2024年10月7日 9月定例県議会本会議
高田一郎県議の一般質問
(大要)


【高田議員】
 日本共産党の高田一郎でございます。県民の切実な要求実現と県政の課題について質問します。

1.物価高騰から地域経済を守る課題について

 まず第1に、物価高騰から地域経済を守る課題についてです。
 「失われた30年」がもたらした経済と暮らしの困難に物価高騰が追い打ちをかけています。県が実施している「エネルギー価格・物価高騰等に伴う事業者の影響調査」(令和6年8月分)では「影響が継続している」86.8%となっており、その理由は、「原材料や生産コストの上昇」86.4%、「利益率の低下」62.4%などであります。社会保険料が払えない「社保倒産」や滞納強要を苦にして自ら命を絶つ経営者も出ています。県内中小事業者を応援する支援はまったなしの課題であります。
 県内中小事業者の深刻な実態をどう受け止めているでしょうか。そしてどんな支援が必要と考えているのでしょうか。

【商工労働観光部長】
 まず、 影響調査の受け止めと必要な支援策についてでありますが、8月末の事業者影響調査においては、多くの事業者が「原料・資材高騰への対応」、「価格転嫁」、「賃金の引上げ」、「人材確保」を経営課題に挙げております。
 このような状況から、利益率が低下する中で、人材確保などのために防衛的な賃上げを余儀なくされるなど、 県内中小企業を取り巻く経営環境は依然として厳しい状況にあると受け止めています。
 このことから、県として、円滑な価格転嫁の促進に向けたパートナーシップ構築宣言の普及拡大などに取り組むとともに、利益率を向上させるため、ITツールなどを積極的に活用した効率的な業務運営や、新たな顧客層の獲得といった小規模事業者の経営革新計画の策定をはじめとした生産性向上に向けた取組支援を積極的に進めていく必要があると考えております。
 こうした取組を進めるに当たっては、商工指導団体の果たす役割が重要であることから、これらの団体との連携のもと、国の経済対策とも連動しながら、中小企業を取り巻く環境に対応した必要な施策を適時適切に展開してまいります。

【高田議員】
 最低賃金に対し達増知事は5月に、岩手労働局に対し事実上の賃上げを求める要請を行いました。こうした中で今年の最低賃金は徳島に次ぐ59円増の952円となりました。これまでと比べれば大幅な賃上げとなります。県内で引上げ後の最低賃金以下の労働者はどの程度と試算されているのでしょうか。県内事業所の6割は法人事業税の対象とはならず、原資があって賃上げできる経営状況になく、中小零細事業者への直接支援が必要であります。国の中小企業支援策と一体で本来やるべきでありますが、国の支援はどのようになっているのでしょうか。「物価高騰対策賃上げ支援金」は事業者から大変歓迎され、また、全国から注目される支援策でもあります。継続実施すべきですが、この間の実績と課題も含め示してください。

【商工労働観光部長】
 次に、賃上げ支援についてでありますが、岩手労働局の令和6年最低賃金労働基礎調査によると、 最低賃金の引上げ前に今般の最低賃金額となる 952 円未満で働いていた常用労働者、 1か月以上の期間で働いている労働者になりますが、これは53,159人、全体の29.4%となっております。
 現在の国の支援策は、一定の賃上げを行う企業に対して、法人税等の減免措置を行なっているほか、生産性向上に資する設備投資等により賃上げを行った事業所に対する「業務改善助成金」などによる支援が行われていると承知しております。
 本県が実施している 「物価高騰対策賃上げ支援金」については、令和6年9月19日現在、当初見込んでいた2,000事業所を上回る2,562 事業所からの申請があり、価格転嫁が厳しい小規模事業所を中心に、多くの事業所に活用いただいております。
 中小企業を取り巻く経営環境が引き続き厳しい中で、最低賃金が大幅に引き上げられることや、今般の支援金の実施状況などを踏まえ、消費の拡大と賃金の上昇の好循環を生み出す経済対策を国に働きかけながら、商工指導団体をはじめとした関係団体との連携のもと、今後の対応を検討してまいります。

【高田議員】
 社会福祉施設等では、最低賃金への対応、給食の食材、介護用品など様々な価格高騰に伴う負担増などによって施設経営も厳しく、4割の社会福祉施設等で2年連続の赤字決算となりました。介護職員の賃金引下げで対応する事業所も出ています。県南地域の施設長さんは「他の産業と比べ賃金格差がさらに広がって人材が全く集まらない」と嘆いておりました。「社会福祉施設及び医療施設物価高騰等緊急対策支援金」を実施すべきでありますがどのように検討されているのでしょか。物価高騰に見合った介護報酬が必要です。抜本的な引き上げが必要ですが全国知事会としてどのように取り組まれているのでしょうか。

【保健福祉部長】
 まず、社会福祉施設等への支援についてでありますが、県では、物価高騰により厳しい経営環境にある社会福祉施設及び医療施設等を支援するため、令和4年度及び令和5年度に、計3回、累計で21億2千万円余の物価高騰対策支援金を支給したところです。
 現在、国において物価高騰に対応した新たな経済対策の策定が進められているところであり、県としては、こうした動向を注視しながら、必要な対応について検討したいと考えております。
 また、物価高騰に見合った介護報酬の抜本的な引き上げについては、令和6年度介護報酬改定の影響を適切に検証し、必要に応じて介護報酬の臨時改定等の措置を講じるよう、本年8月に、全国知事会として国に提言を行ったところであり、引き続き全国知事会と連携し、国に対して必要な働きかけを行ってまいります。

【高田議員】
 中小企業や地域経済を支援する「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」は、岸田前首相が拡充を明言してから3か月以上が過ぎました。本来であれば補正予算を準備し、新内閣で早く議論すべきですが、提案もなく、国会解散という動きであります。帝国データーバンク調査では上半期の小規模事業所の倒産は前年比22%増となり過去10年間で最悪です。県も経済対策の補正予算を急ぐべきですが、国の動向を含め示してください。

【総務部長】
 補正予算の編成についてでありますが、原油価格・物価高騰は、県民生活や地域経済に大きな影響を与えており、県では、今年度も、賃上げ支援金や、価格転嫁に取り組む中小企業に対する設備投資補助、 事業継続に向けた相談体制の強化などを実施しているところです。
 10月4日に経済対策の総理指示があり、国において検討が進められているものと承知しておりますが、 臨時交付金の配分を含む財政措置を国に求め、経済対策の動向を見極めつつ、 速やかな補正予算案の編成を含め必要な対応をしてまいります。

【高田議員】
 岸田前総理は不出馬の記者会見で「30年続いたデフレ経済に終止符打った」と自らの経済政策を評価しました。しかし、「異次元の金融緩和」がもたらした異常円安でかつてない物価高騰による生活苦も引き起こされました。実質賃金の減少、医療・介護などの国民負担が増え、稲作農家の時給は10円(23年産米)となりました。一方、大企業の内部留保は過去最高の532兆円となり、株主配当が増え貧困と格差が拡大してきました。5年間で43兆円の軍事費・大軍拡の道を進めています。石破首相はこれまでの経済政策を継承する立場を表明していますが、この間進めてきた政府の政策による県民の暮らしや営業、地域経済にどう影響を与えているのでしょうか。富裕層や大企業への行き過ぎた減税を改めるとともに、消費税減税や賃上げ、年金引き上げなど国民の懐を温める改革こそ必要であります。知事は「好循環の経済となるように国に求めていきたい」と答弁されていますが、どう提案されるのでしょうか。

【達増知事】
 まず、政府の経済政策による地域経済への影響と国への提案についてでありますが、 安倍政権から続いてきた 「異次元の金融緩和」や国際紛争等によるエネルギー価格の高止まり等により、物価高騰が進行し、賃金・収入が実質的に目減りしてきました。 こうした状況下で、 県民の生活や事業者の経営が圧迫され、現在でもその影響が続いています。
 地域経済の回復には、 消費の拡大と賃金・収入の上昇の好循環を生み出すことが必要です。 賃金・収入が上昇することで、 消費が活性化され、地域の事業者を潤すことによって、さらなる賃金・収入の上昇につながるものと考えます。
 このことから、事業者の生産性向上や物価高騰によるコスト増の緩和、適切かつ円滑な価格転嫁の実現、物価高騰で困窮する低所得世帯や子育て世帯への支援など、地域経済の好循環の起点となる賃金・収入の持続的な上昇を実現する経済政策について、 様々な機会を通じて、国に働きかけていきたいと思います。

2.高すぎる国保税について

【高田議員】
 第2に、高すぎる国保税について質問します。
 物価高騰で暮らしが圧迫される中で、これに追い打ちをかける国保税は「これ以上の引き上げは限界だ」という声が広がっています。盛岡市の国保税は標準世帯(夫婦39歳以下、就業者1名、子ども2人)の場合40万円に対し、協会けんぽでは197,000円と同じ所得でも2倍以上の開きがあります。医療保険によって負担や給付差があることを問題にし、全国知事会でも1兆円の国費投入を行って、せめて協会けんぽ並みの税となるよう求めてきました。国はこれにこたえるどころか、国保運営の都道府県化による統一保険料などで加入者へのさらなる負担を行おうとしています。県は3月に策定した「第3期岩手県国保運営方針」では、保険税水準の統一を「第4期運営方針期間に実施をすることを目指す」として当面見送ることを明記したことは評価したいと思います。
 そこで4点うかがいます。
 全国知事会も国費1兆円の支援を求めていますが国の対応はどうなのでしょうか。

【保健福祉部長】
 次に、国民健康保険の財政支援に関する国の対応についてでありますが、国保については、被用者保険にある保険料の労使折半の仕組みがないこと、被保険者の年齢構成や医療費水準が高いこと等の構造的な課題を抱えています。国保の財政基盤を強化するため、これまで、県の政府予算提言・要望や全国知事会として、国に対し、 新たな財政支援を講じるよう要望しているところです。
 国においては、平成30年度から毎年約3千4百億円の財政支援を行い、これにより保険税負担の伸びが一定程度抑制されていると考えられますが、未だ課題解決には至っていないことから、今後も必要な財政措置について、県の政府予算提言・要望や全国知事会として働き掛けていきます。

【高田議員】
 財政調整基金にためすぎている市町村は引き下げの財源に振り向けることが必要であります。財政調整基金を積み立てている実態を県はどのように把握しているのでしょうか。

【保健福祉部長】
 次に、市町村の国保財政調整基金についてでありますが、財政調整基金は、 保険給付費、事業費納付金及び保健事業の推進に要する経費等に不足が生じた場合に備えて、 各市町村の条例に基づき設置されているものです。
 県では、毎年度、各市町村国保の財政調整基金の保有状況について報告を受けており、基金残高の推移は、医療費の増加などに伴い、令和元年度の約111億円から令和5年度には、 約100億円と11億円減少しているところです。
 当該基金については、各市町村が、条例の規定に沿って、医療費や保険税の将来見通しなどの財政状況を総合的に勘案しながら運用していくものと認識しており、 県としては、基金運用の参考としていただくため、 各種統計データの提供や他の自治体に関する情報提供を行っています。

【高田議員】
 被雇用者の健康保険は、子どもなどの扶養家族が何人いても保険料は変わりません。ところが国保の場合は、家族の人数に応じて「均等割り」があるため、子どもが多ければ多いほど高くなり、これは子育て支援に逆行するものです。一関市では一人当たり19800円、2人の場合39600円となってしまい、児童手当(月1万円)が消えてしまう中身であります。国は子育て世代の経済的負担を軽減するために未就学児に対し2分の1の軽減措置を行っています。さらなる拡大を求めていくべきでありますが、国の動向はどうなっているのでしょうか。

【保健福祉部長】
 次に、子どもの均等割についてでありますが、その軽減措置については、子育て世帯の負担軽減の観点から、令和4年度から未就学児を対象に所得制限等の基準を設けず公費で一律に軽減される仕組みが導入されたところです。
 当該軽減措置について、現時点では、国の見直しの動きはなく、対象となる子どもの範囲が未就学児に限定され、その軽減額が5割とされていることから、県としては、更なる負担軽減が図られるよう、政府予算提言・要望や全国知事会として、子どもに係る均等割軽減措置の対象年齢及び軽減額の拡大を国に要望しており、今後も継続していきたいと考えています。

【高田議員】
 高すぎる国保税を納められない市民に対して、一旦窓口で医療費の全額支払いを求める資格証明書の発行は76件、短期保険証は3942件、未交付=留め置きは1184件となっています。納めきれない実態をよくつかんで支援制度に結び付ける取り組みこそ必要です。滞納者への制裁措置は受診抑制による重症化につながる可能性もあり、盛岡市では原則発行で対応しており「国保運営上なんの問題もない」と議会で述べております。資格証明書などの発行は患者が医療を受ける権利を侵害し、滞納者に懲罰を与えるもので社会保障の原則に反するもので直ちにやめるべきと考えますがいかがでしょうか。

【保健福祉部長】
 次に、保険税滞納者への対応についてでありますが、短期被保険者証及び被保険者資格証明書については、各市町村が、国保税を滞納している方との接触の機会を増やし、自主的な納付などを直接働きかけることなどを目的に交付されています。
 県では、毎年度、各市町村に対し、それぞれの交付に関して、機械的な運用を行うことなく、滞納者個々の特別な事情の有無を適切に把握するなど、被保険者の生活実態等に即したきめ細かな対応に努めること、滞納の原因が経済的困窮にある場合は、 必要に応じて、 生活困窮者の自立支援を担当する部署と連携した支援を行うなど、滞納者に寄り添った対応を行うよう要請しています。

3.不登校対策について

【高田議員】
 第3に、不登校対策について質問いたします。
 不登校の子供たちは年々増え続け、小中学校で約30万人、岩手県でも2005人と急増しています(文科省23年学校基本調査)。これは年間30日に満たない子どもや保健室登校、遅刻・早退を続ける子どもを加えればその数倍になるともいわれています。学校へ行かない、いけない子どもがこのように急増する傾向は、すべての子どもたちを人間として、主権者として育てていくという公教育の任務が事実上崩されかねないほどの深刻な問題と考えますが、教育長の認識をまず伺います。

【教育長】
 まず、不登校対策に係る認識についてでありますが、令和4年度の文部科学省の調査によれば、本県の不登校児童生徒数は小中高合わせて2,588人で過去最多となっており、全国と同様に近年増加傾向にあります。
 学校教育の意義・役割は、各個人の有する能力を伸ばしつつ、社会において自立的に生きる基礎を養うとともに、社会の形成者として必要とされる基本的な資質を培うことを目的としており、その役割は極めて大きいと言えます。
 また、学校は多くの人たちとの関わりの中で様々な体験や経験を通して、実社会に出て役立つ生きる力を養う場であり、学校教育を受ける機会、周囲の児童生徒と交流や切磋琢磨する機会を得られないことは、当該児童生徒が将来にわたって社会的自立を目指す上でのリスクとなる可能性があります。
 不登校対策は、学校、教育関係者、家庭はもとより、医療・福祉等の関係機関、地域、民間団体等、 多くの方々のご協力をいただきながら、 児童生徒の社会的な自立を目指して取り組むべき重要な課題であると認識しています。

【高田議員】
 子どもの権利条約に基づき日本は国連子どもの権利委員会から、これまで4回の勧告を受けています。「日本の教育が点数による競争的教育制度によってストレスにさらされ、その結果、余暇、運動、休息の欠如により発達障害にさらされている。これを予防する適切な処置をとるべきだ」と勧告しています。県教委は度重なる勧告をどのように受け止めているのでしょうか。学力テストはその象徴であります。県版学力テストなども含め廃止をし、その財源で教員を増やすなどすべきだと思いますがいかがでしょうか。

【教育長】
 次に、学習定着度状況調査等についてでありますが、 国連子どもの権利委員会は、日本におけるいじめの問題を指摘しつつ、いじめ防止の対策や、学校におけるストレスの軽減について勧告しており、日本全体として、いじめ、不登校の問題があり、岩手も同様であるため、その対策を講じる必要があるものと考えています。
 国は、教育振興基本計画において、「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」 等を掲げており、 岩手県教育振興計画 (2024~2028) においても、国のこの方針等を踏まえ、 学校教育の目指す姿を、 岩手の子どもたちが、 自分らしくいきいきと学び、 夢を育み、 希望あるいわてを創造する 「生きる力」を身に付けている、としているところです。
 学習定着度状況調査は、 児童生徒一人一人の学習の定着状況と分析結果から、つまずきの内容や要因等を把握し、一人一人を伸ばす指導の充実、 教員の指導力向上を図るために実施しているものであります。 実施に当たっては、序列化や過度な競争が生じないようにするなど、教育上の効果や影響等に十分配慮するとともに、令和3年度からは小中学校ともに2教科に精選して実施しているところであり、 今後もICTの活用も見据えて適切に取り組んでまいります。

【高田議員】
 子どもの立場に立って不登校問題を解決する必要があります。本県における不登校急増の要因をどう分析されているのでしょうか。子どもの声をどう把握されているのでしょうか。
 子どもたちが再登校するとしても、また社会に出るまでに長い時間がかかる場合もあります。それだけに親の苦しみ、悩みは察するに余りあります。児童生徒理解支援シートを整備し、専門家と連携しながらアウトリーチ的支援を行うべきであります。すべての児童への相談・指導ができる取り組みが必要と考えますが、どれだけ対応されているでしょうか。

【教育長】
 次に、不登校急増の要因等についてでありますが、 令和4年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」 によりますと、文部科学省では、小中学校における不登校の背景や要因について、「長期化するコロナ禍による生活環境の変化により生活リズムが乱れやすい状況が続いたことや、学校生活において様々な制限がある中で交友関係を築くことが難しかったことなど、 登校する意欲が湧きにくい状況にあったこと等も背景として考えられる」との見解を示しているところであり、本県においても同様の認識です。
 本県におきましては、従前から心とからだの健康観察などの諸調査により、県内全ての小・中・高 特別支援学校の児童生徒を対象に、一人一人の心の健康状態や児童生徒が抱えているストレスの状況を把握するほか、県立学校では、1人1台端末を利用した「こころの相談室」 などにより、 児童生徒の悩みや相談を受ける取組を行っているところです。
 また、県教育委員会では、社会福祉士などの資格を有する18名のスクールソーシャルワーカーを本庁及び教育事務所に配置し、県内全ての市町村の小・中学校を対象に、問題を抱える児童生徒に対して、関係機関と連携して、組織的・継続的に相談や支援に当たっています。

【高田議員】
 いじめや不登校問題でも重要な役割を果たしているのがスクールカウンセラーであります。不登校を抱える保護者からは「エネルギーチャージだよと言われて安心した」といわれ、親と子を支える重要な役割を果たしていると感じています。文科省は、すべての学校への配置する基礎配置とともに1万校へのいじめ・不登校対策など重点配置が行われています。本県の実態はどうなっているのでしょうか。相談件数に対する対応実績はどうなっているのか、配置数は十分なのか示してください。 

【教育長】
 次に、スクールカウンセラーについてでありますが、県教育委員会では、66名のスクールカウンセラーを任用し、県内小・中学校、高等学校、特別支援学校に、定期もしくは要請に応じて訪問することにより、 県内の全ての公立学校での相談に対応できる体制を整えているところです。
 その内、より課題を抱える小学校13校、中学校 55 校に対しては、スクールカウンセラーが重点的に訪問し、いじめ・不登校等の課題を抱える児童生徒の早期発見・早期対応に取り組んでいるところです。
 令和5年度のスクールカウンセラーへの相談件数は32,541件であり、主な相談内容は、心身の健康・保健7,526件、友人関係3,874件、不登校3,375件などとなっております。スクールカウンセラーは、各校の教育相談担当や関係職員と連携しながら、チーム学校として適切に対応しているものと認識しています。

【高田議員】
 「学校に通う」以外の選択肢がない現状を変え、安心していられる居場所を作るなど、子どもに寄り添った支援が必要です。こうした支援は不登校を悲観し苦しむ親子を救うことになります。校内教育支援センター、学びの多様化学校、自宅におけるICT等の活用にも取り組むべきですがどのような対応をされているのでしょうか。フリースクールなど学校以外の様々な学びの場を認め、公的支援など学校と同等の支援を行っていくべきです。子どもの不登校がきっかけで食費や光熱水費、フリースクールの月謝などが増加し支援を求める声も出ています。都道府県レベルで公的支援を行っている自治体についてどう把握されているのでしょうか。

【教育長】
 次に、不登校児童生徒の多様な学びへの対応についてでありますが、不登校児童生徒への支援は、学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があるとされています。
 そういった中で、全国的に、教育支援センター、フリースクール等の民間団体、学びの多様化学校、オンライン活用など、児童生徒一人一人に応じた多様な学びの方策が広がってきているものと承知しています。
 県教育委員会では、いわて県民計画第2期アクションプランにおいて、令和8年度までに県内全ての市町村に教育支援センターが設置されることを目標とし、その整備を支援しており、現在27市町村において整備されています。
 フリースクールへの公的支援については、他県の調査によると、 運営費補助等の財政支援を行っている自治体が11都府県あるものと承知しています。

4.人口減少対策・少子化対策について

【高田議員】
 第4に、人口減少対策・少子化対策についてです。
 就職情報サイト・マイナビが5月に実施した20代正社員を対象とした意識調査では4人に1人が子どもを持つことに消極的だという調査結果であります。「お金が足りない」「増税・物価高の中、自分のことで精いっぱいで育てる責任がもてない」など、金銭面での不安が多かったと分析しています。いまSNS上では「子持ち様」という言葉が飛び交っています。子どもを持てるのは恵まれたカップルだという思い、育児中の男性労働者の仕事を他の人が引き受けざるをえず苦々しく思う心情を映しています。将来設計が描けない非正規労働者を拡大し、賃金が30年以上も上がらない、学費の返済や競争的な教育など子供が安心して育てられる環境にありません。若年層の経済状況の苦しさや結婚や子どもを持つことへの不安を抱える人が多く少子化の一因であります。そして第二に、ジェンダー不平等が出生率低下の背景にあると国連人口基金の「世界人口白書2023」が指摘しています。この白書は、少子化の進む国の特徴として「職場でのジェンダー不平等、家庭でのジェンダー不平等、勤労世帯への構造的な支援の欠如―という三重の足かせ」があるとし、日本には「若い日本人の女性の多くが『結婚して子どもを産むかどうかわからない』と答えているのはキャリアを続けることを望み無給の家事や育児に縛られたくないと考えているからだ」としジェンダー不平等が出生率低下の背景にあるとの内容です。
 若者の貧困対策、ジェンダー平等に焦点を当てた指摘について知事に認識をお聞きします。

【達増知事】
 若者の貧困とジェンダー平等に対する認識についてでありますが、少子化対策については「有配偶率の向上」、「有配偶出生率の向上」、「女性の社会減対策」の3つの柱を基本に、若者女性の所得向上や、ジェンダーギャップの解消についても、しっかりと取り組んでいく必要があります。
 こうした認識の下、人口減少対策に最優先で取り組んでいるところであり、29歳以下の新婚世帯に対する支援金の県独自の10万円上乗せ支給、第二子以降の3歳未満児に対する保育料無償化や在宅育児支援金の支給、放課後児童クラブの運営や一時預かり事業に対する助成、若者や女性に魅力ある雇用・労働環境の整備、家事・育児の分担を見える化する「家事・育児シェアシート」の作成・普及、多様な働き方と所得向上に向けた女性デジタル人材の育成、など、若者の貧困やジェンダー平等に関する施策も進めています。
 今後も、全国トップレベルの子ども・子育て支援策とともに、未婚化や転出の要因となっている若年層の所得の向上、アンコンシャス・バイアスやジェンダーギャップの解消など、特に若者や女性の「生きにくさ」を「生きやすさ」に変えるため、取組の充実強化を図りながら、最重要課題として、オール岩手で取り組んで参ります。

【高田議員】
 自治体職員の非正規化がこの間進み、雇用されても年収200万円以下のワーキングプアが指摘されて続けてきました。女性の割合も高く低い賃金と不安定雇用となっています。この間どのように処遇を改善されてきたのでしょうか。県職員の場合、非正規雇用は、男性で43%と他県と比べ高く、一家を支えています。10年20年と勤務した場合の正規職員との賃金格差はどの程度になるのでしょうか。
 専門性を持ち恒常的な公共サービスを担う図書館司書、消費者相談、スクールカウンセラーなどからは、「仕事のやりがいがあるけれども不安定で不安だ」という声もあります。再任用については、本人の希望を前提に継続的任用を保証すべきであります。6月の人事院通知の改正では更新を原則2回とする制限を撤廃しましたが、県職員も撤廃すべきと考えますがいかがでしょうか。

【総務部長】
 会計年度任用職員の給与についてでありますが、 会計年度任用職員制度導入による処遇改善の状況については、パートタイムのモデル年収でみると、今年度からの勤勉手当の支給により、 昨年度から約29万円増額して、約253万円となり、制度導入前の臨時職員と比べると約70万円増額しており、東北他県と比較して2番目に高い水準となっています。
 常勤職員との比較については、 地方公務員法上、職員の給与は、その職務と責任に応ずるものとされており、単純に比較することは難しいところですが、同じ勤務時間で事務を行うフルタイムの会計年度任用職員のモデル給与で比較した場合、10年勤続の常勤職員とは、約50万円、20年勤続の常勤職員とは、約180万円の年収差となっています。
 次に、再度の任用についてでありますが、現在任用している会計年度任用職員について、 人事評価の結果を踏まえ、公募によらずに翌年度も任用する、いわゆる「再度の任用」は、国との均衡や、地方公務員法に定める平等取扱いの原則や成績主義を踏まえ、これまで、 2回連続を上限としてきたところです。
 議員御指摘のとおり、今般、国は、できる限り公募を行うという原則は維持した上で、人材確保の観点から、再度の任用の上限回数を撤廃したところであり、本県としても、地方公務員法の趣旨を踏まえつつ、他県の動向も勘案しながら、再度の任用の上限回数の撤廃に向けて、検討を進めてまいります。

【高田議員】
 厚生労働省白書では結婚と年収との関係調査では、21〜25歳だった独身男性は年収200万円未満の5年後まで結婚は約一割、年収300万円以上は3割が結婚しているなど賃金増加は結婚を希望する人を押し上げる効果があり「少子化」を克服する観点からも大変重要だと思います。県は、社会減対策の強化点として「労働環境と所得の向上に取り組む」としていますが、取り組みと成果をまず示してください。
 子どもの教育費の負担軽減は若者と子育て世代の最も切実な願いであります。とりわけ奨学金返済額は平均300万円、卒業後の返済が長期になり、結婚・出産をためらう声(奨学金返済が結婚に影響は3割「日本学生支援機構2200人アンケート」)があります。また、若者の居住費負担率は3割を超えています。住居確保給付金の支給対象の拡大とともに、家賃補助や若者住宅などさらなる支援が必要と考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 次に、労働環境と所得の向上についてでありますが、若者や女性の県内定着、U・Iターン、移住定住を促進し、人口の社会減を縮小していくためには、処遇面を含めた魅力ある雇用・労働環境を構築していくことが重要であります。
 このため、自動車・半導体関連産業を中心とした幅広い業種の企業誘致や、いわてで働こう推進協議会を核とした働き方改革、 商工指導団体等と連携した中小企業の生産性向上などに取り組んでまいりました。
 こうした取組により、 令和元年から令和5年までの5年間で、 178社の企業が新増設を行っているほか、 いわて働き方改革推進運動に1千社を超える企業が参加しており、 さらに、 経営革新計画を策定して生産性向上に取り組む中小企業数が東北で最多となっております。
 引き続き、経済団体をはじめ、様々な主体と連携し、 オール岩手で若者や女性の労働環境と所得の向上に取り組んでまいります。
【政策企画部長】
 若者の住宅支援についてでありますが、若者の県内定着や子育て支援の観点から、労働環境や賃金の向上と合わせて、経済的負担の軽減による可処分所得の向上は重要な課題であります。
 このため、県内中小企業向けの賃上げ支援金を措置し、若者を含む県民の所得向上を促進しているほか、若い世代に県営住宅を低廉な家賃で貸し出すことで、住宅に係る負担を軽減し若者の活躍を支援する「若者・地域応援住宅支援事業」や、市町村と連携して新婚世帯の住居費用を支援する 「いわてで家族になろうよ未来応援事業」を行っているところであります。
 また、県営住宅を活用した「いわてお試し居住体験事業」により、県外からの移住を促進しています。
 県としましては、引き続き、雇用・労働環境の向上や県営住宅を有効活用した住居への支援等をはじめ、全庁を挙げて県民の皆様の可処分所得の向上に取り組みながら、国や市町村等と緊密に連携し、若者や子育て世代、県外からの移住希望者の県内定着を図ってまいります。

5.大規模災害と自治体の備えについて

【高田議員】
 第5に、大規模災害と自治体の備えについて質問いたします。
 東日本大震災の時には避難所にいる被災者は絶望と不安の中にいました。雑魚寝の床からは寒さが深々とし心も体も震える日が続きました。生活環境の悪化などによって岩手県内では471人が災害関連死と認定されました。同じような光景は、能登半島地震でも同じでありました。「プライバシーのない避難所、雑魚寝や冷たい食事」、大雨被害で2度の被害を受けた被災者は「仮設住宅への食糧は震災当時と変わらずパン一つ」「全く地震の教訓がいかされていない」と語っていました。何よりも石川県では、地域防災計画の想定は27年前のもので「災害度は低い」と被害想定も甘く、専門家からも見直しが求められていました。国と一体となった防災対策と対応に多くの課題を残しました。3.11の教訓が生かされず「30年間変わっていない」という指摘もあります。
 今後の岩手県の災害対応に生かすべきと考えますが、知事の受け止めとともに、全国知事会として取り組むことは何か、合わせて伺います。トイレ、段ボールベッド、温かい食事を48時間以内に提供できるかが被災者の命と暮らしにかかわる大きな問題です。また、特に大雨豪雨災害は夏場であるだけに暑さ対策も重要です。台風5号接近に伴い、沿岸部ではエアコンのない避難所もあり、熱中症の疑いの避難者もいました。避難所運営マニュアルのない自治体など課題も在りました。能登半島地震の教訓を踏まえ本県の取り組み状況を示してください。

【達増知事】
 能登半島地震と本県の災害対応についてでありますが、令和6年能登半島地震では、発災当初、過密な状態で避難所生活を送ることを余儀なくされたほか、 自主避難所が多く設置されて被災者の状況把握が困難であったことなどが指摘されており、全国知事会からも避難所運営に対する国の支援を要望しています。
 一方、ドローンによる被災状況の把握、 水循環型シャワー設備の活用など、新たな技術の活用も見られたところであり、 そのような点も含めて本県の災害対応に生かしていくことが重要と考えています。
 また、被災地には全国知事会などを通じて、 本県から延べ600人余りの職員を派遣して応急対策に当たったほか、現在も14人の県職員を中長期で派遣して、被災地の復旧・復興を支援しています。
 能登半島では、 先月の記録的な大雨で二重被災とも言える状況となり、大変痛ましく思っておりますが、 本県からの派遣職員は大雨災害の対応にも従事しているほか、先月末には、被災地で不足している物資や水害からの復旧ノウハウに関する記録誌も本県から提供するなどしたところであります。
 今後も被災自治体同士のネットワークにより、お互いの教訓を生かしながら、自然災害への対応力を強化してまいります。
【復興防災部長】
 能登半島地震の教訓を踏まえた対応についてでありますが、県では「市町村避難所運営マニュアル作成モデル」に生活環境の確保の視点を盛り込んだ上で、 市町村に避難所運営マニュアルの整備を助言してきた結果、 今年4月1日時点で県内31 市町村が作成しており、残る2町も今年度中に作成する見込みとなっております。
 最近では避難所に指定されている公共施設に空調設備を設置する動きが広がりつつあり、 再エネ設備や高効率空調設備の導入を支援する国の地域レジリエンス補助金を活用することなども市町村に促してまいります。
 また、 能登半島地震では車中泊の避難者への支援が課題となったことを踏まえ、先月18日には避難所以外の被災者の把握に関する実証実験を行ったところであり、 そのような教訓を生かすための取組を今後も行ってまいります。

【高田議員】
 能登半島地震では、土砂災害で被害を受けた建物は85%以上が土砂災害警戒区域でありました。また、2300ヶ所で土砂が崩落したほか、孤立集落は33ヶ所・3345人にのぼり、2週回以上も集落が孤立しました。孤立集落へは通信手段対応や2週間程度のエネルギー・食糧の確保など必要ですがどう本県では対応されているのでしょうか。

【復興防災部長】
 次に、孤立集落対策についてでありますが、能登半島地震で孤立集落対策が課題となったことを踏まえ、 県内で孤立する可能性のある集落について、各種物資の備蓄状況、 情報通信手段の確保状況などを今年度改めて調査しているところです。
 また、来月10日に予定している県の総合防災訓練では、孤立集落を想定した防災ヘリによる救助訓練も実施することとしております。
 さらに、能登半島地震では、孤立集落への物資輸送にドローンが試験的に活用されたところであり、そのような新たな技術の活用の可能性についても検討してまいります。

6.農業振興策について

【高田議員】
 最後に、農業振興策について質問します。
 主食のコメが不足し店頭から消え、流通業者や消費者に深刻な混乱と不安を広げました。政府はコメの消費量が減るとして農家に減反と生産調整を求め、1000万トンを超えるコメの生産量は今や661万トンとなり、昨年の消費量702万トンよりも少なくなるところまで減少しています。稲作農家は時給換算にすると10円にしかならず、低米価の下でこの10年間で46万戸が減少し、生産量も157万トンも減少しています。コメ需要に生産が追い付かず、価格を市場任せにしてきたコメ政策の破たんです。政府は来年6月末の在庫を今年より少ない152万トンと見込んでいます。いま新米を先食いして供給しており、コメ不足は一過性ではありません。来年は生産量を減らすのではなく、農家に十分生産してもらうことが必要ではないでしょうか。ゆとりある需給計画をつくり、稲作農家の所得保障・価格補償を抜本的に充実することが必要です。そして義務でもないミニマムアクセス米77万トンの輸入はやめるべきです。コメ政策の転換を国に求めていくべきですが見解を伺います。

【農林水産部長】
 国では、米の需給及び価格の安定を図るため、全国の需給の見通しを策定するとともに、価格や在庫などの情報を提供しており、各都道府県では、これらを踏まえ、需要に応じた主食用米の生産と水田の有効活用による麦・大豆や園芸作物等の生産拡大を進めています。
 令和5年産米については、高温・渇水の影響による精米歩留まりの低下、米以外の食料品の価格上昇やインバウンド等の人流の増加により民間在庫が減少したところに、本年8月の地震・台風等による買いだめの動きなどが重なり、全国的に店頭の米が品薄になったものと承知しています。
 県としては、米の需給と価格の安定を通じて、生産者の所得確保が図られることが重要と考え、これまで国に対し、米の需給調整の着実な推進を要望してきたところであり、今後とも、国の動向を注視しながら、必要な対策を求めていきます。

【高田議員】
 米をはじめ食材の値上がりによる県内の食糧支援を行っている団体が、コメが集まらず、子ども食堂では回数を減らしたり、休止する子ども食堂もあります。これまでも政府備蓄米の支援制度がありましたが、県内では令和6年度5団体2130キロの交付を受けています。国はこのたび申請窓口を全都道府県に広げるとその拡充策を示しています。フードバンク、子ども食堂は、食糧支援を行っているすべての団体へこの支援制度について周知徹底し、食糧に困窮する県民を応援すべきですがどう対応されるのでしょうか。

【農林水産部長】
 国では、子どもにごはん食の魅力などを伝える食育の取組として、「こども食堂」や、子育て家庭に食材を届ける「こども宅食」を実施する団体に対し、政府備蓄米の無償交付を行っており、議員御紹介のとおり、今年9月から、交付申請窓口の拡大や受付期間の通年化など、「こども食堂」等が利用しやすい運用に改善されたところです。
 この無償交付については、これまでも、国から全国団体等を通じて周知しているほか、県からも、対象となる団体や関係機関等に周知してきたところであり、今回の運用改善についても情報提供を行っています。
 今後も、県民に食事や食材を提供する団体の活動支援に向け、関係部局と連携しながら周知等に取り組んでいきます。

【高田議員】
 生産資材価格高騰、高止まりの中で、農産物が価格転嫁できず生産者の経営努力でコストを吸収することは困難で一層厳しい経営となっています。配合飼料価格安定制度における「新たな特例」が終了し畜産農家の負担も増えています、土地改良区や共同利用施設での維持費の増加による農家負担、土地改良区の賦課金増により土地改良区を離脱し離農する農家も出ています。昨年実施した「配合飼料価格安定緊急対策補助」、土地改良区電気代助成」を継続実施すべきです。生産資材価格高騰による県の支援策を示してください。

【農林水産部長】
 次に、物価高騰対策についてでありますが、県では、これまで、飼料価格の上昇分や、土地改良区が管理する農業水利施設の電気代の上昇分を支援する国事業の活用を進めるとともに、県独自に、飼料の購入費や農業水利施設の電気代への支援などを実施してきたところです。
 現在の農業生産資材等の価格は依然として高く、農業経営に大きな影響を与えています。
 このため、配合飼料については、国に対し、価格高騰が続いた場合でも、畜産経営体の再生産が可能となる十分な補填金が交付されるよう、配合飼料価格安定制度の拡充を繰り返し要望するとともに、生産コストの更なる低減に向け、自給飼料の生産拡大を推進しています。
 農業水利施設については、今年度新たに、国に対し、維持管理費の増加分への支援を要望するとともに、消費電力の少ないポンプへの更新などに取り組む土地改良区を支援しており、今後も、農業経営の安定が図られるよう取り組んでいきます。

【高田議員】
 農済岩手の家畜人工授精業務の廃止に伴う対応についても質問いたします。25年4月から農済の家畜人工授精業務を廃止することにより、業務が途絶えないように畜産農家などがこの間県に求めてきました。しかし十分な説明も乏しく不安が募っています。来春から心配なく移行できるのでしょうか。
 家畜人工授精師は兼業で継続的な支援が難しいという家畜人工授精師もあり、獣医師の高齢化により開業獣医師の減少もあり家畜死亡事故も起きており、一次産業の衰退につながっています。畜産県岩手の生産基盤の維持・強化のためにも、家畜人工授精師の業務の公営化も検討し、獣医師の確保に向けた取り組みを強化すべきですがどう検討されているのでしょうか。

【農林水産部長】
 次に、家畜人工授精業務についてでありますが、県では、広域振興局が主体となり、盛岡と遠野地域の市町や農業協同組合、農業共済組合等と地域の家畜人工授精業務が継続できるよう検討を重ねており、8月末現在、対象となる328戸のうち約5割の継承先が決定しています。こうした検討状況や継承先に関する情報は、対象農家等に対して適時説明を行っています。
 また、安定的な家畜人工授精業務の実施に向け、家畜改良増殖法に基づく講習会を開催し、家畜人工授精師の免許取得を支援するとともに、家畜人工授精業務の施設開設を許可しており、今後も、各地域の実情に応じて、家畜人工授精業務が継続的に提供されるよう、取り組んでいきます。
 産業動物獣医師の確保に向けては、獣医学生に対する修学資金の貸付けなどを行っており、今後も、獣医師確保に積極的に取り組んでいきます。

【高田議員】
 私にある農家からこんな訴えがありました。「人間が生きるために最も大事な食糧生産してきた農民が粗末にされている、地域で支え合ってきた農村、若者はいなくなる、これからとても不安だ」こう嘆いていました。本県農業経営体の平均年齢は69歳、65%は「後継者がない」(農林センサス)という深刻な事態であります。こうした状況になったのはなぜでしょうか。農業に希望を持てるためには何が必要と考えているのでしょうか。
 今年は食料・農村・農業基本法という法律が改定され、来年の通常国会では「基本計画」が策定されようとしています。食料安全保障の議論がある中で食料自給率を引き上げる「価格保障、所得補償」を農政の柱にし、規模の大小にかかわらず意欲のある農家を担い手に位置付けた「基本計画」としなければなりません。「基本計画」作成に当たって岩手県として国に何を求めていくのでしょうか。

【農林水産部長】
 本県では、地域農業の核となる経営体を中心として、小規模・兼業農家など多くの経営体が生産活動に携わっており、こうした経営体が、将来にわたり、意欲をもって生産活動に取り組むことのできる環境を整備していくことが重要です。
 県では、国に対し、本年6月に実施した、令和7年度政府予算に対する提言・要望において、食料安全保障の強化や国内生産の増大に向けた対策の一層の推進適正な価格形成・取引を推進するための仕組みの早期の構築や、消費者等の理解の醸成などを要望したところです。
 また、現在、国において、基本計画の策定に向けた議論が進められていることを踏まえ、先月、6月に実施した提言・要望に加え、食料供給の現場である地方の実情を踏まえた基本計画の策定と各施策の充実強化を要望したところであり、今後も、様々な機会を捉え、国に働きかけていきます。

<再質問>

・中小企業支援について

【高田議員】
 今回の最低賃金59円の引き上げは、年収にしてみれば11〜12万円(月1万円)の賃上げになると思います。しかも事業者は社会保険料の負担もありますので、事業主としては大変厳しい環境の中で、賃上げしなければならないという状況です。小規模事業者の中には、従業員の労働時間を減らして、自分はその分労働時間を長くして給与まで減らして、雇用と会社を守るために必死になって頑張っている状況があります。岩渕部長からは「生産性の向上が大事だ」という指摘もありましたが、これも大事だと思いますが、しかしいまの局面において思うのは、このままでは「賃上げ倒産」になるような状況になっているのではないかと思います。やはり中小事業者への直接支援がどうしても必要だと思いますけれども、この必要性はについてうかがいたいと思います。
 東北の中小企業は「コスト上昇分41%しか価格転嫁できていない」という調査結果も報じられています。先ほど部長からも「利益率が低下して、防衛的な賃上げにならざるを得ない」という状況になっています。消費者の節約志向もあって、なかなか利益が出なくて厳しい状況がずっと続くのだろうと思っております。そういう中にあって、「中小企業等事業継続緊急支援金」、これはやはりどうしてもいま必要なのではないかと思います。あの時に、中小事業者の皆さんは「これがあったから継続して頑張ろう」という気持ちになっていたということを思い出しました。やはり賃上げ支援金とセットでこうした緊急支援をやるべきだと思いますが、ぜひ検討していただきたい。検討状況が紹介できればしていただきたいと思います。

【商工労働観光部長】
 賃上げ支援金についてですが、中小企業が賃上げを行うためには、やはり利益を出して利益率を高めて、賃上げ原資を確保しなければいけないという大前提のもとに、円滑な価格転嫁を進めること、生産性向上を進めることということで答弁させていただきました。
 一方で、今回の最低賃金の引き上げというのは、国は全国一律目安額50円という大きな金額を示して、それに対してまた都道府県別にさらに上乗せしていって、本県も全国で2番目の引き上げ率になっています。これは良い面と大変な面があろうかと思いますが、そういう状況と、今の県内の中小企業者がそういう防衛的な賃上げを余儀なくされているという状況も十分に承知しておりますので、そういうことを踏まえながら今後対策を検討していきたいと思います。
 令和5年度までに実施しておりました中小企業者等事業継続緊急支援金についてですが、これについては、当時の急激な物価高騰によって経営に影響が生じた中小企業者等の事業継続のために、直接的な支援として緊急的に実施したものだと考えております。やはり今かなり中小事業者は厳しい経営環境にありますが、やはりここで大事になってくるのは、消費の拡大と賃金の上昇の好循環、物価高騰に負けない賃上げ、これを実現するための大胆な経済対策をやっていかないと、いつまでも根本的な問題が解決しないということになりますので、この大胆な経済対策を国に働きかけながら、県としてもどこまで支援ができるかということをしっかり検討してまいりたいと考えております。

・不登校対策について

【高田議員】
 子どもがどんどん少子化で減っている中で、教育現場になじめない子どもが増えていると。小中学校だけで5年前1200人程度だったものが今は2000人を超えていると。ものすごく急速に不登校が増えているということは本当に深刻な問題だと思います。不登校の原因について、全国調査では、子どもと学校との評価が乖離しているという調査結果もあり、文科省自身もこれを認めています。私は、不登校になっている子どもやそれを経験した子ども、保護者などにアンケートなどで実態調査を行って、子どもの立場で不登校問題に取り組む必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 最近学童クラブの指導員と話す機会がありました。「最近疲れた顔で学童に来る子どもが増えているのではないか」、また「『ただいま!』と元気に声をかけて来る子どももいる」と。つまり本当に解放されたという感じで来る子どもも増えてきていると。子どもたちが緊張とストレスの中にあるのではないかという話もされました。
 やはりそこにあるのは、国連子どもの権利委員会が指摘している勧告だと思っています。教育長は原因について、コロナや生活、交友関係の変化だと説明していましたが、一つの要因だとは思いますが、根本にあるのは国連子どもの権利委員会の指摘だと思います。2019年の勧告では「あまりにも競争的なシステムとなっている学校環境から子どもを開放する措置を強化すること」という表現で政府に勧告しています。学力テストや点数で評価する、授業時間を増やして教員は増やさない―このような教育のあり方を根本から変えていかなければならないと思います。
 そこでお聞きしたいんですけれども、いま毎日授業時間が6時間になっていることに対して、子どもに負荷がかかっているのではないかという専門家の指摘もあります。年内に学習指導要領の審議が始まりますが、この点について教育長はどのようなお考えをもっているでしょうか。また授業時間の問題については、現在標準時間数というものがありますが、これをはるかに超えて授業をやっている学校もあります。この実態はどうなっているのでしょうか。改善が必要ではないでしょうか。
 学力テストについても質問しました。私たちは県版学力テストは中止すべきだと求めてきましたが、今年から青森県が学力テストを止めるということを決めました。教育長はその理由をどう把握されているのか。この点についてお聞きします。

【教育長】
 不登校の実態調査、子どもの意見をうかがうべきだということですが、先ほど答弁した通り、震災後、心と体の健康観察ということをずっと本県は唯一続けてやってきており、1人1台端末を利用して「心の相談室」ということで状況を確認していると。また、不登校生徒支援連絡会議という会議がございます。この場でさまざま、不登校の経験者あるいは保護者の体験談をお話いただくという取り組み、これは来月実施いたしますが、フリースクールの代表者あるいはスクールソーシャルワーカーなどによるパネルディスカッションといったものを通じながら、不登校児童生徒あるいは保護者の思いや実態というものをしっかり把握していきたいと考えてございます。
 標準時間についてお話いただきました。昨年度文部科学省から、全国的に標準時間をオーバーしているのではないかということで調査をしています。毎年度基本的に調査していますが、著しくかつてのように標準時間を超える学校はきわめてレアだと思っていますが、かなり超えているような学校についてはしっかり是正を指導しているところでございます。
 学力テストの青森県の例ということで、青森県の具体の廃止理由は直接的にはうかがっていませんが、全国的には実施している県が令和5年度だと32県が県版学力調査を実施しており、実施していない県が15という状況でありまして、それぞれ各県の必要性の判断に基づいて実施されていると理解しております。

<再々質問>

・中小企業対策について

【高田議員】
 中小企業対策については、部長おっしゃるように、支援金をずっと続けても大変なので、好循環の経済にしていかないといけないというのはその通りだと思います。部長からも「今後の対策を検討していく」という答弁でしたので、今後の展開を期待したいと思います。

・学力テスト、不登校対策について

【高田議員】
 青森県が県版学力テストを廃止した理由は4つあって、その大きな理由は、教員の自らの授業を磨くための時間を確保することが必要だということです。国の学力テストで十分だと。県の学力テストを中止して、その分先生たちの授業時間の準備などに充てるべきだというのが青森県の結論です。独自に実施している自治体が多いと言いますけれども、なくしていく自治体の方が増えているのではないかと思いますので、青森県の対応もぜひ把握をして検討していただきたいと思います。
 不登校の問題でお聞きしたいのは、不登校児童に一人残らず相談支援が届くようにする必要があると、文科省の心プランでも強調されております。いま岩手県には、高校を含めて2558人の不登校児童がおりますけれども、岩手県の場合、国が求めている本当に一人ひとりに寄り添って相談や支援が本当に届いているのだろうかと思いますが、この点いかがでしょうか。そしてそのための支援の一つとして、教育支援センターということが先ほども議論がありました。いろいろ現場の話を聞きますと、あるいは保護者の話を聞きますと、例えば回数を増やしてほしいとか、しかしあまり集団が大きくなりすぎると子どもが来なくなってしまうと。そしてアウトリーチ支援もしたいけれども体制的にできないという声もありました。校内教室についても、一関なんかでは別室教室を設けてオンライン教育をやって非常に成果をあげているというお話も直接先生から聞きました。しかし、学校では大変忙しい、体制も不十分だということもあり、岩手の場合、その校内教室の設置率というのは半分もいっていない、46%になっている状況です。やはり地域地域によってさまざまな課題があります。そういった地域の不登校対策でとられている問題について、よく課題を把握して必要な支援に結びつけていくべきではないかと思いますが、この点についてお聞きしたいと思います。

【教育長】
 いま議員からさまざま課題等ご指摘いただきましたが、本県でも教育支援センターの設置、校内支援センターの設置、フリースクールとの連携、ソーシャルワーカー、スクールカウンセラーの配置等、先ほどご答弁申し上げたとおり取り組みをしておりますが、課題として挙げられるのは、やはりそれが届いていない、家庭に引きこもりの状態の子ども―3割弱いらっしゃるということですので、そういったところにどうアプローチしていくかというのは課題だと考えております。学校も、担任や養護教諭もさまざま苦労しながらなんとか接触したいと。あるいはソーシャルワーカーとも連携して取り組みを進めておりますが、必ずしも皆さん接触できている状況ではないという子どももいらっしゃるということであります。
 引き続き課題であるそういったものについて、多くの知恵をお借りしながら取り組んでいく必要があるのではないかと思っております。大きな社会的課題ということでもあるので、学校・教育関係者のみならず、多くの関係者の協力、ご支援をいただきながら対応してまいりたいと考えております。

<再々々質問>

・フリースクールへの支援について

【高田議員】
 先ほどフリースクールのことも教育長触れられました。これからフリースクールの方々と連携してさまざまな問題に取り組んでいきたいというお話がありました。この不登校問題で、フリースクールの果たしている役割は大変大きいと思っています。しかし実際は、月謝が全国平均33000円と言われていますが、県内でもそういう状況です。中には、一関にあるフリースクールなどは月額5000円というところもあります。しかしよく聞いてみますと、寄付とスタッフはほとんどボランティアという状況で、非常に安定していない状況になっています。遠くから通う子どもたちもいます。一関の場合は、北上や奥州から通っている子どもたちもいます。親にしてみれば大きな負担になると思いますし、学び舎の保障、居場所を子どもたちに保障していくという点でフリースクールに対する支援は欠かせないと思います。
 全国で11の都道府県レベルで支援が行われております。これは施設の経営に対する支援だけでなく、月謝についても2分の1助成とか、三重県は月額15000円とか、東京都は2万円とか、そういう具体的な財政支援を行っています。こういった自治体も参考にしながら、そうした方々にしっかり財政支援できるように県としても検討していただきたいと思いますけれども、この点をおうかがいして終わります。

【教育長】
 フリースクールへの支援というお話をいただきました。全国的にさまざまな方法でフリースクールとの連携・支援が行われているものと承知しており、そういった情報収集は続けていきたいと思いますが、本県としては、まずは教育支援センターの全市町村への配置、スペシャルサポートルーム=校内支援センターといったもの、これは国の補助制度がありますので、こういったものをどんどん市町村に使っていただく。それから不登校児童生徒支援連絡会議を通じてのフリースクールとの連携を通じて取り組んでまいりたいと考えております。