2024年10月15日 決算特別委員会
復興防災部に対する質疑(大要)
・復興の残された課題について
【斉藤委員】
東日本大震災津波からの復興で残された課題についてどう取り組むのかお聞きをします。
国の第2期復興・創生期間というのは来年度までということになっており、政府は基本的にはそれで復興の取り組みは完了するという方向を示しています。しかし先ほどの部長の説明でも、残された課題、心のケアの問題とか被災者の生活再建支援とか、水産業の復興・再生の課題とかあると思いますけれども、こうした引き続き中長期で取り組むべき課題について、国は第2期復興・創生期間以降どう取り組もうとしているかを示してください。
【復興推進課総括課長】
復興の残された課題についてでございます。国の基本方針では、岩手県を含む地震・津波被災地域について、令和7年度末までに復興事業がその役割を全うすることを目指すとされているところであります。
国においては、本年4月に有識者によるワーキンググループを設置し、令和8年度以降における復興施策の方向性等について、現在、検討を進めているところでございます。
8月にその中間報告が行われましたが、ワーキンググループの構成員の皆様に本県への現地視察を行っていただくなど、支援の継続を強く訴えた結果、全ての復興事業が令和7年度末で一律に廃止される事態にはならない見通しとなったものです。
現在、ワーキンググループにおいて最終報告に向けた議論が継続しているところであり、引き続き、国に対して、被災者の皆様に寄り添った対応を求めてまいりたいと考えております。
【斉藤委員】
被災者の生活再建で、被災者支援センターが大変重要な役割を果たしていると思いますが、被災者支援センターの昨年度の取り組みの実績を示してください。
【被災者生活再建課長】
いわて被災者支援センターの取組実績についてでありますが、令和5年度は、126人から相談があり、相談対応回数は2,941回となっているところです。
センターに寄せられる相談は、被災を起因としながらも、その後の生活環境や社会環境の変化に伴い、複雑かつ複合化しているところです。
具体的には、生活費の負担増による家計のひっ迫、住宅ローンなど多額の負債の整理など、家計や債務に関する相談が多くなっています。
また、専門的な支援が必要なケースについては、弁護士やファイナンシャル・プランナーとも連携しながら、一人ひとりの状況に応じたきめ細かな支援を行っています。
今後も、センターの特徴を十分に生かしていくため、引き続き、弁護士会等の関係機関などと連携を図るとともに、介護や子育て、生活困窮など支援ニーズに対応した包括的な支援に取り組む市町村や市町村社会福祉協議会などと一層の連携を図っていくこととしています。
【斉藤委員】
今の答弁にありましたけれども、相談対応回数は、令和4年度は2664回でありました。5年度は2941回と増えています。専門家派遣、これは弁護士等による相談会ですが、これも令和4年度は125回に対して令和5年度は131回と増えています。
そういう点で、センターでは、一人ひとりの被災者の相談に対して大変詳しいカルテを作って継続的な支援を行っていますが、この個別支援計画の作成とその解決状況、支援完了状況を示してください。
【被災者生活再建課長】
個別支援計画の作成と支援の状況についてでありますが、令和3年度の開設から令和5年度末までに、545人から相談が寄せられ、このうち、継続した支援が必要と認められた383人について、個別支援計画を作成しており、これまでに252人の支援が終了し、131人の支援を継続しています。
【斉藤委員】
こういう形で、1回の法律相談だけでは解決しないので、継続的な支援を行って、そして体制が弱い中で、訪問・同行支援、アウトリーチもやっています。これが昨年度は99回で前年度より倍以上に増えています。
そういう点で、この被災者支援センターの体制の強化が必要なのではないかと思いますがいかがでしょうか。
【被災者生活再建課長】
いわて被災者支援センターの体制強化についてでありますが、センターに寄せられる相談は、複雑かつ複合化し、従来の福祉分野である介護や子育て、生活困窮ごとの対応では困難なケースが生じていることから、課題の解決に向けては適切な専門機関へのつなぎがより重要となっており、今年度も、弁護士等の専門家や市町村、市町村社会福協議会などとの一層の連携強化により、相談体制の充実に努めているところです。
【斉藤委員】
相談体制の充実に努めているが体制はあまり変わっていないと。充実するんだったらこれだけの相談、動向支援、継続的な支援をやって、本当に被災者支援センターは岩手県がこういう形で専門家の協力も得てやっているというのは、全国的に見ても素晴らしい取り組みです。震災から13年経って岩手県が引き続きこういう取り組みをやっていることに皆びっくりしています。
例えば、心のケアの取り組みは50人体制です。こちらは4〜5人です。やはり今の取り組み、相談件数も同行支援も増えている中で必要な体制の強化も考えていただきたい。
・福島原発事故による汚染水について
【斉藤委員】
汚染水の海洋放出による県内への影響、損害賠償請求の取り組みはどうなっているでしょうか。
【放射線影響対策課長】
まず、処理水の海洋放出による県内への影響についてでございます。昨年8月からの処理水の海洋放出に伴いまして、昨年度のアワビの価格が前年比で4割ほど、ナマコの価格が3割ほど下落するなどの深刻な影響が出ております。
また、損害賠償の状況についてでございますけれども、東京電力は全国の数値のみ公表しているところでありますが、今月9日時点で約670件の請求に対して、約280件で430億円ほどの支払いが行われたと伺っております。
一方、県内の状況でございますが、県内の漁業団体は未だに東京電力との交渉の途上にございます。また、水産加工業者の中にも一部、東京電力との協議を行っている状況にございますけれども、一方で、影響を受けながらも損害賠償請求に至っていないケースがあるということも聞いております。
このため、県では、影響を受けた事業者に対する東京電力の損害賠償が円滑に進むよう、国や東京電力に対しまして、政府予算要望の際に、被害の実態に即した速やかな賠償を求めておりますほか、沿岸市町村や県漁連と共同での要望を行うとともに、水産関連業者を支援するための説明会の開催などに取り組んでいるところでございます。
【斉藤委員】
7月26日に岩手県が、岩手三陸連携会議、岩手県漁連が一緒になって政府に要望したというのは評価をしたいと。しかしまだ損害賠償請求までいっていない。請求するのが面倒だと。本当に被害を与えている側が面倒な仕組みを作り、被害を受けても請求できないというのは、もっと簡素にして請求できるようにさせなければいけないと思います。
そこで、先日宮古市で説明会がありました。この説明会の内容、当事者からどんな意見や要望が出されたのか示してください。
【放射線影響対策課長】
今、委員からお話しいただきましたとおり、県では、先月、宮古市におきまして、水産関連業者向けの説明会を開催しております。
事業者や漁業団体、関係団体、50名程度の皆様に参加をいただきました。
その中では、経済産業省から「水産業を守る」政策パッケージをはじめとする支援事業の説明を行いましたほか、県内事業者による東京電力への損害賠償請求を支援するため、東京電力から損害賠償に必要な書類や手続等の説明を行ったところでございます。
事業者の皆様からは、輸出の関係の証明書類等の確保に手間がかかるといった声を伺ったところです。
今回の説明会では、一方的な説明だけではなく、希望する事業者を対象にした、東京電力との個別相談会も開催しておりまして、東京電力では、今後、相談のあった事業者を個別に訪問して、請求に向けた支援を行っていく意向と聞いておりますので、県としても、東京電力に対しては丁寧な対応、そして迅速な対応を求めていきたいと考えております。
・局地的豪雨対策について
【斉藤委員】
8月、盛岡に大変な豪雨があり被害も出ました。
そこで、多発する風水害の対応に対して、風水害対策チームがさまざま検討されて、今後の防災対策について市町村に通知が出されましたが、その具体的な内容を分かりやすく示してください。
【防災課総括課長】
市町村への通知でございますけれども、この通知は、線状降水帯など突発的な風水害に対する、平時からの備えの重要性や災害時の対応について改めて周知したものでございます。
その内容でございますけれども、気象情報等を踏まえた平時からの対応として、避難情報発令地域の絞り込み規程の整備等により発令基準を見直すこと。即時に避難所の開設ができるよう、具体的な設置手順を記載したマニュアルの整備、見直しを行っておくこと。
災害時の対応として、気象情報で線状降水帯や短時間の大雨が発生した場合に必要な対応が行えるよう、予め体制を検討しておくこと。水位周知河川に指定されていない河川についても、水位等の情報を収集する方法があるので、その方法等について事前に確認しておくこと。
また、住民への周知における平時からの対応として、住民に対しては、避難のあり方をわかりやすく周知すること。ハザードマップにより、それぞれの住民に危険な場所を確認するよう促しておくこと。
災害時の対応としては、Lアラートを活用して住民への迅速な情報伝達を行うため、地区名や避難所の情報を事前にしっかりリスト化し登録する等予め準備を行うこと―となっております。
【斉藤委員】
いま扇状降水帯というのは全国どこでも発生する、大雨特別警報も出るという状況で、やはり地球温暖化が背景にあると思いますけれども、風水害の状況が大きく変わっているんだと思いますね。盛岡の対応などを見ますと、やはりしっかりした平時の体制、訓練なしに対応できなかったのではないかと受け止めています。
2016年の台風10号災害の教訓をどう生かすのか。岩泉町はこれをしっかり受け止めて、犠牲者を出した高齢者施設は毎年避難訓練をやっているわけですよね。やはり訓練をやっていなかったら、いざというときにできないと思うんです。全県的にも県内市町村でも、岩泉町の台風10号災害の教訓を生かす取り組みがどうなされているのか、なされていないのか。どうすればいいのか、そのことをお聞きします。
【防災課総括課長】
平成28年の台風第10号の教訓でございますが、県、市町村でその教訓を生かした対応を行っております。
県では、平成28年台風第10号災害で得られた教訓を踏まえ、市町村長への河川情報に係るホットラインの実施風水害対策支援チームによる、台風接近時の避難勧告等の発令や避難所開設に係る市町村への助言、グループホームや特別養護老人ホーム等の要配慮者利用施設における避難確保計画の策定支援などに取り組んできたところです。
岩泉町では、平成28年台風第10号の教訓を踏まえ、元消防署長を危機管理監に任用し、新たに危機管理課を設置、専任職員を3人に増員するなど組織の充実を図ったほか、防災士養成講座の開催や協議会の設置、ドローン運用隊の設置、WEB雨量観測器を町独自に配備するなど、地域防災力の向上に取り組んでいると承知しております。
こうした取組は、県主催の危機管理トップセミナーなどで紹介し、他の市町村の参考にしていただいていますし、そういった取組が徐々に広がっていると認識しております。
【斉藤委員】
ぜひ台風10号災害の教訓、岩泉町はそれを受けて防災士も養成して、答弁あったように危機管理体制を強化してやっているわけですね。本当に市町村でも学ばなくてはならないのではないか。
実は盛岡市の豪雨で、障害者施設はいち早く自主避難しました。その理由は、岩泉の高齢者施設の教訓なんです。ところが避難したところが体育館で、とても障害者の方々が避難生活できるような状況ではなかったのも事実です。障害者施設とか高齢者施設の場合には、本当に避難して、そこで一日でも生活できるようなしっかりした避難施設を準備するし、そこに避難できる訓練がされるという、そのことが大変大事なのではないかと感じましたがいかがでしょうか。
【防災課総括課長】
避難所の改善と要支援者の避難について、1つは計画をしっかりと作成する、もう1つはご指摘のとおりそれをしっかりと訓練すると。「日頃訓練出来ないことは本番でも出来ない」ということで、県の職員も訓練しておりますし、そういった取組をそれぞれ市町村等でもやっていただくよう話をさせていただいております。
今後の総合防災訓練なども避難所の内容のものをやることとなっており、こうした取組を通じてそういった計画と訓練がしっかり行われるように、市町村と一緒になって取り組んでまいりたいと考えております。