2024年10月11日 決算特別委員会
総括質疑
(大要)


1.医師確保について

【斉藤委員】
 日本共産党の斉藤信でございます。医師・看護師確保と県立病院の新しい経営計画素案について質問いたします。
 知事は医師不足の打開のために12県の知事とともに「地域医療を担う医師の確保をめざす知事の会」を立ち上げ、今年の8月9日にも政府に対して提言を行っています。岩手における医師不足の現状、提言の内容とこれまでの成果について示してください。

【達増知事】
 国が令和5年に公表した医師偏在指標においては、全国で最下位となっているものの、これまでの取り組みにより県内の医師数は、奨学金養成医師の配置が始まった平成28年の2458人から令和4年は2580人となり、着実に増加しているところです。
 医師不足の解消には、国をあげた取り組みが必要でありますので、同様の課題を持つ11の医師少数県に知事の会設立を呼びかけ、医師不足の解消につながる具体的な施策を提言してまいりました。
 今年度においては国に対し、医師の地域や診療科の偏在解消に向けた仕組みづくりや医師をはじめとする医療従事者の養成・確保、医師の地域偏在解消に向けた実効性を伴う専門研修の仕組みの創設等について提言を行いました。
 これまでの知事の会の取り組みにより、令和8年度以降の臨床研修において、医師少数県等で一定期間研修を行う広域連携型プログラムの導入や、医師少数区域での勤務経験を管理者の用件とする病院の拡大等を盛り込んだ国の医師偏在是正に向けた総合的な対策のパッケージが示されたところであります。
 引き続き、より実効性のある医師不足偏在対策が国の責任において実施されることをめざし、知事の会の活動を強力に推進してまいります。

【斉藤委員】
 8年間で128人増えたということになると思います。また、知事の会も成果をあげつつあると、これは評価をしたいと思います。
 そこで、これまでの医師確保の計画と実績について示してください。

【達増知事】
 県ではこれまで、奨学金により医師を養成してきたところであり、配置を開始した平成28年度の16人から今年度は172人となっています。
 令和2年度から5年度までを計画期間とする第7次医師確保計画では、県全体の目標医師数として359人、二次医療圏ごとの目標医師数の合計として134人を確保する2つの目標を掲げてとりくんでまいりました。
 奨学金による医師の養成や即戦力医師の招へい等の取り組みにより、令和4年までに122人の増加となっており、令和5年度における奨学金養成医師の前年度からの増加分29人を勘案すると、二次医療圏の目標医師数134人は上回るものと見込んでいます。

【斉藤委員】
 今年度までみれば計画を達成しているということですね。
 そこで、岩手県医師確保計画(24年3月策定)における今後の医師確保の計画・目標と医師確保の見通しはどうなっているでしょうか。

【達増知事】
 令和6年3月に策定した第8次医師確保計画では、二次医療圏ごとの目標医師数を令和8年度までに181人増とする目標を掲げております。この目標を達成するため、奨学金養成医師の計画的な配置や即戦力医師の招へい等に加え、症例数や手術数の確保による研修体制の整備や、医師が出産・育児などを行いながら働き続けられるような職場環境の整備等により、新たに242人確保する見通しとしているところであり、より多くの医師を確保できるよう取り組んでまいります。

【斉藤委員】
 新しい医師確保の計画では181人増員、それに対して242人の見込みなんですね。
 ところが新しい県立病院の経営計画では、医師増員の計画は6年間でわずか23人となっています。これでは県の医師確保計画から見ても、これまでの増員の実績、県立病院の医師不足の現状からみても、あまりにも少ないのではないでしょうか。

【医療局長】
 これまで県立病院におきましては、深刻な医師不足に対応するため、奨学金による医師の養成とともに、65歳後の医師の勤務延長のほか、任期付き職員採用、即戦力医師の招へい等により医師確保を図ってきたところでございます。
 次期経営計画においては、県の医師確保計画の配置見通し等を踏まえ、100人を超える奨学金養成医師の増員を見込む一方で、シニアドクター等の退職や、大学病院への異動等により一定数の減員も勘案しているところでございます。全体としては、人口減少に伴う患者数の減少を見込む中においても、県北・沿岸部等の常勤医師が不足している病院で着実に配置を進めるため、医師を増加していくこととしているところでございます。
 今後も奨学金による医師養成の推進と着実な配置を進め、シニアドクターに過度に依存しないバランスのとれた体制を確保し、県民に高度専門医療を安定的に提供するとともに、身近な医療についても継続的に提供してまいります。

【斉藤委員】
 現計画、6年間の計画でも54人増員されています。6年間で今後23人しか増やさないというのはどういうことかといいますと、来年度は1人、26年度は4人、27年度は4人、28年度は5人、29年度は5人、30年度は4人と。これだったら20病院あるうち1人ぐらいしか増えないという数です。
 そこで聞きますが、「機能強化と連携」といっていますが、機能強化する病院でどれだけ増員し、医師が減る病院はどれだけあるのでしょうか。

【医療局長】
 今般の計画では、がんや脳卒中、新血管疾患等の疾病ごとに医療機能を集約し、症例数・手術数の集積を図ることで、専門医等の確保につなげようとするものであります。
 例えば、がん診療で中核的な機能を担う病院に、麻酔科医等の重点的な配置をめざしているものでございます。一方で、県北・沿岸や地域病院等については、地域の医療ニーズを踏まえながら奨学金養成医師の着実な配置を進めるとともに、関係大学への派遣要請を強化し、常勤医の確保に努めていこうとするものであります。
 計画期間中の各病院の具体的な配置につきましては、医療の高度専門化の状況や地域の医療ニーズの状況を踏まえながら取り組んでまいります。

【斉藤委員】
 残念ながら私の質問に答えなかった。機能強化をするために、高度の医療機器と医師をそこに動員すると。何人増やすのですか。たった23人の計画しかないのに、そこは答えられないのですか。

【医療局長】
 先ほど申しました通り、がんや脳卒中、新血管疾患の疾病ごとに医療機能を集約するということにつきましては、徐々にそういう形で集約される側の方から集約する方に医師が若干異動するということはあろうかと思いますが、なかなか医局の状況等でそこを瞬時に増やしていく形になろうかと思っています。
 ただその一方で、症例が集約されるということでございまして、専攻医等も集まってくるということで、医師は着実に増加するものと考えているところでございます。

【斉藤委員】
 6年間でたった23人しか増やさないのに、機能強化の病院に何人増やすかも言えない。増やせば他の病院は減るということになるでしょう。そういう計画なんですよ。
 そこで聞きますけれども、80時間以上、100時間以上勤務している医師の実態を示してください。

【医療局長】
 県立病院の医師一人当たりの年間の平均超過勤務の平均時間は、令和5年度は475時間で、コロナ前の令和元年度の527時間と比較して減少傾向にございます。
 また、時間外労働が年960時間超の医師につきましては、令和5年度が48人、令和4年度76人と比較して減少傾向にございます。

【斉藤委員】
 月80時間、100時間超えている医師を聞いたのです。月100時間以上というのが、これは一月だけですが、12ヶ月でみますから×12してもおかしくないんだけれども、20人〜28人います。80時間以上は70人〜84人いますよ。
 たった23人の増員で、いまのこのような過酷な状況は全然解消されないんじゃないでしょうか。

【医療局長】
 これまですべての県立病院において、国のガイドラインの内容に沿った医師の労働時間短縮にかかる計画表というのを作成しまして、医師の労働時間の短縮に取り組んできているところでございます。
 具体的な取り組みといたしまして、医療クラークの配置による医師が行う事務的業務の負担軽減など、タスクシフト、タスクシェアの推進、また長時間労働医師に対する面接指導や勤務管理システム等を活用した労務管理の徹底、各病院の医師を対象とした医師の働き方改革にかかる研修会の開催等による意識啓発などを進めてきたところでございます。
 先ほど申しましたように、着実にこれらの取り組みにより超過勤務も減少しているという傾向でございます。

【斉藤委員】
 救急患者の対応を県立病院はやっています。
 ひとつ例を出しますけれども、千厩病院は医師8人体制で年間1100人の救急車による救急患者に対応しています。ここは医師の倍化が必要ですよ。千厩病院は医師を増やすのですか。

【医療局長】
 千厩病院におきましては、準広域という取り扱いにしているところでございます。現在8人という形で、なかなか大変だというような状況でございます。やはり今は10人くらいということを目途に、医師確保に取り組んでいるところでございます。

【斉藤委員】
 千厩病院はかろうじて2人は増やしたいと。どこもそういう病院なんです。
 そういう意味では、たった23人の増員で、機能強化と連携なんか「絵に描いた餅」だと率直に指摘をしておきます。
 今までの実績からいったって、県の医師確保の計画からいったって、242人も確保見込みがあるというのに、わずかこれしか増やさないというのは、知事、県の計画から見てどう思いますか。たった23人増員で新しい県立病院の充実図れますか。

【達増知事】
 県立病院の次期経営計画では、県内において高度専門的な医療を安定的に提供していくということと、身近な医療を提供するというニーズにも応えていくという2つの方向性に沿いながら策定しているものであり、これを実現するために必要な医師の確保に取り組んでもらいたいと思います。

【斉藤委員】
 知事選挙の選挙公報を持ってきました。知事の公約は、「全県的な医療提供体制の拡充」「周産期医療の強化」「県立病院体制の充実」です。ぜひこの公約の立場に立ってやっていただきたい。

2.看護師等の増員について

【斉藤委員】
 次に、看護師・医療技術職員は私は減らすべきではないと。
 新しい県立病院の経営計画では、看護師は45人、医療技術職員は10人、事務管理は4人「減らす」計画です。増員じゃないんです。夢も希望もない計画に、医療現場では落胆と怒りの声が広がっています。なぜ減らすのですか。看護、医療の質が低下するのではないですか。

【医療局長】
 次期経営計画では、限られた医療資源の中で、県立病院間の機能分化と連携強化を推進することとしており、病床利用率が低迷している病院を中心とした病床適正化等により、職員配置の見直しを図る一方、リニアック等の高度医療機械の集約や新たなHCUの整備などの基幹病院への機能集約・強化にともなう職員の重点配置を進めることとしております。
 これらの取り組みを進めることで、人口減少等による医療需要の変化に的確に対応していくとともに、医療の質の向上や医療安全の確保を図りながら持続可能な医療提供体制を構築してまいります。

【斉藤委員】
 野原保健福祉部長にお聞きしたい。岩手県保健医療計画では、看護師をどれだけ増やす計画になっていますか。

【保健福祉部長】
 昨年10月に国が策定しました看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針におきましては、高齢化の進展にともなう看護ニーズの増大を受けまして、看護職員の需要数は2040年度に向けて増加していくものと推計しております。本年3月に策定しました岩手県保健医療計画においては、この指針にかかる検討会の資料をもとに推計を行いまして、看護職員数については令和2年の17890人から令和11年までに19000人へ増やす目標としているところでございます。

【斉藤委員】
 県の計画は大幅な増員なんですよ。6年間これから看護師を45人も減らすと、考えられない話です。
 現計画では、計画は本当に少なかったけれども、45人の増員に19人は増やしました。医療技術者は136人の増員計画で132人増やしました。まさに今までの努力に逆行するような計画になっている。
 看護師の9日夜勤はどうなっていますか。

【医療局長】
 8月末時点で、看護師の8回超え夜勤につきましても、延べ人数で前年度比127人減少している状況になっております。

【斉藤委員】
 これは今年度の第1四半期で、9日夜勤は229人いました。昨年度は年間で970人もいたんですよ。45人も減らしたら改善されないのではないですか。

【医療局長】
 職員につきましては、これまでも患者数や業務量の状況を見ながら必要な部門・部署に配置を行っており、看護部門におきましても診療報酬算定上必要な人員を配置している状況でございます。
 そういう中で、看護師の夜勤回数月8回に配慮した職員配置ということも行っているところでありまして、先ほど委員からもお話があった令和5年度の第1四半期では356件だったものが令和6年第1四半期では229人ということで着実に減っているという状況になっているところでございます。

【斉藤委員】
 さらに45人減らしたらもっと悪くなるでしょう。有給休暇は、20日のうち8日しか看護師さんとっていないですよ。ますます取れなくなるんじゃないですか。
 私はこの間、大船渡、磐井、宮古、釜石の病院長と懇談してきました。ほとんどの院長が「看護師やコメディカルの職員は増やすべきだ」と。いま基幹病院でも高齢の入院患者が増えて、今まで以上に介護と看護とセットで大変な状況になっていると。たくさんの基礎疾患も抱えていると。
 看護の現場では、超過勤務を減らすために、入院患者のお風呂も入らず、1ヶ月も入れていない、衣服の交換もしない、患者のひげもそれないなど、深刻な看護の質の低下が起きています。高齢者の入院患者が増えてこれまで以上の介護の負担も増加しています。減らすのではなく増員こそ必要ではないですか。こういう看護のいまの実態を局長はわかっていますか。

【医療局長】
 看護師につきましては、さまざま業務で忙しいというお話はうかがっているところでございます。ただその忙しいという観点につきましては、看護師の夜勤回数が月8回を超えるですとか、病棟の業務で呼び出しが多い、外来対応が急に混んで大変だというお話は当然聞いているところでございます。
 今回の看護師の減員につきましては、おおむね半分程度が病棟の削減によって職員数を減らそうというものでございまして、その余剰になった部分を使いまして機能分化・連携する病院に改めて人を配置するということでございますので、大きな影響はないということで認識しているところでございます。

【斉藤委員】
 6年間で病棟いくら減らすのですか。

【医療局長】
 現時点で想定しているものは、おおむね2病棟程度ということで考えているところでございます。

【斉藤委員】
 私は、有給休暇もとれない、9日夜勤を強いられている、看護の質が落ちている。こういうときに2病棟減らすんだったら、その分で看護の質を改善することが必要なのではないですか。
 20代30代の看護師が一番辞めているんです。そのときに、6年間で45人看護師を減らすと。本当にいま医療局の看護師さんはがっくりきていますよ。これでは希望がない。
 この6年間の新しい経営計画、医師の確保を見ても、連携強化といったっていくら増やすかも示せない。いま知事が頑張って、全国でもっとも少ない岩手の医師を増やそうというときに、23人ぐらいしか6年間で増やさない。こんなことで県立病院いいんですか。

【医療局長】
 まず医師につきましては、次期経営計画で定めているものにつきましては、常勤医の数として計画を定めているところでございます。ですので、当然奨学金養成医師が増えてまいります。今までは、なかなかそこが増えなかったために、65歳以上のシニアドクター等を活用して常勤医の数を確保してきたところでございます。そういうなかで、奨学金養成医師も当然増えてまいりますので、そのシニアに頼っている部分というのは、当然奨学金養成医師の方に置き換えていくと。また、シニアの方々は、やはり年齢に見合った働き方ということですので、常勤医というよりは非常勤というような形でご貢献いただくというようなことに移行させていくということになろうかと思っております。ですので、常勤医という形ではございませんけれども、医療という形では何らか貢献していただくという形にもなろうかと思っております。
 また、看護部門につきましては、現経営計画自体で、病床適正化を除きまして、看護師は計画時118名に対して167名ということでかなり増員して、一定程度充実をさせてきたつもりでございます。そういうなかで、今回コロナという対応もございましたので、さらにそこも加えて増員しているというようなことですので、やはりコロナが落ち着いた分につきましては、そういう部分もある程度整理するとか、当然人口減に伴いまして病床の削減は必要だというところにつきましては、整理をしていくと。そういうものの財源を使いまして、しっかり機能強化していくところに配置していく考えで計画をつくっているものでございます。

【斉藤委員】
 コロナで看護師を増やしたと。だったらそれを看護の質の改善のために使う。そういう発想がないんですよ。厳しい今の看護師さんの状況を何ら改善しようとしない。医師の厳しい勤務状況を何ら改善しようとしない。だから夢も希望もないという、本当にこれでは大変だと思います。