2025年1月15日 文教委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・岩手県立盛岡地区統合新設校体育館新築工事に係る経過について
【斉藤委員】
10月31日の町長と教育長との面会・協議で、初めて「ゼロベース」と。ゼロベースということは覚書を破棄するという意味ですよ。ここが重大なターニングポイントになったと。そのことについて、町長はどういう説明をしているか。それが今お配りした資料です。
冒頭のところで、「教育長及び町長において確認されたことは、高橋町長から令和6年5月30日付で、盛岡地区新設高等学校における屋内運動場の整備等にかかる覚書、共創プロジェクトで締結された条件と、岩手県教育委員会側から示された当該体育館にかかる矢巾町が利活用を想定していた諸条件と著しく内容が損なわれている状態となったことから、双方が顔を合わせて協議した」と。ここには重大な間違いがあって、実は体育館の整備計画、設計図、これは覚書の前に確定しているんです。それで二度にわたって修正されました。一つは、日照権の関係で3階建てから2階建てになったと。これは建築基準法に関わることでやむを得ないものです。二つ目は、実は詳細設計をしたら約32億円かかることになったと。だいたい予定より10億円ぐらい高かった。ですから、これは圧縮せざるを得なくなったということで、二度にわたって修正をしたと。二度目の修正が県の今日の資料でいくとNo.13です。そしてNo.15のところで、面積を縮減して概算額約23億円という詳細設計になったと。それを踏まえて覚書が5月30日に、資料でいくとNo.18で覚書が締結をされて、負担割合は2:1と決められたと。だから覚書以降に重要な変更があったということではない。そして住民説明会もやられていますから、住民説明会には県も、町も責任ある担当課長クラスが出席をしています。そしてこの間の県教委と町との協議内容については、すべて町長に報告されていると。これも確認されていることです。だから、町長がその経過を知らなかったということではないということも確認をされていることです。
この令和6年10月31日の協議内容のところで、最後に「佐藤教育長及び高橋町長はこの協議の場において、高橋町長から『この事案の対応のために双方の内部職員で、ゼロベースでスタートして折り合える場所、接点を見いだしてやっていきましょう』と発言が記録されており、早急に対応することで同意がされた」と。ここを私は確認したいのです。あちらはゼロベースでの協議に「同意された」と言っているわけです。だから私はそのときの議事録を示してほしいと言いました。教育長はこれについてどういう風に答えたのですか。
【教育長】
委員からお話がございました通り、「ゼロベース」という発言、それから「関係課長で今後の対応を検討する会議を持ちましょう」という提案はありました。私とすれば、ゼロベースということについて同意したということではなくて、これは協議のテーブルにつかなければ物事は進められないので、「関係課長会議はやりましょう」ということで理解をしたと。ですから、その後すみやかに11月15日、まずテーブルに着いて、具体的にゼロベースというのはどういうことかということで、話を聞きましょうということで、関係課長に出てもらったと。結果、やはり「覚書の2:1は崩れている」と。まさにゼロベース=白紙という話が出てまいりましたので、すみやかに文書で「ゼロベースについては同意できない」という文書をその後11月19日に、これは文書で回答する必要があろうということで回答したものであります。
【斉藤委員】
いま当局から出された教育長と矢巾町長との面会の概要、これは概要にもならないんですね。本当に貧弱なメモですよ。町長と教育長の会談というのは、きわめて重要な中身を持つのだから、この協議のときに相手が「ゼロベースで」と、事実上覚書を破棄したいと言ったときに、明確な対応をしないといけないと思うんですよ。この概要だったら明確、毅然に対応したというのが残念ながら見えない。教育長の発言はたった2行です。「10月25日の本会議で議決となり、今後町と相談しながら進めていきたい」と。これは冒頭の発言でしょう。そして「工事業者が決定したことから工事は進めたい」と。相手がもっと重大なことを言っているときに、きちんと教育長が対応したのかと。あまりにも概要にもならないようなメモではないでしょうか。相手は少なくともこのぐらい言い分を書いているわけです。そして最後には「双方早急に対応することで同意された」という相手のペースで言われているわけだから、これは明確に毅然とした対応を示すべきではないかと思いますがいかがですか。
【教育長】
経緯を申し上げますと、10月31日に私が矢巾町を訪問したのは、10月8日の常任委員会で我々の説明がうまくできなかったということで、矢巾町からもお叱りをいただき、10月18日にお詫びに行ってきました。そして「10月24日にしっかり説明いたします」とお話し、10月24日に再度説明の機会を頂戴し、10月25日には議決をいただいたということでの「御礼」の趣旨で10月31日にお邪魔したというのが正確なところです。そこで突然「ゼロベース」という話が出たものですから、担当者と行きましたけれども、担当者もそういう前提できちんと記録をとっていたわけではないということであります。したがって、そういう提案がそこの場で出たものですから、私とすればここの資料にある通り「今後仔細な部分については相談をしながら進めさせていただきたい」というお話をお伝えに行ったところでございますので、その場で課長会議を否定するということもできませんので、私としてはその場で否定するような発言を即座にはできなかったというのが実態であります。
【斉藤委員】
ここがターニングポイントで、私も驚くような町長の対応ですよ。矢巾町の資料と当局が出した資料、日付が少しずれているところがあるけれども、時系列は全体としては間違っていません。令和3年12月13日から協議を始めているわけです。そして覚書が令和6年5月30日ですから、少なくとも2年半協議をして、修正もして、その上で覚書を締結したと。だから経過的には早急にこういう結論を出したというわけではないんですね。そして入札もして工事発注もしてと。県議会は喧々諤々の議論をしました。それでも不十分さはあったと思うので。しかし2回の常任委員会をやった間に、あなた方が例えば2:1の負担割合の中身とかそういう詳細のことも町とやりとりして、少し詳しい資料を10月24日に出したので、ぎりぎり請負契約案件は議決をされたという経過なんですね。
それだけ町とやりとりしていて、最後にこういうことになるというのがあまりにも解せない。工事を発注した後にちゃぶ台返しをしたということがこの間の経過で言えることではないかと。教育長もそういう認識ですか。
【教育長】
私どもといたしまして、いま斉藤委員からお話いただいた状況そのものだという風に受け取っております。
【斉藤委員】
結局、矢巾町議会には正式な説明というのはほとんどないんです。1回口頭で全員協議会で説明したというのはありました。だから議員はまったく分からないんですよ。まともに説明されたのが12月10日で、その概要も少し聞きましたが、「町にも県教委にも問題あるのではないか」という発言や「やはり不来方高校の生徒のことを考えたらぜひ整備してほしい」という意見も出たと聞いております。
しかし矢巾町の対応は、ゼロベースの検討の申し入れ以降、担当者を全部変えたのです。今まで2年半以上担当してやってきた課長クラスが別の課にいってしまった。全然今までの経過を無視した形で対応しているのですね。
そして県の資料でいうと11月1日ですから、ゼロベース申し入れの翌日には「建設予定地には立ち入らないでほしい」と事実上の工事中止を求める通知が出されると。ですから、結局工事中止せざるを得なかった。これでもゼロベースで覚書を破棄して、それで協議が成り立つかというと私は成り立たないと思いますが。そしてゼロベースでというだけではなく、最終的には町は「負担しない」とまで言った。本当にこれは何を考えているのかと。
もう一つ聞きますが、覚書というのは法的根拠があるという回答でした。契約と同じだと。だとすれば、本当に覚書というのは簡単に破棄できるものではないと思うんだけれど、そういう点で、これはすでに工事中止だけでなくて契約解除しましたから、損害が発生をしています。工事を準備した建設業者その他に。これはしっかり損害賠償しなくちゃならない。
その他に、設計業務で1億5000万円かかっているんです。今まで総額でかかった経費はいくらになりますか。
【学校施設課長】
委員からご指摘ございましたが、すでに設計が完了しておりまして、契約金額が9846万6500円かかっております。
工事の契約解除にともないまして、工事の出来高というのがいくらか発生をしておりますが、今のところ工事請負業者の方で精査をしている段階ということで、その工事の出来高分については今こちらで把握していないところでございます。
【斉藤委員】
設計の委託費は9846万円ということですか。詳細設計。いずれにしても、町が「お金は出しません」とここまで言っていますから、再設計しないといけない。また設計から、同じ規模で建たないでしょうから。県教委が単独で整備するということになれば。ここまでこじれると同じ場所に建てられるかということもあります。
そういう意味でいくと、結果的にはゼロベースでやらざるを得ない。このときには、覚書は法的根拠ありますから、かかった経費、損害額を2:1で矢巾町に損害賠償を請求すべきだと思いますけれどもいかがですか。
【学校施設課長】
先ほども申しました通り、すでに設計が完了しておりますので、町と締結しました覚書に基づきまして、町に対しての費用負担を検討してまいりたいと思っております。
【斉藤委員】
今日の説明資料の1ページ目の最後のところに、「既に発生している経費負担や体育館の整備のあり方等について、関係部局等と協議しながら、矢巾町と協議を進めていく」と。これはどういうことなんでしょうか。
【学校施設課長】
これから損害賠償ということが想定されますので、そういったものも含めて議会にかける必要もありますし、予算化する必要もありますので、そういったことで関係部局と協議が必要ということを考えてございます。
また、体育館の整備のあり方については、まだ覚書が締結中ということもありますので、その辺は慎重に検討をしていかなければならないと思っておりますので、あり方等について関係部局等と協議しながら矢巾町と協議を進めていくということにしてございます。
【斉藤委員】
覚書なり契約なり、一方的に相手方から破棄されたということは県教委や県庁においてこういう事例はあったのでしょうか。
【学校施設課長】
今回のようなことを理由に同じような事態になったということは聞いていないところでございます。
【斉藤委員】
改めて町長の言い分に戻りますけれども、町長は覚書の中身がどう変えられたと具体的に主張したのですか。
【学校施設課長】
私が今の職に就いたのは令和4年度でございます。令和4年度から町の課長と一緒にいろんな協議をしながら進めてきました。県が単独で物事を決定したということは一切ございません。その中で、当初の構想、設計に入る前の構想では、学校がハンドボールが盛んですし、町でもハンドボールが盛んですから、ハンドボールコートを正式な2面がとれる体育館があったらいいよねということで、そういう構想で始めました。ただ実際に設計を進めていく中で、先ほどお話もありました通り、日陰の規制の問題とかがあって、どうしても縮小せざるを得ないということで進んできたものでございます。
町長は、当初の構想というのは、経緯で言いますと1〜3番の検討委員会というのを開いて、どういった体育館を整備しようかとか利用時間をどうするかということを協議してきたわけですが、「検討委員会で議論された中身と実際の設計の中身が変わっている」と、ここが町長が言う「当初と変わっている」という主張でございます。
ですから、ハンドボールコート公式サイズ2面、それから当初観客席も設けたいということで進めていたんですが、それが結果的にはハンドボールコート公式サイズが1面になり、観客席がギャラリーに変わったということで、「共創の理念が崩れている」ということが町の主張でございます。
【斉藤委員】
結局は、町長が言っているのは、覚書を交わす前に協議をして修正された中身ですよね。だからまったくちゃぶ台返しですよね。これはお祭りでやるんだったらいいけど、行政の中でこれをやったらとんでもないことですよ。ちょっと時代錯誤があると思うんですね。町長の暴走としか言いようのない異常な事態ではないかと。
最後に聞きたいのは、しかし県教委も詰めが甘いということです。実は10月に請負契約案件が示されたときに、その具体的な根拠、2:1の負担の中身をいろいろ聞きました。そのときにあなた方はどう答えたかというと、「協定書で詰めます」と。だから具体的に2:1の試算も示されました。最終的に議決される前に協定書を結ぶべきなんですよ。総額25億円を超える事業です。動物愛護センターを盛岡市と県でやりますが、基本計画も立てて、そして協定書も結んで、入札はこれからなんですよ。あれは十数億円の事業です。今度の体育館は25億円を超えるような、そして新しい試みの取り組みで、本当に覚書を交わしたら、その具体的な内容について、協議をして合意をしているけれども、それをやはり協定書という形で確認しておくと。「確認します」と議会では答弁しているけれど、結局それには至らなかった。そこにつけ込まれているんですよね。重要事項については何の協定書もないと。
私は、覚書を破棄する理由にはならないけれども、県教委もあれだけ議論したのに詰めが甘い。これだけの大事業をやるのに、きちんと協定書を結んで、運営の仕方も費用負担のあり方も早急に決めるべきだったのではないかと思いますが、教育長いかがですか。
【教育長】
これは、先行していた事例はボールパークです。唯一の先行事例ということで、当初の段階で、どういう手法で整備していくかという検討がなされる中で、唯一のボールパークとの違いは、やはり規模感がまったく違うと。それから今回は、規模的には学校施設の一部の施設ということで、そこは違うだろうということで、業者合意のうえで、契約手法、自治法に基づく連携協定という大きなものではなくて、お互い契約―覚書なり協定というものを結ぶ手法で整備していきましょうということになったということでございます。
担当等にも確認したところ、ボールパークなども建設に入って以降仔細の協定等を結ぶ部分も相当程度あるということで、それに沿っているものかなと思いますが、今般こういった、まさか覚書自体を否定するということを行政同士がそういう自体に陥るというのは、まさに想定しておりません。覚書の範囲内で協定というのは結んでいくという理解でしたので、本来ではたしかに仔細な部分できちんとできあがった上で整備というのが望ましい、委員から言われた通りの部分もあるかもしれませんが、この整備にあたってはそういう選択をしてこなかったというのが実態であります。
【斉藤委員】
本当にこの間の経過から言うと、県教委と矢巾町が共創プロジェクトという新しい取り組みで、普段よりも立派な、エアコンも整備をした体育館がつくられて、高校生も町民も活用できると。これは本当に新しい方向だった。両者にとってWin-Winだったと思うんですね。
しかし結果的には、たしかに予想外の展開で、ちゃぶ台返しになったと。
私は主要な要因は矢巾町にあると思います。しかしもう一方で、そういうちゃぶ台返しを許さないようなきちんとした詰めをやるべきだったと。そのために2回も議会で議論したんですよ。中身も詰めてもらったんですよ。本当なら最終的にあのぐらい議論したら、議決する前にそういう協定書を結んだということであれば、本当に文句のない形になったのではないかということは指摘をしておきたいと思います。