから、2時間で3mも水位が上がったのに、県も市も対応をとらなかった。3mというのは完全に氾濫している状態なんですね。そういう点では、盛岡市の体制も弱かったが、県も水位周知河川じゃないからということで済むのか。水位周知河川にすぐにこれは指定してほしい。知事も記者会見でそういう方向は示していますから、それは確認したいのですが、やはり県がこういう局地的な豪雨災害に対する対応というのを、いま改めて再構築することが必要なのではないか。これを改めてお聞きをいたします。
【復興防災部長】
ご指摘いただきました通り、これまでと対応の異なる形で、風水害がやってくるという状況になっておりまして、県としてもこれまでの対応から一段上げた対応が必要というふうに考えております。
そのため風水害対策支援チームの皆様に、避難情報発令基準の見直し、それから避難所の即応体制の見直し、さらには、線状降水帯等発生に備えた対応、水位周知河川以外の河川の情報収集、これらの点について改めて諮問させていただきまして、市町村の方にも助言を改めてさせていただいたというところでございます。
今後も市町村と連携して対応を図って参る中で、さらに対応を強めていきたいと考えております。
【県土整備部長】
米内川の水位周知河川の指定につきましては、調査を進め、今後、盛岡市等の関係機関との調整を進め、来年度の出水期前までには指定できるように取り組んでまいりたいと思います。
<再々質問>
【斉藤議員】
中津川が氾濫水位を超えて、盛岡市は避難指示を出しました。しかし豪雨が降り続いている真夜中の指示です。避難所の確保が遅かったという話もありますけれども、実際に避難した人も少ないのです。そして避難した人は、実は障害者施設の人が事前に避難した。ところが体育館でそういう障害者の方々がとてもまともに避難生活ができるような状況じゃなくて、翌日朝すぐ帰ったという話です。
障害者や高齢者の場合には、やはり福祉避難所に避難するということがきちんと確立される必要があるのではないか。
それから、なぜ避難者数が少ないのかということもしっかり県としても検証すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
【復興防災部長】
ご指摘いただきました内容につきまして、県の風水害対策支援チームにおいても、住民への周知につきまして、平時からの対応としては避難のあり方ですとか、そもそもの危険情報の周知、さらに災害時の対応としてはLアラートの活用、この辺りを改めてお願いさせていただいたところであります。
気象庁においても半日前の呼びかけについて、まだ正確に出せない場合も多いようですが、それについてもさらに今後精度を上げていくというお話もありますので、そういったことを踏まえて、しっかり対応していきたいと考えております。