2024年10月22日 決算特別委員会
農林水産部(第二部)に対する質疑
(大要)


・水産業再生の取り組みについて

【斉藤委員】
 昨年度の主要魚種、サケ、サンマ、スルメイカの水揚げ量、魚市場ごとの水揚げ量、水揚げ額はどうか。震災前との比較を含めて示してください。

【漁業調整課長】
 主要魚種の水揚量等についてでありますが、令和5年の主要魚種の水揚量は、サケは134トンで震災前の0.5%、サンマは4,366トンで震災前の8%、スルメイカは2,589トンで震災前の14%となっています。
 県内13魚市場の総水揚量は、7万3千トンで、震災前の41%となっています。
 県内13魚市場の総水揚金額は、160億円で、震災前の68%となっています。

【斉藤委員】
 先ほども議論がありましたが、この要因と対策はどうなっているか。そして今年度の漁獲状況はどうなっているか示してください。

【漁業調整課長】
 サケの不漁の原因ですが、「国の不漁問題に関する検討会」の報告書によれば、海洋環境の変化に伴う春先の海水温の上昇や、餌となるプランクトンの減少等により、放流後のサケ稚魚が十分に成長できず、生き残る割合である生残率が低下したこと、などとされています。
 サンマの不漁の原因は、今年度は漁場が岸寄りに形成されたことから、前年同期を上回ったものの、依然として震災前と比較して不漁が続いています。
 これは、海洋環境の変化による資源量の減少や、近年、親潮の張り出しが弱くなっており、岩手県沖に漁場が形成されにくい状況が続いていることが挙げられます。
 スルメイカの不漁の原因は、海洋環境の変化による資源量の減少や、まとまった漁場形成がなかったことが挙げられます。
 また、直近のサケ、サンマ、スルメイカの漁獲量ですが、10月10日現在で、サケについては2トン、前年度同期比83%、震災前比6.5%。サンマについては2,113トンで、前年度同期比208%、震災前比12%。スルメイカについては2,144トンで、前年度同期比120%、震災前比22%となっています。

【斉藤委員】
 サケは本当に深刻な状況で、サンマ・スルメイカは前年と比べて昨年度も今年度も増加していると。レベルは低いと思いますが。
 それでもう一方の主力は養殖なんですが、ワカメ・コンブ・アワビの水揚げ量、額、震災前との比較について示してください。

【水産振興課総括課長】
 直近のデータによりますと、まず、水揚量は、
ワカメは令和6年産が、9,660トンで震災前の44%、
コンブは令和5年産が、4,013トンで震災前の35%、
アワビは令和5年度に、101トンで震災前の29%、
ホタテガイは令和5年度に、1,530トンで震災前の24%、
カキは令和4年度に、むき身が341トンで震災前の53%、殻付が1,463万個で震災前の70%、となっています。
 また、水揚金額は、
ワカメは令和6年産が、37億4千万円で震災前の89%、
コンブは令和5年産が、7億円で震災前の46%、
アワビは令和5年度に、8億9千万円で震災前の39%、
ホタテガイは令和5年度に、10億3千万円で震災前の59%、
カキは令和4年度に、むき身が8億5千万円で震災前の84%、殻付が15億3千万円で震災前の126%、となっています。

【斉藤委員】
 養殖もなかなか厳しい状況にあると。震災直後に一番最初に取り組んだのはワカメだったんですね。翌年からこれは水揚げできるということで、そういう形で再建に乗り出したということを思い出しますが、特にワカメが日本一と言われていますが、減少している要因、対策を改めて示してください。

【水産振興課総括課長】
 ワカメの生産量の減少要因と対策についてでありますが、やはり震災後、養殖施設台数及び生産者数の減少が大きく影響していると考えられます。
 それに加え、直近の令和5年産と令和6年産については、高水温の影響等により、生産量が減少している状況です。
 対策としては、県では、岩手県水産技術センターが開発した人工種苗である半フリー種苗を活用して、生産量を増やすよう取り組んでいるところです。

【斉藤委員】
 養殖は基本的には安定した収入が見込まれるものだと思うんですよね。重茂漁協がワカメ・コンブの養殖に取り組みながら経営の安定を図って、加工、付加価値をつけて商品化ということで取り組んできたことは教訓的だと思うけれども、そういうところも今全体として減少していると。本当に残念なことなので、頑張っていただきたい。
 それで、魚種変換に対応した対策と実績を示してください。

【水産振興課総括課長】
 近年の海洋環境の変化等により、本県では、マイワシやブリ、シイラ、タチウオなどの暖かい海に住む魚種の水揚量が増加しています。
 これらの魚種は、県内の消費者にとって馴染みが薄く、安価で県外へ出荷される場合が多いことから、県内での認知度を高め、単価の向上や加工原料としての活用を図っていく必要があると考えています。

【斉藤委員】
 実績はどうですか。

【水産振興課総括課長】
 県では、加工原料としての成分分析を行い、水産加工業者を対象に、成分特性や加工方法等を学ぶセミナーを開催しています。
 また、水揚量が増加している魚種等を対象とした新たな販路や物流のビジネスモデルの構築に向け、国内外の飲食店等のニーズ調査や販路開拓、魚種の特性を生かした加工品や調理の手間を省いた簡便商材の開発等に取り組んでいます。
 今後は、増加している魚種の有効利用に向け、生産分野と流通・加工分野との連携を更に深めていくこととしており、魚種の変化に対応するための取組を一層強化していきます。

【斉藤委員】
 予算委員会のときもお聞きして、しっかりした答弁をもらえませんでしたが、普代と野田は、震災前と比べて普代は水揚げ量153%、野田は162%なんですね。震災前と比べて1.5倍に水揚げを増やしているという要因は何なのか。それは活用しているから水揚げしていると思うんですよ。新しい魚種を活用しているという答弁も少しあったけれども、調べてみましたか。

【漁業調整課長】
 普代村については、マイワシ、サバが増えておりまして、マイワシの水揚量が震災前3か年平均で30.4トンあったものが令和5年ですと65倍の1,982.8トンということで、マイワシがかなり増加しております。サバ類でも震災前3カ年平均で348.3トンというのが令和5年で4.4倍の1,534.6トンに増加しております。
 野田村についても同様で、マイワシが震災前4.8トンあったものが令和5年では191倍の917トン、サバ類が震災前157トンあったものが令和5年で7.6倍の1,195トンと増加しております。
 増加要因としては、近年の海洋環境の変化により、局所的に岸寄りに回遊しやすい条件となったことが考えられます。海洋条件というとで、日々の漁獲のばらつきもあるということで、そういった部分も自然環境の要因ということ。
 直近の状況ですが、令和6年1月から9月30日までの漁獲状況は、普代村で2,619トン、令和5年同期比で86%と若干下がったということで、海洋環境の変化により乱高下している状況です。

【斉藤委員】
 聞きたかったのは、例えば普代の魚市場は総量でも4662トンなんですよ。これは釜石の5468トンに次ぐぐらいの水揚げをあげている。これは去年も一昨年もです。聞きたいのはどう活用されているかです。これだけ水揚げやってどう活用されているか。だから魚種転換というのも、こういうところも参考にしながらやっていく必要があるのではないかというのが質問のポイントなので、どうですか。

【漁業調整課長】
 水揚が増加しているマイワシについては、ミール原料向けの需要で単価が高騰していると聞いております。ミール用の原料として流通されていると聞いておりますし、今後も、こうした魚種の付加価値向上に向けた取組みを進めてまいります。

【斉藤委員】
 主要魚種がこれだけ低迷している中で、獲れる魚種で勝負すると。思い切ってそこの活用を考える必要があると思います。

・クロマグロの漁獲状況について

【斉藤委員】
 クロマグロの漁獲状況、定置網に入っている状況、昨年度と今年度について示してください。

【漁業調整課長】
 クロマグロの漁獲状況等についてでありますが、令和6年度における定置網での漁獲量は、9月30日現在、小型魚が76.8トンで漁獲可能量の92%、大型魚が19.5トンで漁獲可能量の30%を消化しており、前年同期比で小型魚が93%、大型魚は38%となっています。
 定置網では、漁獲可能量を超過しないよう入網したクロマグロの放流を行っており、令和5年度は小型魚と大型魚合わせて推定で約37万9千尾、重量で約2,700トンを放流したと定置漁業者から報告を受けています。

【斉藤委員】
 昨年度は出ませんでしたが、昨年度は小型魚大型魚あわせて15万7210トンですね。
 定置網で放流した分というのは、トン数でいくと2704トンですか。これは何倍になりますか。

【漁業調整課長】
 約17倍ということになると思います。

【斉藤委員】
 これだけ定置網に入って、放流しなくてはならない。本当に矛盾で、昨年度は前年より増えています。
 そこで、若干の漁獲割り当ては増えそうだということになっているけれども、沿岸漁民の割り当てが少ないんです。全国1万以上いる沿岸漁民と20数社しかない巻き網業者の割り当て数量はどうなっていますか。

【漁業調整課長】
 今年度の割り当ては、小型魚が83.7、大型魚が全体で64.7ということになりますので、このうち定置網と漁船漁業ということで振り分けていると。ただ大半が定置網の割り当てになろうかと思います。

【斉藤委員】
 私が言ったのは全国的な割り当ての話です。これは20数社しかない巻き網漁業者の方が何倍も割り当てされるんですよ。そして全国の定置やっているところが少ない。ましてや小型魚の割り当ての方が多いと。資源を守るというのなら小型魚を少なくして大型魚を割り当てるというのは当たり前だと思うけれども、これは国際条約ですから日本の割り当ては増えると思いますけれども、どれだけ増える話になっているか。そして国内の割り当てについてはどういう議論になっているか分かりますか。

【漁業調整課長】
 先ほどの全国的な漁獲の割当てということで、令和5年度が30kg未満の小型魚が4,098トン、令和6年度が30kg未満の小型魚が3,757.1トン。大型魚については、令和5年度が6,845.7トン、令和6年度が7516.1トンとなっています。
 全国的な割り当ての今後の部分として、漁獲割り当ての拡大については、現在、クロマグロの漁獲管理を国際的に行う中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委員会において、令和7年度以降、日本の漁獲枠を小型魚が10%増、大型魚50%増とすることで合意したところであり、11月に開催される国際会議の年次会合で正式決定する見込みです。
 県では国に対し、クロマグロの資源量の増加に合わせ、本県の漁獲可能量を速やかに増加させるよう要望しているところであり、今後も国に対し積極的に働きかけていきます。

【斉藤委員】
 いまの大不漁の中でクロマグロは獲れるわけだから、獲れたものを放流しなくてはならない―このぐらい辛いことは漁民にとってはないんです。9月24日に、水産政策審議会で漁獲枠の配分案が示されているので、そのことを言っているので、国内の割り当てのやり方も沿岸漁民にしっかり重点を置いて割り当てするように、しっかりそのことも働きかけていただきたい。