2025年2月28日 文教委員会
教育委員会に対する質疑
(大要)


・教員の長時間労働の問題について

【斉藤委員】
 今の教育と学校の大問題の一つが長時間労働で、その実態と改善の方向について取り上げたいと思います。
 2022年の国の調査なんですけれども、公立小中学校では平日平均11時間半、これは持ち帰り残業を含むものです。休憩はわずか数分。高校でも平日平均10時間36分となっていましたが、このときの県の実態はどうなっていますか。

【教職員課総括課長】
 令和5年度におけます県立学校の教員一人当たりの平均時間外在校等時間は、週休日の部活動従事時間を含むもので28.2時間、週休日の部活動従事時間を除いて20.6時間となっております。
 なお、教員の平日の在校等時間につきましては、本県では集計を行っておりません。

【斉藤委員】
 2022年の国の調査、先ほど紹介したように大変異常な実態なんですよね。この2022年の国の調査に対応する県の実態というのはないのですか。

【教職員課総括課長】
 いま手元に令和5年度の数値しか持ってきてませんでしたので、後ほど。

【斉藤委員】
 国の調査でと通告した話ですから、全国と比較して、いまの令和5年というのはあまりにも乖離がありすぎるんですよ。突然岩手だけが改善されるとは思えないので、国の調査に対応したものはどうだったのかということをぜひ示してください。
 それで、いつも小中学校は全然出ませんが、小中学校の教員の人件費も県はもっているんだから、小中学校の超過勤務の実態を県が把握しないというのはおかしいと思うのですけれども、盛岡について言うと、私は直接盛岡市教委に聞きましたが、ばっちりすぐ出てきますよ。学校ごと含めて超過勤務の実態が。市町村教委が把握していないということはないと思うんです。なぜ小中学校の超過勤務の実態が県として把握されないのか。なにか理由があるんですか。

【教職員課総括課長】
 まず文科省調査の関係ですが、教員の勤務実態調査につきましては文科省が実施しており、都道府県単位の調査結果・回答内容につきましては公表されておりませんので、岩手県の状況について県教委でも把握をしていないというところでございます。
 小中学校ですが、市町村教委で各プランをつくって取り組んでいるところでございます。いずれ時間外在校等時間の公表につきまして、市町村が策定したプランの内容や取り組み状況と合わせて公表を促しているところでございます。市町村教委が公表も含めて事務的に対応しているということで考えているところでございます。

【斉藤委員】
 教員の長時間労働というのは、いま重大な教育問題、社会問題にもなっているんですよ。保護者の方々も心配しているんです。子どもたちも心配している。市町村教委はみんな調べています。当然ですよ。だから県が把握することは難しいことではないんですよ。これだったら岩手県の教員の長時間労働、実態を把握できなかったら改善できないじゃないですか。土台がまず築かれていないと思います。先ほど小西委員が具体的な例を話しましたけれども、大変深刻な実態です。そこの深刻な実態を共通認識にしてどう改善するかと、これでは今日はまったく議論がかみ合わないと思います。
 例えば、先ほど令和5年の県立高校の月一人当たり平均の在校等時間、28.2時間と。これは週休日の部活動を含むということですが、だったら令和4年度、令和3年度はどうだったんですか。

【教職員課総括課長】
 令和4年度、令和3年度の数字でございますが、部活動時間を含んだ集計ということで、令和4年度29.3時間、令和3年度が29.1時間。平日が令和4年度が21.9時間、令和3年度はデータを持ち合わせておりません。

【斉藤委員】
 問題さかのぼりますけれども、文科省が発表している全国調査というのは、県を通じてデータが文科省にいっているのではないですか。

【教職員課総括課長】
 プランの取り組み状況等については、一定の報告はしております。

【斉藤委員】
 県を通じて報告していると。だったら2022年の国の調査に対応する県の実態はすぐ分かるのではないですか。

【教職員課総括課長】
 国の調査は抽出調査ですので、どこの学校に入ったかも含めて一切公表されていないので、直接エントリーしているので分からないというものです。

【斉藤委員】
 抽出調査となると単純ではない気もしますけれども、おそらく岩手県と全国の実態はそんなに乖離はないと思います。
 長時間労働のもとで、精神疾患による病休者は、1990年と比べると7倍に増えているということですが、そして2023年には全国で7000人を超えたと。県の実態と過去5年の推移を示してください。

【教職員課総括課長】
 国のデータが、病休期間を6ヶ月として休職している方の数字だと把握しているので、その数字で申し上げますと、過去5年間の推移で、令和元年度71名、令和2年度58名、令和3年度55名、令和4年度67名、令和5年度83名となっております。

【斉藤委員】
 これは小中高合わせてということですね。こういうデータは出ると、長時間労働だけは小中は把握されないと。そういう意味でも、まったく片手落ちだと思うので、改めて指摘をしておきたいと思います。
 精神疾患による病気休職、令和元年度が多かったようですけれども、それ以降で比べると毎年増加傾向。特に令和5年度は83人ですから、今までもっとも多い数になっているのではないかと思いますが、これはちなみに「病気休職者で療養期間6ヶ月を超える者」です。増加している理由は何でしょうか。

【教職員課総括課長】
 病気休職に至った主な発症理由・要因ということで、人事異動による環境の変化や多忙、同僚などの人間関係など職場環境を理由とするもののほか、児童生徒同士のトラブル、あるいは保護者を含めた対応がうまく処理できなくて精神疾患となったというものが挙げられますが、一つの理由に特定されることなく、これらの複数の要因が重なり合って発症したというものが多いと認識しております。

【斉藤委員】
 分かりやすく言うと、一つは多忙ですよね。教員に余裕がなくなっている。もう一つは、業務が増えているからさまざまな生徒・父母とのトラブルも増えている。この二つは関連するけれども、そこに精神疾患が全国的にも岩手でも増加している理由があるのではないかと思います。
 いま教員の長時間労働というのは、ついに教員不足をもたらしています。先ほど小西さんが取り上げて重複するかもしれませんが、担任がいない実態、教員不足の実態を改めて端的に示してください。

【県立学校人事課長】
 令和7年2月1日時点における欠員状況は、小学校17名、中学校11名、高等学校10名、特別支援学校6名となっております。そのうち、担任である教諭は、小学校13名、中学校6名、高等学校2名、特別支援学校1名となっております。担任教諭の欠員に対しては、他の教員や管理職等が担任業務を担当し、担任が不在となることがないよう各校で対応しているところです。

【斉藤委員】
 いずれにしても、担任もいないという、特に小学校で13名というのは大変深刻です。こういうところにも教員・学校の置かれている深刻な実態があるのではないか。
 そこで、旧特法が閣議決定されて、予算が通れば国会の後半戦はこの法案が提出されるということになると思いますが、この旧特法というのは、現在の4%の調整額を来年度1%、これはほぼ平均3000円増えると言われています。しかし削減される手当があって、この手当分はだいたい1500円と言われていますが、そうすると1500円ぐらいしか増えない、何の足しにもならないというのが旧特法の実態ではないのか。
 教員の長時間労働が放置されている最大の理由は、教員の残業働かせ放題の旧特法の制度にあると思います。これはどのように受け止めていますか。

【教職員課総括課長】
 中央教育審議会の答申におきまして、教員については、自主的で自発的な判断に基づく業務と、管理職の指揮命令に基づく業務、分別が困難だということで、教職調整額を支給する仕組みが現在においても合理性を有しているとしたうえで、その改善が必要だと答申されていると承知しております。
 教員の業務の特殊性をどのように評価するかということになろうかと思いますけれども、いずれ国の動向や協議状況、法案の審議状況についても注視してまいりたいと思っておりますし、いずれにしましても、教員の処遇、定数改善など、勤務環境がきわめて重要であると認識しております。
 国の負担と比べまして地方の負担がきわめて大きいことも踏まえまして、必要な財源を確実に確保するように働きかけていきたいと思っております。

【斉藤委員】
 旧特法のお話をしましたが、これはまったく教員不在というか、財務省と文科省との取引で、財務省に基本的には屈服したという結果ですよね。教員の残業時間を減らす、それは残業手当を出すことなんですよ。残業手当というのは、そういう規制力があるから世界のルールになっている、労働基準法もそうなっているんですよ。ただ教員だけがそれを除外されている。だからいま、働かせ放題で、長時間労働をやっても教育委員会も痛みを感じない。これで残業手当を払ったら、今の段階だって1人十数万円になりますよ。それが先ほど言ったように+1500円ぐらいしか増えないと。これで先生になろうということ自身がよっぽどの人でないとなれない。いま多くの学生から見放されているのは、教員の仕事というのは素晴らしいけれども、あまりにも待遇が悪いと。長時間労働で、残業手当も出なくて、業務が多くて、本当は子どもに寄り添って仕事をしたいがそれもできないと。この現状を打開することが求められているのではないか。
 旧特法の今の改正案というのは、それに逆行する、今の深刻な実態を継続・悪化させることになるのではないか。

【教育長】
 我々としましても、今の教員の取り巻く環境というのはきわめて厳しいということで、これは文科省も働き方改革、体制の整備、処遇改善と三位一体で進めていくということの中の一つの教職調整額が措置されて、今回法案が審議されるということになってございます。
 我々としましても、国にそれら改革できるところはしっかり改革いただきながら、我々として任された働き方改革は地道に進めていくということで、教員のなり手を減らさない。なった以上は生き生きと働いて岩手の子どもたちに貢献していただくということを目指して、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

【斉藤委員】
 この旧特法の改正は私は通してはならないと思います。
 結局このような旧特法の改正では何の解決にもならないもう一つの問題は、業務の削減が全然ないのです。授業の準備ができるコマ数にするためには、小学校で週20コマ、中学校で18コマ、高校で15コマにすべきだと。私たちはそう考えています。それは、授業の準備ができて、そしてその他の活動もできると。
 実は旧特法を制定した1971年当時はまだそうだったんですね。ところが今は業務が増えて、小学校は今6コマになっているんじゃないですか。中学校はどのようになっているんでしょうか。

【小中学校人事課長】
 令和6年度の小学校教諭の週平均授業時数は、岩手県内は約25.5時間となっております。中学校については17.5時間、高等学校においては15.2時間となっております。

【斉藤委員】
 コマ数で言ってください。

【義務教育課長】
 子どもたちが1週間に学習する時間割のコマ数、いわゆる標準授業時数につきましては、本県の実態といたしましては、小学校28時間〜29時間が大方の学校で編成しております。中学校については29時間がほとんどでございます。
【高校教育課長】
 高等学校におきましては、学校によっても週の時間数は違うところがありますが、だいたい30〜35時間程度となっております。

【斉藤委員】
 そうすると先ほどの話とかなりズレていますね。
 週28時間、5日間で割ると約6時間ですよ。いま小学校は1コマ50分ですか、60分ですか。

【義務教育課長】
 小学校は1コマ45分で県内の学校は授業を構成していますが、小学校では、例えば教科担任制が導入されておりまして、担任でない先生が例えば理科を指導するとか、外国語は加配の専科の教員が指導するという形になっている流れがございますので、担任1人の純粋な週平均もっている授業時数ということについては、先ほど小中学校人事課長から答弁があった内容の方が現実的には近い数字ということになります。

【斉藤委員】
 専科教員もまだ一部ですから、全部配置されているわけじゃないので、例えば、28時間からしたら、これは45分で割ったら7コマぐらいになりますよ。これは子どもたちにとっても苦痛。25.5時間だって6コマいきますよね。本当に大変なんですよ。
 当初、4時間/4時間で8時間労働制はセットされたんですよ。授業の準備が4時間、その他の活動が4時間。これで先生の仕事が保たれると。6時間になったら他の仕事ができなくなるんです。そこに今の長時間労働の実態がある。だから先ほど言ったようなせめて20コマに減らすということを改善しなかったら業務改善はできないと。そのためには教員を増やす以外にないと。この教員を増やすということが残念ながら文科省の政策にはなくて、実数でいけば来年度は8000人以上減りますよ。子どもが減る、学校の統合というのが直接的な要因だけれど、実際には8000人以上減らすんですよ。本来なら充実した教育環境を作れるのに、そういう形で先生を増やすことには背を向けるということですから、その点で本当に教員の長時間労働を本当に抜本的に改善するなら、この旧特法を廃止して、残業手当を出させて、そしてその痛みを感じて本当に業務を改善しなくちゃならない。教員の増員ということにしていかないと学校がもたない。

・岩手県立盛岡地区統合新設校体育館新築工事に係る経過について

【斉藤委員】
 今日の経過の流れを見ても、いろんな協議をして昨年5月30日に県教委と矢巾町による覚書を締結したと。ところが、方針転換になったのが10月31日です。工事を発注した直後に、町長と教育長の面会協議で「ゼロベースでの検討を申し入れる」と。ゼロベースということは覚書を破棄するということですよね。
 そして決定的なのは12月17日、このときは「覚書をなくして、町に対して用地の無償貸付についての要請文書を提出すること」「屋内運動場の建築費用について、町は負担しない」と。中身としても、覚書は実行しませんという宣言です。これは行政のあり方からいって、本当に許されるものではないと思うんです。特別の理由があったら別ですよ。特別の事情が矢巾町に発生した場合に、覚書を見直すなり、なくすなりということはあるかもしれない。ところが2年かけて協議をして、覚書を締結して、工事を発注した途端に「ゼロベース」だと。覚書をなくすと。
 残念ながらこういう経過が矢巾町の議会、町民に全然知らされていません。今でも議会はよく分からないと。うちの議員を通じて聞いている範囲では、覚書をしっかり守ってやるべきだという声も少なくなくあると。犠牲者は子どもたちだと。せっかく新しい統合校で、生徒数も増えるのに、受け入れる矢巾町がこんなことでいいのかというまともな声も議会の中に一定程度あることは聞いています。
 だから、教育長が、県教委が覚書を守るというのであれば、もう少し実務的な協議を詰める必要があるのではないかと。私たちは議会のあり方としても、議会のルートでも真剣に議論してもらわなければ、矢巾町に重大な汚点を残しますよ。いろいろギクシャクはあったけれども、覚書を守るということで、そういう改善の方向が示されるならベストなわけですから、もう少し詰めた、立ち入った、矢巾町の方針転換の事情もよく聞いてやる必要があるのではないかと。

【教育長】
 我々としましても、令和3年12月から本当に回数を重ねながら、お互いに良いものとつくりましょうとやってきたものが、こういう形となったことについて本当に関係者の皆様にも申し訳ないという気持ちでおりますし、何よりも子どもたちの教育に支障となることは絶対に避けなければならないということで、まさに凌ぐための策を講じながら、本当にこれをどうするのかということを真剣に議論し、検討してきております。
 そういった中で、一定の整理はしなきゃならないんじゃないかという思いはあります。その上で、知事も記者会見等でお話しておりますが、いろいろ新しいことを始めるというときに、時間をかけながら何とか最後成就するというケースもあるというお話もしていただいたということもあり、そういう方策はないのかということも思ってはいるのでございますが、やはり金銭的に迷惑をかけていると、損害が発生してきているということもあるので、それはそれで整理はしなければならないのではないかという思いもあり、本日委員の先生方からのお話もいただきましたので、本当に打開策がないのかということも探りながら検討を進めていきたいと思っております。