2024年10月18日 決算特別委員会
保健福祉部に対する質疑
(大要)


・新型コロナ対策について

【斉藤委員】
 昨年度の感染状況はどうだったのか。第9波、第10波、今年度の第11波の感染状況について、高齢者施設、医療施設のクラスター発生状況、入院患者の状況、死者数について示してください。

【感染症課長】
 感染状況についてでありますが、昨年度のいわゆる第9波及び第10波、今年度の第11波につきまして、それぞれ8週間の比較となりますが、高齢者施設のクラスター報告数については、第9波は63件、第10波は57件、第11波は58件となっており、医療施設のクラスター報告数については、第9波は23件、第10波は30件、第11波は25件となっております。
 また、入院者数については、県内の主な21病院の延べ人数となりますが、第9波は5,481人、第10波は4,900人、第11波は3,819人となっております。
 次に、厚生労働省の人口動態統計月報における、新型コロナウイルス感染症を死因とする死亡者数については、第9波があった令和5年8月から9月の2か月間は102人、第10波があった令和6年1月から2月の2か月間は98人となっております。
 なお、第11波のあった今年8月から9月の統計はまだ公表されていないところです。

【斉藤委員】
 昨年5月8日に新型コロナは5類に移行しました。それ以降、9波、10波、11波と、いま答弁があったように、高齢者施設のクラスター発生状況というのはほぼ同じレベルです。医療機関の場合もほぼ同じレベルで発生をしていると。
 死者数で見ると、第9波は102人、第10波は98人ということで、大変な死者が出ている。コロナ対策の究極の目標は、死者をなくすことだと思うんです。ちょっと調べてみましたら、第6波は43人、第7波が97人なんですよ。第8波は去年の3月9日までで416人でしたから、第8波が本当に大きな波だった。しかしそれと比べると、第8波以外は死者数は今の方が多いといってもおかしくない状況です。クラスターもそうです。感染者数というのは、いま全数調査ではないので比較できないんですけれども、やはり新型コロナというのは、5類に移行したけれども、本当に同じような規模で波が続いているのではないか。この点についてお聞きします。

【保健福祉部長】
 ご指摘の通り昨年5月に第5類になりましたが、新型コロナウィルス自体は今もあり、これまでパンデミックということで対応していましたが、エンデミックという季節性インフルエンザと同じような対応に制度的にはなりました。
 ただ一方で、病原性等はまったく変わっておらず、オミクロン株が続いていますけれども、株も毎回少しずつ変異して、流行の波が夏の波と冬の波といった形で続いており、それに伴いクラスター等についても引き続き発生している状況と認識しております。

【斉藤委員】
 改めて経緯を見て驚いたのは、第8波というのは最大の波で死者も多かった。実はこの第8波のさなかに、5類移行の方針が決まっているんですよ。収束したから、そういう傾向があるから5類移行を決めたのではなく、全然関係なく一番大きな波の後半戦の部分、去年の1月です。これは財政が理由ですよ。コロナにお金をかけられないと。そういう財政的な事情から新型コロナは5類に移行したのではないか。そういう意味で、この点は大変大事なことだと思います。
 もう1つお聞きしたいのは、高齢者施設における感染者への対応はどうなっているでしょうか。

【長寿社会課総括課長】
 高齢者施設における感染者に対する対応についてありますが、新型コロナウイルスが5類に移行した現在において、高齢者施設の入所者が新型コロナウイルスに感染した場合は、病状が軽症の患者には、薬の処方などにより施設内療養が行われており、医師が入院による治療が必要と判断した場合には、受入れ可能な医療機関へ入院して治療が行われております。
 県では、5類移行に当たって、高齢者施設等に対し基本的な感染対策の徹底、感染者が発生した場合の療養体制の確保や協力医療機関等との連携内容の再確認などについて、文書で依頼をしたところです。

【斉藤委員】
 実は第8波のときに全体の死者が多かった。去年の予算委員会で取り上げた時点では416人でした。ところが、高齢者施設内で亡くなったのが124人です。約3割です。これは大問題だと。新型コロナ対応を県も検証したと思いますが、私振り返りを読んでみたけれども、そういう事実の認識もない。残念ながらこの教訓をどう生かすかという記述もなかった。第8波で死者の3割が高齢者施設内で、当時「留め置き」と言われましたが、ここで亡くなったということをどのように検証したのか示してください。

【医療政策室長】
 コロナの振り返りについて、医療提供体制や検査体制等につきまして、医療体制部会だとか感染症専門部会の方でご議論いただきながら振り返りは行ってきたというところでございます。
 委員からご指摘がありました高齢者施設の死者についても、医療機関で治療を必要とするというような方々だとか、そういったところは適切に医療機関で治療してきたというようなところもあり、感染状況に応じた医療提供体制については提供してきたというところでございます。

【斉藤委員】
 去年の2月議会でも取り上げたけれども、だいたいそのように言うんだったらこんなに死者出ないですよ。死者の3割が高齢者施設内の療養中に亡くなった。実態は、酸素飽和度が高い、本来なら入院させなくちゃならない入所者も入院できなかった。これが事実です。だからもっと検証して、そうならないような対策をしっかり打ち出す必要があるのではないかと。もう一度部長に聞きましょう。

【保健福祉部長】
 第8波におきましては、介護施設等の高齢者施設をはじめ、医療機関でもかなり対応が難しい状況でした。我々も高齢者施設等で本当に医療が必要な方々については当然されたと思うんですが、課題としては、パンデミックにおける介護施設等の福祉施設と医療施設の連携体制、もちろん形式上はありますが、そういった部分が弱かったとは考えています。したがい、いま新しい介護報酬、医療報酬の方でも連携についての加算などもそういったことを踏まえて設けられたと認識しておりますし、県としてもそういったことを踏まえて、医療機関と介護施設等との連携について取り組みを進めているところでございます。

【斉藤委員】
 第8波はたしかに爆発的な感染といってもいいような状況だったということもありますけれども、やはり本当に死者をなくすというのが究極の目標ですから、振り返りの中で、10万人あたりの感染者数は岩手県は最低なんですよ。そういう意味では岩手県は頑張ったと。しかし死者数で見ると、少ない方だけれども犠牲者が出たのは事実なので、しっかり検証して、対策をもっと分かりやすいものにしていただきたいと思います。
 そこで、世界的な感染状況、各国の対応についてはどうなっているでしょうか。

【感染症課長】
 世界的な感染状況と各国の対応についてでありますが、国立感染症研究所の令和6年9月の調査分析によると、新型コロナウイルス感染症の世界的流行は継続しており、オミクロン株のJN.1系統が本年1月頃に主流となった後、4月頃からはKP.3系統の割合が世界的に増加していることが報告されています。
 令和5年3月にWHOが公表した新型コロナワクチンに係る指針において、高齢者や基礎疾患を持つ方を対象とした追加接種が推奨されているところであり、欧米等の諸外国においても、高齢者等へのワクチン接種が継続されています。

【斉藤委員】
 世界的な流行は継続していると。日本も本当に9波、10波、11波と、ほとんど同じレベルで推移しているのではないかと。だからこの冬に第12波もあり得るんですよ。そういう意味では、政府はなにかもう終わったような感じで、補助も何もなくすとしていますが、いま病院は面会禁止、施設も面会禁止です。だから5類前と同じ体制で感染対策に取り組んでいるのが病院や高齢者施設の実態です。そういう点でしっかりした情報発信をしていただきたいと思います。
 そこで、新型コロナ補助金の縮小・廃止の影響について、医療機関の経営状況などについて示してください。

【感染症課長】
 補助金の縮小・廃止の影響についてでありますが、令和5年11月に公表された医療機関経営状況に係る国の調査によると、令和4年度における一般病院の収支は平均で4千万円余の黒字でありましたが、コロナ関連補助金の収入を除くと、2億2千万円余の赤字であるとの結果が示されたところです。また、令和5年度の実績については、まだ公表されていないところです。
 なお、総務省が先日公表した「令和5年度地方公営企業等決算の概要」では、全国681の病院事業の収支総額について、令和4年度は1,996億円の黒字だったところ、令和5年度は2,055億円の赤字となり、差し引き約4,000億円収支が悪化したことが示されています。
 医療機関の経営に与える影響については、引き続き状況把握に努め、対策が必要な場合は全国知事会等を通じて国へ要望してまいります。

【斉藤委員】
 民間も公立病院も、本当にコロナ補助金がなかったら赤字だと。特に県立病院は35億円の損失を出しましたが、令和5年度は60億円の補助金が18億円に減ったのです。だから本当にまだコロナが継続している中で補助金が削られるということは、赤字を押しつけるような体制で、ぜひこれも全国的な問題にして、民間も公立もやっていけませんから、しっかり対応していただきたい。

・介護の課題について

【斉藤委員】
 県内における介護離職の状況、介護事業所の休止・廃止の状況とその理由について示してください。

【長寿社会課総括課長】
 県内における介護離職等の状況についてでありますが、介護離職の状況については、総務省の実施した令和4年就業構造基本調査によりますと、前職の離職理由のうち、介護・看護のために過去1年間に離職した者の数は、全国で10万6千人、そのうち本県は1,100人となっています。
 また、県内の介護事業所の休止・廃止の状況についてですが、令和6年度は、8月までの間に63事業所が休廃止をしています。そのうち6事業所が経営難を、23事業所が人材不足を理由としています。

【斉藤委員】
 本当にいま介護の土台が崩壊しつつあるのではないかという気がします。
 介護職員の離職と確保というのが大変切実ですが、介護職員の不足の状況、介護職員の賃金の実態、この間の引き上げの状況を示してください。

【長寿社会課総括課長】
 介護職員の離職等の状況についてでありますが、公益財団法人介護労働安定センターが実施した介護労働実態調査によりますと、令和5年度における本県の介護職員等の離職率は12.2%でございます。近年は、10%台から13%台で推移をしている状況でございます。
 また、介護職員の賃金の状況についてでございますが、令和5年度賃金構造基本統計調査によりますと、本県の介護職員の月額平均賃金は21万7,800円であり、令和元年度と比較すると、1万7,500円増加をしております。
 一方で、全国の介護職員の月額平均賃金との比較では3万600円低く、本県の全産業の月額平均賃金との比較では、4万1,800円低い状況となっております。引き続き処遇改善が必要な状況にあるものと認識しております。

【斉藤委員】
 21万7800円というのは、全国の全産業と比べると10万円低い。本当に低賃金のまま置かれているために、介護で働きたいと思っても介護職に就けない。親が反対すると。そういう深刻な状況です。
 私たちは、国の介護保険に対する国庫負担を、いま25%ですが、これを35%に引き上げて、いわば国民の負担なしに介護の状況を改善することを提案しております。これは自民党・公明党も政権を離れたときに言っていたことです。これは本気になってやれば、国庫負担の増額で今の崩壊状態の介護保険の状況を打開できるのではないかと思います。
 高齢者施設等への物価高騰対策について、令和5年度はどれだけ支援したのか。令和6年度の見通しはどうなのか。

【長寿社会課総括課長】
 高齢者施設等への支援についてでありますが、県では、物価高騰により厳しい経営環境にある高齢者施設等を支援するため、令和4年度から令和5年度に、計3回、累計で7億7,515万円の物価高騰対策支援金を支給したところです。
 支援金については、事業者団体との意見交換等も参考にしながら、令和5年度は、対象に訪問・相談系の事業所を追加したほか、令和5年度第2回目では、入所系及び通所系の事業所への支援金に、食材料費分を加え、拡充を図ったところです。
 現在、国において物価高騰に対応した新たな経済対策の策定が進められているところであり、県としては、こうした動向を注視しながら、必要な対応について検討したいと考えております。

【斉藤委員】
 7億7000万円の支援をしたと。これがなかったらこの分が負担になりますので、ぜひ国と並行して取り組んでいただきたい。