2024年10月8日 文教委員会
請願に対する質疑
(大要)


・盛岡一高事件にかかる調査検証委員会の設置を求める請願

【斉藤委員】
 今回の請願は、その前提は今の報告にもあったように、外部委員の7名中5名が盛岡一高の事件については、第三者で徹底的に検証すべきだと。これは異例の要望です。7人中5人というのは。それも、具体的にどういう点が不十分なのかも示しています。
 いわば、調査はやられたけれども、県教委の内輪だけの調査にとどまったと。県教委が調査した生データは、外部委員にも示されなかったと。概要しか示されなかったという話をしています。
 もう1つは、被害者遺族も出席をして発言しているんですけれども、何よりも被害者の家族が納得していないんですよ。そして名誉が傷つけられたままだと言っています。県教委は「意見の相違」という形で整理していますが、そんな話はないんですよ。事実は一つなんですから、見解の相違で済む問題ではない。
 そういう意味でこの外部委員の多数が、盛岡一高事件についてはさらなる第三者による検証が必要だと。議長あての意見書の中では、外部委員の南部さおりさんが、別なところで調査委員会の委員長をやったときに、「徹底して県教委・市教委が持っている調査を浮き彫りにしたら全く反対の調査結果になった」と。いわば彼らにしてみれば、そういう調査はされていない。生身のデータが示されなかった。これは大変重大な問題だと思います。
 まず、外部委員の検証委員会設置の要望、具体的な根拠も示した要望についてどのように検討されたか答えてください。

【教職員課総括課長】
 参考2に付けております14ページから17ページ、これは左側が5名の委員から出された要望書でございます。それについて、県教委として考え方を整理したものであります。
 結論で申しますと、14ページの4-1については、先ほどの説明と繰り返しになりますが、主たる解明できなかった部分ということで、被害生徒・ご家族からお話がある元部員への調査について「本当に調査をしたのか」というところについて、再三我々にも確認があるわけですけれども、これについては民事訴訟の判決の中で明確に事実認定をされております。そうしたところ、あるいは外部委員から、10年以上も経っている事案で、関係者でも亡くなっている方もいるという中で、記憶が曖昧な部分もあるということで、裁判のような唯一の事実をつかむことが最適ではなくて、再発防止策を講じるための事実確認であることから、判明した事実の中で、判明しなかった事実があってもそれをより広くとらえて、おそらくこういう可能性があったのだろうという事実認定の仕方が有効だというお話もあり、我々としてはそういったご助言もいただきながら事実認定をしたところであり、要望書には、まったく解明がなされていないというご指摘もありますけれども、我々としては再発防止に関する事実確認としてはおおむね完了したという認識でございます。
 15ページですけれども、2番での「当時の資料など客観的な証拠に基づく事実認定ではなく…」というご指摘もありますけれども、我々としましては、訴訟において証拠採用されました当時の資料に基づいて行っていると。資料が存在しない期間については、補足的に聴取を行っているということからしますと、これも我々の認識とは少し違うかなと思うところでございます。
 3番目、「事実の歪曲や隠蔽を疑わせる箇所が多く見られること」というところでございますが、具体的にどこが歪曲なのか、隠蔽なのかというところが要望書の中では明らかにされていないというところはありますが、いずれ我々としましては、当時の学校関係者、県教委と被害生徒ご家族とのやりとり等について、認識や記憶の相違がある部分、当時の学校も含めて不適切だと結論づけて、相違点についても被害生徒ご家族の認識も併記をしたうえで事実認定としたところでございます。そうしたことで、我々が調べたものだけが事実ではないと。被害生徒ご家族との認識のズレの部分も併記をしたうえで事実認定しているというところをぜひご理解いただきたいと思います。我々が中だけでやったものではなく、裁判での証拠、我々の調査―それは我々だけが調査したのではなく、外部委員に調査の内容、対象、方法をすべてお諮りしながら調査を進めてきたものですし、まとめ方についても逐一お諮りしてやってきました。そしてそれでもなおかつ事実と違うという部分については併記をするという形で整理をしてきたというところをぜひご理解いただきたいと思っています。
 4点目、バレー部員達への聞き取りの調査の内容が明らかにされていないと、これも再三にわたってご要望があったところでございますけれども、やはり懲戒免職処分を行う前提で行った調査を、協力をいただいた部員達に断りもなくというか、そういう前提で調査に協力いただいたものではありませんので、なかなかそういう公開の会議の場で調査の内容を出すということははばかられたということで、ここについてはご理解をいただきたいと思っているところでございます。
 5点目、「事実を総括しないまま再発防止策を立てようとしているとしか見えない」というご指摘につきましても、さまざま事実を併記する形で事実認定し、先ほど申し上げた通り、どこが不適切だったのか、その要因ということをつなげていって、具体的に再発防止策につなげているところでございますので、我々としては事実認定を踏まえて、総括をして、再発防止「岩手モデル」を策定したと認識しているところでございます。

【斉藤委員】
 もっとも重要な相違点について取り上げたいと思います。これは岩手モデルの中に書かれていることです。
 岩手モデルの5ページ、平成24年2月、被害生徒保護者から学校に対し、改めて当該顧問教諭による暴力・暴言・威嚇等の事実の有無の確認の申し出があり、学校は被害生徒及び同級生部員4名から聴取を行った。被害生徒からは、顧問教師による長時間にわたる叱責・罵倒・暴力等の証言があったが、被害生徒以外の4名の元部員の証言内容は「体罰はなかった」というものであった。ところが、この4名について県教委は裁判が始まってから独自に調査をした。そのうち2名は「学校からの問い合わせはない」と答えています。「体罰はあった」と。だとしたら、この4名の調査というのは本当にやられたものかどうか、ここが全然解明されていないんですよ。解明されないどころか岩手モデルに書かれている。ここは一番の焦点だと思います。違いますか。

【教職員課総括課長】
 調査がないということよりは「記憶がない」というお話をされたかと思っております。ここについては、もしよろしければ事実解明の方の別冊の方の57ページをお開きいただきたいのですが、聞き方が不十分だったという結論に至るわけですが、実際の聞き方として57ページのIのところで、被害生徒の保護者から20名の部員へ求められたけれども、教員の転勤だったり、卒業後で連絡が難しいという理由で実現可能な聴取として4名の聴取を行ったということ。聴取は複数の教員で分担して行ったけれども、事実関係について包み隠さず、こちらから有利になるか不利になるか考えず、特に誘導的にならないように伝えたということで、「どういうことがあったか話してくれませんか」と、「叩かれたか」という具体的な聞き方であったかは定かではないという話があります。それで、中断のR4のところですけれども、聴取について、長く聞くと誘導になる恐れがあるので、単刀直入に聞くようにしていたと。体罰はないと言われていた、体罰について個別の例を挙げて聞くような聞き方はしなかったと。今と当時の体罰の認識には違いがあって、聴取に対応した教員も認識のズレがあったかもしれないというような確認になっています。ここについての事実認識でありますけれども、24年3月28日から4月4日にかけて、被害生徒及び同級生4人から聴取をしたと。聴取は担当教諭から電話によって行われたと。同級生4人から聴取の後に行われたけれども、被害生徒ご家族から再三お話があるんですけれども、被害生徒の聴取を最後にしたり、普通は最初に聞いて体罰の事実があった後に具体的に聞くべきだったのに、どうして最後になったのかというお話がありますけれども、そこについては判明しなかったということも含めて事実認定しております。これについても民事訴訟で確認をしております。
 73ページで、不適切だった点としてEで、聞き手を同一に限定することをしなかったとか、聴取方法を統一することも慎重な配慮が必要だったがやっていなかったということで、我々としてはやったのは事実だと、これは裁判でも認められています。なので、聴取の仕方、記録の取り方が不適切だと認定しておりまして、具体の記録を整備する様式、聴取する際のマニュアルを整備したということで、こういった反省点を踏まえて岩手モデルに生かしていると考えております。

【斉藤委員】
 岩手モデルでは、私が言ったように「体罰はなかったというものであった」と、事実として書いているんですよ。ところが裁判で県教委が裁判所に出した聴取結果は、これは「平手打ちがあった」というバレー部員です。「O先生から電話で聞き取りをされたのを覚えていますか」「いや全然覚えていないんです」と。「記憶にない」んじゃないんですよ。全然覚えていない。平手うちがあったとあなた方の聴取で書いていて、裁判所にも出された。学校の聴取は「全然覚えていない」。だったらこの4名の聴取というのはなんだったのかと。これは大変重大な事実の解明です。意見の違いで済まされるような問題じゃないんです。
 盛岡一高は、この4名の部員の調査だけをやって「体罰はなかった」と。それ以降の調査はやらないと拒否したんです。だから被害者家族は、一つは、暴力・暴行で刑事告訴したのです。警察は暴力を認めたけれど、PTSDの証明は難しいというので不起訴になった。このときは警察の調査では暴力を認めています。そして結局は民事訴訟に訴えざるを得なかった。否定したからです。顧問教師も体罰を否定した。ところが裁判で、被害者家族は元部員の証言を出しました。だからあなた方は慌てて私が紹介したような調査をやったのです。だとしたら違った結果になった。盛岡一高事件の核心中の核心は、この4名だけの調査で「体罰はなかった」と認定したことです。しかしその事実があなた方の調査で崩れた。この4名の調査のときに、当時の副校長は何と言ったか。「一つのことに対する解釈の違いということもある。思い違いということもある。記憶がうつろで、後からつくられた記憶ということもある」と居直ったのです。「後からつくられた記憶」だと。これはあなた方の作った資料です。だから盛岡一高事件の核心は、被害生徒が暴力・暴言を訴えた。その事実をまったく把握しない、まともな調査をしない。たった4名の部員の調査で「体罰はなかった」と認定したが、その4名の調査の事実・実態が裁判の中でも崩れているんですよ。それなのに、TSUBASAモデルで「体罰はなかった」と書いたことはまったく事実に反すると思います。そうしたことが一高事件の悲劇をつくったのです。最後まで盛岡一高は調査しなかった。この責任は本当に重大だったと思う。そういう深い解明をしていますか。あなた方の調査で、4名の証言の違いが明らかになって、それなのになぜ重大なTSUBASAモデルの文書でそれを書いたのですか。おかしいじゃないですか。

【教育長】
 課長の答弁と重なるところもありますが、いずれ4名の調査をしたことについては、判決文に記載がなされておりまして、事実認定されておりますので、そういったものについては、それを当然我々は前提として必要な補完調査を行っているということでございますから、裁判で確定したものと違う内容のものを再度調査すると、結果に及んでくるということで、対応は必要はないと考えております。

【斉藤委員】
 裁判で認定したというのは、一高が調査をしたということだけの話です。だいたいあなた方が裁判所にこれを出したのです。4名の証言と違うものを。中身まで認定していないのですよ。だいたいあなた方自身が「体罰はあった」と、「学校の調査はなかった」と、訴訟資料を出しているんですよ。それも含めて事実認定されているんでしょう。裁判資料の中には、副校長の調査の内容というのが1枚だけあります。4人が「体罰はなかった」と書いている、3行程度の調査結果です。しかしあなた方の調査は、直接部員を調査した詳しい中身のやりとりが裁判所に提出されているんですよ。こちらの方が認定されたのではないですか。あなた方が調査した結果は認定されなかったのですか。

【教職員課総括課長】
 盛岡地裁の判決文を引用する形で紹介しますと、「本県高校の教諭らは、平成24年3月28日から同年4月4日にかけて、手分けをして生徒ら4名及び原告に対し電話で事情聴取を行った」と裁判所で事実認定をされています。その事実認定ですけれども、調査の仕方が悪かったというのは、別途県教委と事前にすり合わせをしないで、本来であれば担当者をしっかり1人決めて、調査項目も吟味をしてやるべきところを、複数の教員で調査をして、相手方に具体の目的も伝えず、体罰とはどういうものかというのも伝えず、電話での調査にとどまったために、事実関係が確認できなかったという不適切だった点ということで、我々は整理をしています。ですので、我々が別途調査をしたものとは別の点ということで、あくまでも学校が調査をしたということは裁判で事実認定をされているものでございます。

【斉藤委員】
 調査したということは事実認定したかもしれない。しかし、学校の調査が出された裁判資料は、4名の部員に対して3行4行、「自分は体罰を受けたことがない」「見たことがない」と。そしてあなた方が同じ部員を調査した具体的やりとりが書いているんですよ。そこでは「平手打ちはよくあった」「罵声を浴びせる行為はほぼ毎日で間違いない」と。学校の問い合わせについては「全然覚えていない」と。あなた方の調査の方が詳しいのだから。だからこれが盛岡一高事件の核心中の核心なんですよ。「意見の相違」でごまかすわけにはいかない。そして、被害者の名誉もかかっているんですよ。「後からつくられた記憶」だということまで副校長から言われているんですよ。そういう意味で、「意見の相違」なんて簡単にやるものじゃないし、もっとも重大なのは、岩手モデルになぜこういうことを書いたかということです。崩れた事実を。「体罰はなかった」と書いている。だめですよこれは。
 もう一つ、いま康介さんが「継続審議にしてじっくり審議したい」と。私はこれは賛成です。被害者家族が「ぜひ参考人として呼んでくれ」と、話を聞いてほしいという要望もありますから、ぜひ継続にしてやってほしいんです。
 もう一つ、この事件・裁判の経過で注目して深めなくちゃならないのは、一審の有罪判決は何か。これは「暴言」が違法だと。それで、翼くんがなぜ亡くなったか。顧問教師の度重なる暴言・叱責なんですよ。不来方では暴力はほとんどなかった。どちらかというと、執拗な暴言・叱責が子どもの命を奪うようなものだったのです。だから、一審判決でそこの違法性を指摘したことはすごく重要だった。二審判決では、暴力も含めて違法性が明らかになりましたが、暴言というのは、盛岡一高事件では最初から明らかになっていた。体育館の教官室で、1時間2時間、執拗に暴言・叱責―「お前は駄馬だ」とか激しい暴言。実は同じ暴言が不来方でやられたのです。こういう暴言・叱責というのが、身体的暴力以上に子どもを苦しめる、自尊心を傷つける、人格を否定する、そういう重大性もこの事件の経過で浮き彫りになったのではないかと思うんです。その辺の深め方も、学校も現場も「暴言は暴力ではない」という認識で一高は対応した。今もそういう認識はあるのではないでしょうか。そういう問題の打開も今度の事件を通じて深く解明をしなくてはならないことだと思いますけれどもいかがですか。

【教職員課総括課長】
 ご指摘があった、具体的な「殴る」とかというようなことは体罰だけれども、キツい言葉については、そういう体罰はなかったと。部活が強い学校だとあり得るというような認識が当時あったということで、これについては全く間違った認識だったと思っております。それに伴って顧問教諭が体罰を否定したことで、決定的に初動調査が遅れたということは、我々も不適切だったということで認定をしております。ですので、今回の請願は、あくまでも事実認定がなされていなかったんじゃないか、不十分だということで調べ直すということだと認識しておりますが、裁判であらかたの事実が認定されている、「暴力・暴言」も含めて、裁判で認定された事実を含めて我々は補充的な調査、それは我々だけの調査ではなくて外部委員の方にいろいろお諮りしながらやってきたというところがあります。
 いずれにしましても、事実関係の解明の中で、さまざまな不適切だった点を改めるべく「岩手モデル」を作りました。具体的に不適切な発言の例とか、行為の例も整理をしました。研修も行っております。そういったところで、ただそういう認識のある先生がゼロかというとそうではないと思います。ですので、繰り返し研修を行い、意識啓発、意識改革を行って、こういった被害なり不幸な事案を二度と繰り返さないように、一致団結して肝に銘じて進めていきたいと思っております。

【斉藤委員】
 実は事実認定のところで、自死する4日前、高裁の裁判の中で、後輩の元バレー部員が陳述書を出しました。「日常的に大変苛烈な暴力・暴言が横行していた」という陳述書です。このことはあなた方にも伝わったので、機敏に対応していたら、ギリギリのところで不来方の事件を防げることができたのではないかと思います。しかし、この陳述書について私が最初に取り上げたときには、この陳述書が事実とあなた方は認めなかった。しかし「岩手モデル」については、この陳述書が肯定的に評価をされています。これは態度を変えたんですね。事実があったという認識で「岩手モデル」には記述をされているということでいいですか。

【教職員課総括課長】
 事実の概要をまとめているところで陳述書の記載がございます。陳述書が仙台高裁に提出されたこと、顧問教諭による暴力について記載されていたこと、それについて教職員課は当該校の校長と情報共有を行わなかったことについて、主な経緯として整理をされているところでございます。

【斉藤委員】
 だから陳述書について私が最初に質問したときには、「事実と確認できなかった」と言ったんですよ。しかし「岩手モデル」に書いたときには、これは「事実として認識しています」という答弁だった。
 それで、高橋康介さんが継続審議を提案しました。私も賛成です。ぜひ被害者家族を参考人として要請することも含めて確認をいただきたい。