2024年12月23日 臨時県議会本会議
議案に対する質疑
(大要)


【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。議案第1号、2024年度岩手県一般会計補正予算(第9号)について質問します。
 今回の補正予算(第9号)は、国の経済対策に呼応して、喫緊の物価高騰対策と公共事業費を盛り込んだものであります。物価高騰対策分が55億円、公共事業費等が353億円で、総額408億円となるものであります。いち早く年内に、全国に先駆けて物価高騰対策と公共事業費等の補正予算を提出したことを高く評価するものであります。
 知事に質問します。異常な物価上昇があらゆる分野で継続しています。物価上昇が県民の暮らしと中小企業の経営と地域経済にどういう打撃と影響を与えているか。今回の物価高騰対策をいち早く打ち出した知事の思いと今回の物価高騰対策の特徴について示してください。

【達増知事】
 今回の物価高騰対策への思いと特徴についてですが、食料品や生活必需品等の価格上昇が家計を圧迫し、原材料やエネルギー価格の高騰が人手不足下で苦しむ中小企業の賃上げ余力を削ぐ状況が続いており、需要と供給の両面から地域経済に大きな影響を与えています。そのため県では、県民の暮らしや仕事、学びを守るため、国の国民の安心安全と持続的な成長に向けた総合経済対策と連動しながら、今回早急に物価高騰対策を盛り込んだ補正予算案を編成したところです。
 今回の物価高騰対策は、生活者支援として、県内中小事業の賃上げ支援、LPガス使用者に対する負担軽減、学校給食費の高騰にともなう保護者の負担軽減策、事業者支援として畜産経営体に対する配合飼料等の負担軽減策、運輸・交通事業者への事業継続支援、介護・障害福祉・医療施設の光熱費・食材料費支援、中小企業の特別高圧電力料金等の増加への支援など、緊急的な対応が必要となる予算を計上したものとなっています。
 これらの施策を迅速かつ確実に実施し、県民一人ひとりの暮らし、仕事、学びに寄り添った支援を行ってまいります。

【斉藤議員】
 具体的な内容について質問します。
 第一に、中小企業の賃上げを支援する「物価高騰対策賃上げ支援金」についてお聞きします。
1)全国に先駆けて実施された第1弾の「物価高騰対策賃上げ支援金」(2月5日から11月15日申請分)の実績、成果、課題についてどう評価されているでしょうか。
2)今回、第2弾となる「賃上げ支援金」は、時給60円以上の賃上げに対して従業員1人あたり6万円、最大50人分、300万円を支援するものであります。中小事業の団体、事業者から歓迎する声が寄せられています。今回拡充した理由とその効果をどう見ているでしょうか。
3)今回の申請の想定を3000件、3万人と見込んでいるとのことでありますが、その根拠を示してください。
4)時給60円の賃上げを実施した場合、一人あたり年間約12万円の賃上げとなります。10人従業員の賃上げをした場合は120万円の賃上げとなり、支援金は60万円であります。その際の社会保険料の負担増はどう試算されるでしょうか。
5)今年10月からの最低賃金は、時給59円の引き上げで952円となりました。「令和6年度最低賃金に関する基礎調査」では、最低賃金を下回る県内の労働者数は53159人と推計されています。このうちどれだけの労働者が59円以上の賃上げの対象になるのでしょうか。
6)第2弾の賃上げ支援金の申請期間はどうなるでしょうか。委託先は前回と同じでしょうか。
7)今回の賃上げ支援金の財源はどうなっているでしょうか。申請が事業費を上回る場合は、補正で対応すべきと考えますがいかがでしょうか。

【企画理事兼商工労働観光部長】
 まず、先般実施した物価高騰対策賃上げ支援金の実績、成果、課題、また、今般の実施にあたって拡充した理由等についてでありますが、この支援金を活用した事業者数は2889事業者、対象人員は20313人、申請額は10億1565万円となったところです。エネルギー・原材料価格の高騰などの影響により、多くの中小企業が厳しい経営環境にある中、価格転嫁が十分に進んでいない小規模事業者を中心に、当初の見込みを上回る事業者にこの支援金を活用していただいたところであり、賃上げの促進に効果をあげたと受け止めております。申請した事業者からは、「申請から支給までの時間がかかりすぎる」、また、「1事業者あたり20人とした用件が厳しい」などといった声をいただいたところです。さらに先般、全国的に最低賃金が大幅に引き上げられ、岩手県の最低賃金も59円の増となったことなどを踏まえ、一人当たりの支援額や1事業者あたりの対象人員数の拡充を図ったものであり、この支援金を活用いただくことでさらに多くの方々の賃上げの促進に結びつけていきたいと考えております。
 対象事業者数、人員数についてでありますが、先の事業の実績を踏まえたうえで、今般の事業構築を行ったところであり、前回の申請人員数が約2万人であったことから、今般の対象人員数の拡充等によりこれが1.5倍増の3万人を見込んで積算を行ったものでございます。なお、ご指摘の申請件数を3000事業者と見込んでいることにつきましては、おおむね先の事業と申請事業者数は大きく変わらないのではないかとの推測に基づくものであり、3万人の賃上げに結びつけることを基本に考えているものでございます。
 社会保険料の増加についてでありますが、仮に40歳未満でフルタイムで働く方の時給が、これまでの本県の最低賃金である893円から60円引き上げられた場合で試算すれば、健康保険、厚生年金、雇用保険の事業主負担は一人あたり年間で約31000円の増となり、同じ条件の従業員が10人いれば約31万円の負担増となります。
 59円以上の賃上げが必要となる労働者数についてでありますが、岩手地方最低賃金審議会における令和6年最低賃金に関する基礎調査結果による推計によれば、今般の最低賃金時給59円引き上げ後の952円を下回っている53159人のうち、引き上げ額と同額の59円以上の引き上げが必要となる労働者数は11681人となっております。
 申請期間と委託先についてでありますが、申請受付の開始時期については現時点で具体的な日程をお答えすることが難しいところでありますが、一日も早く事業を開始できるように準備を進めていきたいと考えております。なお、前回の事業については、2月5日に受付を開始して11月15日まで受付を行っていたところであり、この状況をベースに具体化していきたいと考えております。また、委託先については、前回は公募を行ったところであり、今回どのようにして委託先を選定するかといったことについても、今後関係部局等と速やかに相談をしながら決めていくこととしております。
 財源等についてでありますが、今般の補正予算案に計上した19億4000万円のうち、国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を約9億4000万円、一般財源約10億円を財源に充てております。また、申請が事業費を上回った場合の対応については、国の交付金の残額や県の財政運営に与える影響などを多角的に検討したうえで、改めて関係部局と連携して判断することとし、まずは早期に事業開始できるよう準備を進めていきたいと考えております。

【斉藤議員】
 第二に、LPガス価格高騰対策費が6億4600万円計上されています。今回は一般消費者で定額1300円の支援金となっています。昨年度は2000円でしたが、その理由を示してください。また、いつ支給される見通しでしょうか。

【復興防災部長】
 本県のLPガスの小売価格は、比較的価格が安定していた令和2年12月と比較した場合、1世帯の半年間の平均的な使用量では8000円弱上昇しております。都市ガス使用世帯への支援については、経済産業省が激変緩和措置として行いますが、その支援割合は7分の1ほどに低減しているところであり、そのようなことも踏まえたうえで今回のLPガス使用世帯への支援額は1300円としております。具体的な値引きの時期については、現時点で来年の2月検診分を予定しておりますが、前々回=昨年夏の支援は委託事業の入札不調によって値引きの時期でご心配をおかけしましたので、今回はそのようなことのないように万全を期してまいりたいと考えております。

【斉藤議員】
 第三に、バス事業者運行支援緊急対策交付金が1800万円計上されています。1台当たり3.4万円の支援金となっています。昨年度は1億4400万円で1台当たり25.2万円の支援金でした。タクシー事業者運行支援緊急交付金は2400万円で、1台当たり1.2万円の支援金となっています。これも昨年度は1台当たり3.5万円の支援金でした。この理由とバス、タクシー事業者の経営状況が改善されたのかどうかを含めて示してください。

【ふるさと振興部長】
 昨年度の補正予算におけるバス事業者・タクシー事業者に対する運行支援緊急対策交付金では、燃料費高騰分のほか、コロナ禍の影響が残っていることも考慮し、車両維持費相当分の支援も含んでいたところでございますが、今回の補正予算におきましては、国の経済対策と連動し、物価高の影響を受けている交通事業者を支えるため、燃料費高騰分を支援しようとするものでございます。
 バス・タクシー事業者の経営状況の変化についてでございますが、乗り合いバス事業者3者の令和5年度の運賃収入合計は、令和4年度と比較して約4億5500万円・11.3%の増となっているところでございます。また、タクシー事業者の令和5年度の運賃収入合計は、令和4年度と比較して約9億9200万円・14.0%の増となっているところでございます。コロナ禍からの一定の回復が見られる一方、燃料費高騰が続いている状況を勘案し、地域の移動手段を維持確保するための支援として、バス・タクシー事業者に燃料費高騰の影響を緩和するための支援金を交付するための費用について、本補正予算案により措置しようとするものでございます。

【斉藤議員】
 第四に、医療施設等物価高騰対策支援費に3億5200万円計上されています。支援の基準は昨年度と変わっていないと思いますが、昨年度と比べ約5000万円減少している理由は何でしょうか。民間の医療機関・病院も深刻な赤字経営となっています。県内の状況をどう把握しているでしょうか。医療機関・病院等の危機打開についてどういう支援策が必要と考えているか示してください。

【企画理事兼保健福祉部長】
 まず、予算額の減少要因について。前回の食材料費支援金におきましては、本年6月の診療報酬改定までの間の介護報酬との差額分についても支援したところでありましたが、今回は社会福祉施設と同様に食材費の物価上昇率を踏まえた支援額としたことなどによるものとなっております。
 県内医療機関の経営状況については、現時点において決算見込みの公表データはないところでありますが、県医師会や県内医療機関の戸別訪問、病院長などからの聞き取りにより状況把握を行ったところ、「これまでに経験のない厳しい環境下にある」との声が多く、支援についての要望もいただいているところであります。こうした状況に早急に対応するため、光熱費や食材料費の高騰により負担が増加している民間も含めた医療施設等に対する支援を予算案として提出させていただいたところであります。
 また、この他に国における経済対策において、生産性向上、職場環境改善による賃上げ等の支援策が現在検討されているところであり、詳細が示され次第、本県の対応について早急に検討してまいります。

<再質問>

【斉藤議員】
 社会保険料の質問で、これは最低賃金で働いていた場合は一人ひとり31000円ということでありました。最低賃金で働いていた人は、答弁だと11681人ということになると思います。一番最低のランクで、それでも一人ひとり31000円の社会保険料がかかると。ですからもう少し上のレベルになるとまた社会保険料が高くなります。私は5万円の支援のときも、だいたい一月1万円の賃上げでした。これでも年間12万円になります。5人でやると60万円。社会保険料を足すと100万円近い負担になったというのが事業者の実態でありました。ですから全体とすれば、社会保険料の負担増というのはまた大きな負担になるのではないかと。そうした場合に、県の支援というのは全体の負担増から見ると3割程度にとどまるというのが実態ではないかと思います。社会保険料負担も含めてよく見る必要があるのではないかと。
 59円以上の賃上げになるのは11681人と。これは最低賃金ですから基本的には強制賃上げになるんですね。だから、11681人の方々は基本的には今回の賃上げ支援の対象になってくるのではないかと思います。そして最低賃金に近い方々、50円とか40円とか、そういう方々も相当数いるということを考えますと、3万人の想定というのは、私が中小企業団体や商工会、実際に中小企業経営者の話を聞きますと、「上限300万円なら使いたい」と。かなりの声が寄せられました。第一弾よりもかなり利用は広がるのではないかという受け止めをしております。ですから、強制的にほぼ60円上がる方々が11600人いますから、今回の2000件なんかも含めて足しますと3000件を超える可能性もあるのではないか。そういうことで上回った場合に「補正で対応を」と聞きました。企画理事の答弁だと「改めて検討する」ということですから、打ち切りということではなかったので、かなり前向きの答弁だったと思いますけれども、その点でそういう受け止めでよろしいか。

【企画理事兼商工労働観光部長】
 社会保険料の負担についてでございますけれども、賃上げが進む中での社会保険料の負担のあり方につきましては、基本的には現在国の方でも103万円の壁が引き上げられると。そうすると106万円の壁がどうなるのかといった問題もあると思いますが、そこは国の方できちんと議論して、そこのあり方というのは国の方で考えるべきものではないのかというのが我々第一に考えております。
 対象人員数についてでございますが、事業費の積算にあたりましては、前回の申請状況などを踏まえつつ、十分な額を確保していると考えておりますけれども、ご指摘の通り最低賃金の引き上げ額とほぼ同じ額の対象要件となったことで、申請件数が見込みを上回る可能性も否定できないと考えております。このため、答弁の繰り返しになりますが、まずは早期に事業開始できるよう準備を進めつつ、国の交付金の残額や県の財政に与える影響などを多角的に検討したうえで、改めて関係部局と連携して判断させていただきたいと考えております。

【斉藤議員】
 それから、医療施設等の物価高騰対策について、県内の状況を聞きました。例えば、盛岡市立病院の場合、昨年の赤字が8億9000万円、今年の赤字の見込みが11億円ということでした。大変な規模です。100床規模の民間医療機関は、6000〜7000万円の減収だと。いま企画理事の答弁でも「これまでに経験がないような経営状況」だということで、県の場合には水光熱費・食料費の支援ということで、これはこれで積極的なんですけれども、経営の危機に関わるような状態になっているので、その点も含めて国・県・市町村一体となった取り組みが必要なのではないかと思いますので、改めてお聞きをいたします。

【企画理事兼保健福祉部長】
 県の支援でございますけれども、先ほどもご答弁申し上げました通り、食材料費や光熱費に関する補助については今回提案させていただいているところであり、さらなる賃上げ等の支援策、国で検討されておりますので、それに対応した施策について早急に検討していきたいと考えております。
 また、さまざまな全国の医療関係団体から今年度の決算が「大変厳しい状況だ」という声があがってきておりますし、県医師会からもそのようなご要望もいただいております。こちらにつきましては、さまざま全国知事会、地域医療を担う医師の確保をめざす知事の会などでも国に対して対策をするように要望・提言をしているところでございまして、あらゆる団体等とも連携しながら国に対して働きかけをしてまいりたいと考えております。