2024年10月22日 決算特別委員会
農林水産部(第一部)に対する質疑
(大要)


・「令和のコメ騒動」―コメ不足の要因と課題について

【斉藤委員】
 もう自民党農政の矛盾と破綻の表れではないかと思っているのですが、今回のコメ不足の実態をどう把握しているでしょうか。

【流通企画・県産米課長】
 令和5年産米につきましては、高温・渇水の影響による精米歩留まりの低下、米以外の食料品の価格上昇、インバウンド等の人流の増加によりまして、需要の増加等により減少していたところに、今年8月の地震・台風等による買いだめの動きなどにより、スーパー等での販売数量が増加し、全国的に店頭の米が品薄になったものと認識しています。
 県内におきましても、8月下旬頃からおよそ1か月間、米が品薄となったことから、スーパーにおきまして米の販売数量制限が設けられるなどの状況があったものと承知しています。

【斉藤委員】
 政府の答弁をレコードのように述べた感じで、全然それでは自分の頭で考えた実態にはならないのではないか。そもそも民間在庫は156万トンあったじゃないですか。なぜコメ騒動になったのですか。

【流通企画・県産米課長】
 委員のお話にございましたとおり、民間在庫に関しましては160万トンありましたけども、全体の民間在庫は令和6年8月時点速報値で65万トンとなっておりまして、対前年同月比で40万トンの不足となったところでございます。この中、8月に先ほど申し上げた、地震や台風による買いこみが発生しまして、3週連続全国で販売数量が増加したことから、品薄になったものと認識しています。

【斉藤委員】
 コメ不足の要因というのは、政府による生産抑制政策、ここに根本的問題があったと。昨年度はコメの生産量は660万トン、消費量は702万トンです。生産と消費でこれだけ落差があった。
 それで、主食用の水稲作付面積、生産量、稲作農家の推移、この10年間で示してください。

【水田農業課長】
 主食用米の作付面積等の推移についてでありますが、国の作物統計調査によると、本県の令和5年度の主食用米の面積は42,800ヘクタール、生産量は235,800トンで、平成26年度と比べ、作付面積は16パーセントの減、生産量は18パーセントの減となっています。
 また、国の農林業センサスによると、最新の令和2年度の稲作農家数は27,272経営体で、5年前の平成27年度と比べ、21パーセントの減となっています。

【斉藤委員】
 主食用米の作付面積は、この10年間で8400ヘクタール減少したんです。16%というのはそういう規模です。そして生産量は51900トン減少なんですね。稲作農家の推移は、残念ながら5年間の推移ですが7355戸、21.2%減っているんです。どんどん米の生産基盤が減少してきた。
 そこに政府が消費量と生産量をギリギリで生産調整、生産抑制を押しつけてきた。だから米が少なくなるとこういう異常な事態、全国のスーパーから米がなくなったのですから。本当に異常な事態です。そういう点で、主食用の米の生産基盤の減少というのが根本にある大問題ではないかと。
 そこで、2013年の日本再興戦略では、米の生産コスト削減の目標をどう定めたか示してください。

【水田農業課長】
 日本再興戦略についてでありますが、平成25年に、国が産業競争力の向上を目的として策定したものであり、農業分野では、生産・流通の効率化により所得の増加を図る観点から、米については、令和5年までに、資材・流通面での産業界の努力も反映して、担い手の生産コスト、具体的には、米の60キログラム当たりの生産コストを平成23年の全国平均から4割削減することを目標に定めています。

【斉藤委員】
 米の価格を4割下げると。これは実績はどうなりましたか。

【水田農業課長】
 生産コストについてでありますが、国が公表している最新の値である令和4年産米の60キログラム当たりの生産コストは、全国平均で15,273円、平成23年産米の生産コスト16,001円と比較すると、約5%の削減となっています。

【斉藤委員】
 令和4年では15000円なんですが、その前は13000円ぐらいではなかったでしょうか。いわば米の生産は減らす、米の価格は下げる。こういう形で米を作ってられないという状況になったということははっきり示していかないと、だいたい米の価格を4割下げて、米がもつわけないじゃないですか。ほとんどが赤字じゃないですか。
 米の増産と備蓄の増加コストが必要だと思うけれども、来年度の米の需給計画はどうなっていますか。

【水田農業課長】
 国が、令和6年7月末に策定した「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」によると、供給量は、速報値である本年6月末の民間在庫量156万トンと、本年産の主食用米等生産量を令和5年産とほぼ同量と予想した669万トンとを合わせて、825万トンと見込んでいます。
 需要量は、人口減少や1人当たりの消費量の減少により、前年より約30万トン少ない673万トンを見込んでおり、供給量から需要量を差し引いた、令和7年6月末の民間在庫量は、本年6月末並みの152万トンと推計しています。

【斉藤委員】
 今年これだけ米不足になって、スーパーから米が無くなったのに、来年の生産量も669万トンです。そしてこの669万トンというのは消費量より30万トン少ないんです。今までも年間10万トン減らしてきた。来年度30万トン減らす根拠はなんですか。

【水田農業課長】
 民間在庫量の関係でございますが、今年の6月末、来年の6月末の民間在庫量は、これまで需給量の目安とされてきた180万トンを下回る水準となっていると認識しております。ただ国の方は、この在庫水準についても、需要が減少している中でもあるので、需要量に対する在庫量の割合ということで見ますと、在庫率で見れば、平成23年度から24年度と同水準ということで、全体としては十分な在庫量の確保がされていると説明を受けているところでございます。
 先ほどお話ししました152万トン、需要量を673万トン見込んでいるところでございますけれども、今後需給見通しの新たな情報が10月末以降に国から並行して提示される予定となっており、引き続き注視してまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 今年はなぜ700万トンの消費量になったのか。そしてギリギリの生産と消費の米生産の計画で、コメ不足が実際に起きたわけです。みんな来年度もコメ不足になると。今年は早場米食べて何とかしのいだわけです。来年の生産量といっても少ないし、在庫量だった少ない。本当にコメ政策は破綻したけれども、それを見直しもできない。ここに自民党政治の行き詰まりが示されているのではないかと思います。
 次に、水田交付金の実績、水田の活用実態、畑地化の取り組みについて示してください。

【水田農業課長】
 令和5年度の水田活用の直接支払交付金について、本県への交付金額は約112億円となっており、前年度から約8億円減少していますが、水田に作付けする麦・大豆等の畑作物を対象とした「畑作物産地形成促進事業」と、新市場開拓用米や加工用米等を対象とした「コメ新市場開拓等促進事業」を加えると、前年度と同程度の交付実績となっています。
 令和6年産の作付状況については、水田全体の作付面積は約69,500ヘクタールで、前年と比べ約1,400ヘクタール減少しています。作物別に見ると、前年と比較して、飼料用米や飼料作物などが減少している一方で、主食用米やホールクロップサイレージ用稲、輸出用米などが増加しています。
 また、畑地化について、今年度、国事業の活用を希望した面積は約600へクタールで、その全てが採択されています。

【斉藤委員】
 結局、岩手の水田における主食用米、戦略作物等の作付状況を見ますと、飼料用米が936減少です。そして飼料作物も933ヘクタール減少しています。この減少の要因はなんですか。

【水田農業課長】
 飼料用米については主食用米への転換も理由の一つと聞いております。飼料作物については畑地化の取組等により減少しています。

【斉藤委員】
 結局水田は1780ヘクタール減少したのです。そして今飼料用米言いましたが、936ヘクタール減って、300ヘクタールだけです。結局政府が水田を減らすために畑地化をやった。畑地化というのは一時金だけで、一時金があるからそれに乗った人はいるかもしれないけれども、水田は減らされる。これは再び米が作れなくなってしまう。本当に大変なことだと思います。
 1780ヘクタール減って、畑地化は1000ヘクタールです。結局780ヘクタールの水田がつぶされたと。耕作放棄地がこの間増えているのではないですか。

【水田農業課長】
 水田面積の減少について、面積内訳等の詳細を把握することは難しいが、地域農業再生協議会等からの聞き取りによると、その減少理由は、転換作物等の生産休止・水張り等の自己保全管理や、出荷・販売をしない自家用野菜等への切り替え、基盤整備事業の実施、工業用地住宅用地等への農地転用などによるものと聞いています。

【斉藤委員】
 耕作放棄地がどんどん増えていると。耕作放棄地の資料を見ますと、4874ヘクタールです。どんどん生産基盤が崩されているということも指摘しておきたいと思います。
 米の需給に政府が責任を持ち、価格保障と所得補償が必要だと思います。欧州諸国の農業所得に占める直接支払いの割合をどのように把握していますか。

【水田農業課長】
 欧州諸国の農業所得に占める直接支払いの割合については、国から公表されていないため、把握しておりませんが、株式会社農林中金総合研究所が公表している資料によると、EU加盟28か国では、50.4%、スイスでは92.5%となっています。

【斉藤委員】
 その通りです。スイス92.5%、ドイツ77%、フランス64%、EU平均が50.4%。日本は30.2%です。農業所得に占める直接支払い、国の補助が大幅に少ないというのが日本です。
 もう1つ言いたいのは、いま米不足の中で残念ながら米が高騰しています。高騰の実態を把握していますか。

【流通企画・県産米課長】
 総務省が公表しております全国の消費者物価指数によりますと、令和2年を100とした場合の米類の物価指数につきましては、本年7月で111.3ポイント、8月が122.1ポイント、9月が139.6ポイントと、今年の夏に増加しております。

【斉藤委員】
 総務省が発表した9月の全国消費者物価指数、米は前年同月比44.7%、相対価格で22700円です。とんでもなく上がっている。
 もう一つ重大なのは、米の販売量が9月16日から10月6日まで3週続けて前年同時期比の16.4%〜23.8%下回った。米が4割も上がって、販売量は下がっています。これをどうやって打開するか。米の概算が上がったのは当然だし、だから政府がこれを直接全部転嫁するんじゃなくて、きちんと消費者が購入できる額に抑えるということをやらなかったら、米の価格が上がったら消費量が減る。こんなことをやっていたらますます米守れなくなります。こんなやり方したら米不足何回も繰り返されて、米生産がだめになるということになりませんか。

【農政担当技監】
 本県の稲作は、地域農業の核となる経営体を中心として、小規模・兼業農家など多くの経営体が生産活動に携わっており、こうした経営体が、将来にわたり、意欲をもって取り組むことが大事だと思ってございます。
 国においては、農業者が、将来にわたり意欲をもって生産活動に取り組むことのできる何らかの支援策を検討すべきと考えます。
 県としては、国に対し、本年6月に実施した、令和7年度政府予算に対する提言・要望において、米の需給調整の着実な推進のほか、多様な農業者のニーズを踏まえた総合的かつ効果的なセーフティネットの構築、適正な価格形成・取引を推進するための仕組みの早期の構築や、消費者等の理解醸成などを要望したところであり、今後とも、様々な機会を捉え、国に働きかけていきます。

【斉藤委員】
 やはり農業や米生産を農家の自己責任にしてはいけないということです。主食の需給に国が責任を持つ。米の価格保障・所得補償をしっかりやる。
 昨日の岩手日報に、「いわて衆参ダブル選挙 選択の先に」という記事で、農業の特集がありました。東京大学大学院の鈴木宣弘さんが「現状ではあと10年で中山間地を中心に多くの農村が崩壊する。一次産業を守ることは国防につながる。財政出動しないと食糧危機を回避できない」と警告、指摘しています。

・酪農・畜産農家の実態について

【斉藤委員】
 いまの飼料・肥料価格の高騰の中で、酪農・畜産農家の実態、減収の実態と対策はどうなっているか。酪農家戸数はどう推移しているか示してください。

【振興・衛生課長】
 酪農家の経営につきましては、酪農経営については、国の「畜産物生産費統計」の公表値に、「農業物価統計」の公表値を単純に掛け算した数値を示すと、国や県の緊急対策を除き、令和5年の搾乳牛1頭当たりの収支が約5万円となっており、畜産物生産費統計の令和2年の公表値と比べ、約20万円の減少となります。
 また、今年5月、県が経営診断や伴走支援を行っている酪農家13戸を対象に経営状況を調査した結果、令和5年の搾乳牛1頭あたりの収支は約22万円となっており、令和2年と比べ、約3万円の減少となっています。
 県内の酪農家戸数については、国の統計によると、令和6年2月1日時点で約700戸と、資材高騰前の令和2年と比べ、143戸の減少となっています。

【斉藤委員】
 何の対策もなければ、1頭あたり20万円の減収です。岩手県の場合は3万円の減収だと。資料を見せていただきましたが、その理由は、いわゆる雑収入、これは補助金だと思いますが、1頭あたり19万8千円。この補助があったから、それでも1頭あたり3万円の減収。100頭飼っていたら300万円の減収です。そして今年度は何らの対策もありません。大変なことです。
 本当に自民党は農業・酪農をどう考えているのかと思います。国も経済対策をいま考えていますが、昨年度を上回る支援策はどのように検討されているでしょうか。

【振興・衛生課長】
 県では、これまで、飼料の価格上昇分を支援する国事業の活用を積極的に進めるとともに、県独自に、累次の補正予算により、飼料購入費への支援を行ってきたところです。
 令和5年度の「配合飼料価格安定緊急対策費補助」の実績は、約27億1千万円の交付額となっており、令和5年度第4四半期、1月から3月分の補助金については、今年7月に生産者に交付したところです。
 直近の配合飼料価格は低下傾向にあるものの、依然として高く、畜産経営に大きな影響を与えています。このため、県では、配合飼料価格安定制度を所管する国に対し、価格高騰が続いた場合でも、畜産経営体の再生産が可能となる十分な補填金が交付されるよう、制度の拡充を繰り返し要望しています。
 現下の飼料価格の高止まりは、国際情勢等の影響を受けているものであり、全国的な課題であることから、まずは、国において畜産経営の影響を緩和する全国一律の支援策の充実・強化を図る必要があると考えており、県としては、現状をしっかり把握しながら、必要な対策を国に求めていきます。