2025年3月6日 予算特別委員会
高田一郎県議の総括質疑
(大要)


1、介護保険制度について

【高田委員】
 日本共産党の高田一郎でございます。
 高齢者の暮らしを支える訪問介護事業について質問いたします。
 訪問介護事業所の倒産と廃業が増加し、県内でも空白地域が広がっています。厳しい経営実態を県はどのように把握されているでしょうか。

【企画理事兼保健福祉部長】
 令和7年1月現在、本県ではすべての市町村に訪問介護事業所が開設されており、1事業所のみが7町村、2事業所のみが3町となっております。
 また、訪問介護事業所の休廃止の状況につきましては、令和6年7月から令和7年1月末現在の10ヶ月間で8事業所が新規開設された一方で12事業所が休廃止しており、そのうち3事業所が経営難を、6事業所が人材不足を理由としております。県土が広く、山間部が多い本県では、訪問にかかる移動の時間や経費の負担が大きい中で、令和6年度の介護報酬のマイナス改定や物価高騰の影響も重なり、訪問介護事業所を取り巻く環境はさらに厳しくなっているものと認識しております。
 県と関係団体との意見交換におきましても、人材不足や経営状況の厳しさから、利用者の希望に十分に応えられない状況が懸念されるとうかがっており、訪問介護事業所への支援は重要な課題の一つであると考えております。

【高田委員】
 今年度マイナス改定になりましたけれども、訪問介護事業の役割について県はどのように把握されているでしょうか。
 また、市段階でも効率の悪い中山間地域には事業所が少なく、社会福祉協議会や非営利法人が担っています。一関市の社会福祉協議会では、この間3年連続の赤字となって、昨年は単年度で1億円の赤字となりました。「生活援助が増加しており、赤字でも休止はできない」「介護職は3割が高齢者で支えている」ということで、集約も考えていると、これが一関社協の実態であります。鳥取県では、報酬単価が低い生活援助が多い地域に対して、市町村と共同で支援をしています。事業継続困難な事業者への特別な財政支援が必要かと思いますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 高齢化の進展により介護サービス需要が増加し、高齢者単独世帯や認知症高齢者の増加も見込まれる中、訪問介護事業については、高齢者の在宅生活を支えるサービスとして今後さらに重要性が高まるものと認識しております。
 こうした中で行われた令和6年度の介護報酬改定では、改定率が全体で1.59%のプラス改定とされましたが、訪問介護の基本報酬はマイナス改定とされました。
 県ではこれまで、介護ロボット・ICT等の導入支援や、介護職員等処遇改善加算の取得に向けた個別支援など、事業所の働きやすい職場環境づくりや処遇改善に向けた取り組みへの支援を強化してきたところであり、これらの取り組みに加え、新たに訪問介護事業所等における人材確保体制の構築や経営改善にかかる取り組みに対する支援について、令和7年度当初予算案に盛り込んだところです。
 介護報酬は国において定めているものであり、国の責任において本県のような広大な面積を有する地域等の実態も踏まえた報酬や加算の設定を行うなど、適切な措置を講じる必要があります。そのため、全国知事会として訪問介護等における基本報酬の引き下げ等の影響を適切に検証し、必要に応じて介護報酬の臨時改定等の措置を講じるよう国に要望してきたところであり、引き続きさまざまな機会をとらえて働きかけてまいります。

【高田委員】
 報酬改定は必要だけれども、なかなか単独での支援は難しいという答弁だったと思います。
 岩手県のヘルパー協会の実態調査では、新規サービスの利用を制限せざるを得ないが78%になっております。そして、介護職員の精神的・身体的負担があるというのは92%の事業所がこう答えています。このままでは、介護崩壊になりかねない危機的な状況だと思います。ぜひ独自の支援を検討していただきたいと、これは強く要望しておきたいと思います。
 次に、特養ホームの施設整備についてうかがいます。いま待機者は750人(2024年4月1日現在)となっていますが、第9期介護保険事業計画の施設整備計画では494床にとどまっています。全然足りない状況であります。待機者解消に対する県の方針を示してください。

【企画理事兼保健福祉部長】
 早期に入所が必要な方は減少傾向にありますが、依然として待機者がおられる状況から、県としては引き続き市町村が計画に基づいて行う施設整備に対する補助を行うとともに、総合的に介護人材確保対策を進めることにより、待機者解消に向けて必要な介護サービス基盤の整備を支援しているところであります。
 第9期の県介護保険事業支援計画では、特別養護老人ホームの開設が494床予定されているほか、認知症高齢者グループホームも81床の開設が予定されており、こうした整備も入所待機者の解消に資するものと考えております。

【高田委員】
 介護基盤整備に対して支援はするということなんですけれども、医療保険では待機はありませんよね基本的に。なぜ介護サービスには待機があるのですか。

【企画理事兼保健福祉部長】
 介護入所サービスにつきましては、市町村が介護保険料とサービス料などを見込みながら、人口動態も踏まえまして計画的に整備を進めているところでございます。したがいまして、この計画的な整備の中で拡充が図られておりますが、公的な部分で計画的な整備がなされているという背景もあって待機者が生じているというところでございますが、待機者解消に向けましては県としても市町村に対しさまざまな支援を行っていきたいと考えております。

【高田委員】
 待機者が生じているのは、人材の確保が難しいということと、同時に、社会福祉法人の経営が厳しい状況になっていると。なかなか投資をして建設ができないということが背景にあります。ですから、県が主導して県有地を提供するなど思い切った対応をしなければ解消にならないと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

【企画理事兼保健福祉部長】
 人材確保は大きな課題でありまして、県はこれまで人材確保に向けまして、処遇改善に取り組む介護施設等に対する補助や物価高騰対策支援金の支給などによりまして、数次にわたり支援を行ってきたところでございます。
 また、介護施設整備につきましては、先ほどもご答弁申し上げましたが、定員29人以下の地域密着型特別養護老人ホーム等の整備に対する補助につきましては、国が示した基準単価の上限額を採用しており、定員30人以上の特別養護老人ホームにつきましては、これまで全国平均を上回る単価により補助を行っているところでございます。
 委員からご提案のございました介護施設開設のための県有地の提供につきましては、施設整備が市町村の介護事業計画をもとに進められていることや、限られた場所に対する支援となるため、公平性の観点などから慎重な検討が必要なものと考えております。
 県としては、現在申請を受け付けております物価高騰対策支援金などの国の経済対策に対応した支援や施設整備への補助及び介護人材確保対策を総合的に実施することにより、引き続き介護施設の運営を支援してまいります。

【高田委員】
 介護保険料をまじめに払っても必要なサービスが受けられない、入所できないというのは介護保険制度の矛盾だと思います。
 厚労省は介護保険制度の次期改定の議論を先月から始めました。これを見ると、要介護1・2に対して保険を外し、利用料2倍、ケアプランの有料化などどんどん負担を求めようとしています。そういった高齢者に対する新たな負担を求めるのではなくて、やはり国庫負担を拡充していく、臨時の報酬改定を行うことを国に強く求めていくことがきわめて重要だと思いますけれども、知事いかがでしょうか。

【達増知事】
 県民が介護に不安を持たず安心して老後を送るためには、介護保険制度の円滑かつ安定的な運営と適切なサービスの供給を図ることが重要であり、制度運営の根幹である介護報酬は、地域の実情を踏まえ国の責任において設定されるものと考えております。
 県では、これまでも令和6年度介護報酬改定の影響を調査のうえ、安定的なサービス提供が図られる適切な水準の介護報酬を設定すること。少なくとも全産業平均の賃金水準に達するまで介護職員のさらなる処遇改善を継続的に行うこと。処遇改善の継続にあたっては、利用者の負担増や地方負担が伴わない適切な財政措置を講じること等について、国に要望しているところであります。
 また、全国知事会として、物価高騰を踏まえた特定の効果や訪問介護等における基本報酬の引き下げ等の影響を適切に検証し、必要に応じて介護報酬の臨時改定等の措置を講じるよう要望しており、引き続きさまざまな機会をとらえて国に働きかけてまいります。

【高田委員】
 知事会あげてしっかり取り組んでいただきたいと思います。

2、障がい者の就労支援事業について

【高田委員】
 次に障がい者の就労支援策につて質問します。
 就労支援事業所では成果主義の報酬改定となり、また、最低賃金への対応、物価高騰などで厳しい経営が続いている状況であります。この点について県はどのように把握されているでしょうか。

【企画理事兼保健福祉部長】
 令和6年4月の障害福祉サービス報酬改定では、全体として約1.5%の増額改定となり、職員の処遇改善等の充実が図られた一方、サービスの質の確保向上を図る観点から、就労継続支援事業については、経営実態を踏まえた評価項目を導入するなどの報酬改定に見直されたところであります。そのため、生産活動収支等が一定水準の以下の事業所においては、報酬改定により経営に影響が及んでいる状況にあるものと承知しており、県が毎年開催している障害福祉サービス事業者団体との意見交換におきましても、事業所から、「人材確保、物価高騰への対応もあり、自助努力のみでは経営に苦労している」との意見が寄せられたところであります。
 県としましては、現在申請を受け付けている物価高騰対策支援金や、今後交付を予定しております障害福祉人材確保職場環境改善等事業補助金の着実な実施に努めるとともに、障害福祉サービスの安定的な供給・提供が図られるよう、適切な報酬設定について政府予算要望等で継続して国に働きかけてまいります。

【高田委員】
 つまり成果主義というのが導入されたのです。就労継続支援A型では、事業収入で賃金が払えない場合は、報酬が大幅に引き下げられました。
 B型に移行した県南のある就労支援事業所では、月額10万円から3万円となって、しかも社会保険から国保に移行したということで、大変生活が厳しくなったという声がたくさん寄せられています。
 県内でも廃止する事業所が出ていますけれども、このA型事業所への経営支援など県の支援策を示してください。

【企画理事兼保健福祉部長】
 障がい者に対しまして、福祉的支援のもと最低賃金以上の給料を支払って収入の機会を提供する就労継続支援A型事業は、令和6年報酬改定におきまして、生産活動収支等に応じてマイナス評価が導入されるなど報酬の算定方法が見直され、委員ご指摘のように報酬が減額となる事業所が生じているものと認識しております。
 この見直しの背景には、「生産活動収入によらず、障害福祉サービス報酬に依存した事業所の経営改善を促す」との国の考えがあるところでありますが、経営努力しながらも物価や人件費の高騰も相まって経営環境の厳しさが増しているA型事業所があるものと承知をしております。
 県内におきましては、直近1年間で3箇所のA型事業所が事業廃止しており、解雇された利用者はそれぞれ一般事業所に就労したり、近隣の就労継続支援事業所に移籍などを行っております。
 県としましては、A型事業所の経営状況や国の施策動向を注視しつつ、官公需のほかA型事業所の受注機会の拡大に努めるとともに、安定的な事業運営が図られるよう適切な報酬改定等について国に働きかけてまいります。

【高田委員】
 就労支援B型でも、平均工賃が月15000円未満は基本報酬がカットされるなど、ここでも成果主義が経営を圧迫しています。厚労省の調査でも43%の事業所が赤字と報道されています。事業所の人員配置を県としても支援し、工賃引き上げる具体的な支援を行うべきだと思いますがいかがでしょうか。

【企画理事兼保健福祉部長】
 福祉的支援のもと、障がい者に対し、労働関係法令の適用のない就労機会を提供する就労継続支援B型事業は、今般の報酬改定におきまして、平均工賃月額が一定水準以下の事業所において基本報酬が引き下げられるなどの見直しがなされたところであり、事業所によっては報酬が減額となる状況も生じているものと認識をしております。
 県が今年度県内のB型事業所に対して行った工賃引き上げにかかる現状と課題に関するアンケート調査の結果によりますと、希望する支援策として、民間企業や行政機関等からの発注促進、工賃引き上げの好事例の紹介、経営ノウハウの導入、技術指導といった意見が多く寄せられたところです。このため県では、引き続き就労継続支援事業所の受注拡大のほか、商品等の高付加価値化、企業経営手法の導入支援などをテーマとする工賃引き上げ支援セミナーの開催に取り組んでおります。また、新たに一般企業や農林水産事業者等との一層の連携を図りながら、障がい者自ら社会経済活動の担い手として活躍することを通じ、工賃の向上を支援する障がい者共生地域活性化支援事業費を令和7年度当初予算案に盛り込んだところであります。

【高田委員】
 体調に波のある精神障がい者や障がいの重い人などを支援する大変重要な事業所だと思います。私はこういったところに成果主義というのはなじまないと思いますし、現場の声であります。事業所に対する支援をさらに強化していただきたいと思います。
 次に、障がい者の就労生活支援センターについてうかがいます。就労への準備支援とか職場定着支援、生活設計への助言など大変大きな役割を果たしております。しかし県内には、これが設置されていない地域もあります。県内すべての地域に設置するような取り組みを行うべきでありますが、いかがでしょうか。

【企画理事兼保健福祉部長】
 就業及びそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障がい者に対しまして、身近な地域において一体的な相談支援を行います障がい者就業支援センターは、障がい者の一般事業所等への就労にあたりまして中核的な機能を果たすものと考えております。
 県では、障がい者就労に関わる法人に業務委託し、9つの障がい保健福祉圏域すべてにおいてセンターを設置してきたところでありますが、令和5年度末、両磐圏域におきまして業務委託していた法人が事業撤退したことから、令和6年度はセンター未設置の状態が続いてきたところでございます。県では、岩手労働局や一関市、平泉町とともに、地域の関係団体等と調整を重ね、令和7年4月のセンター再設置の見通しが立ったことから、令和7年度当初予算案に両磐圏域を含む9箇所のセンター設置に要する経費を計上したところでございます。
 今後も引き続きすべての障がい保健福祉圏域において障がい者就業生活支援センターを中核に、地域の関係機関との連携のもと、一般就労を目指す障がい者の就職及び職場定着を支援してまいります。

3、防災対策、避難所の環境改善について

【高田委員】
 次に、防災対策、避難所の環境改善について質問します。
 避難所の運営指針が昨年12月に改定され、県も避難所の環境改善に取り組む方針が示されました。避難所・避難生活学会では、@様式トイレA温かい食事Bベッドを48時間以内に提供する「TKB48」を提唱しています。私は大事な提言だと思いますけれども、県もこれを目指すべきだと思いますがいかがでしょうか。

【八重樫副知事】
 避難生活による二次的な健康被害が生じないよう、トイレ、キッチン、ベッド、風呂の確保は重要であると認識しております。
 県としても、県内6箇所の広域防災拠点に簡易トイレや携帯トイレ、段ボールベッドなどを備蓄し、災害発生時に速やかに提供できる体制を整えております。また、県から新地方創生交付金の活用を促した結果、多くの市町村において快適なトイレやパーティション、簡易ベッドなど避難所の環境改善に必要な資機材の備蓄が検討されているところです。
 温かい食事の提供については、地元の綾里飲食業組合との連携などの方策について、市町村やNPO、有識者等を含む県の検討会の場で議論を進めていたところであり、大船渡市内の避難所において飲食業組合による温かい汁物の提供が行われたと承知しています。
 県の市町村避難所運営マニュアル作成モデルについては、いわゆるスフィア基準をより実用的な内容に落とし込んだものにしたいと考えておりますので、検討会での議論を踏まえたうえで、今年の夏頃までを目途に改定を行い、避難所における良好な生活環境の確保を進めてまいります。

【高田委員】
 私も先日、大船渡の林野火災における避難所を訪問して、被災者の皆さんと懇談をしてきました。
 越喜来小学校は、コミュニティを本当に大事にして、集落ごとに避難し、被災者の皆さんから要求を把握し、本当に民主的な避難所運営をしているところがありました。東日本大震災津波の教訓が本当に生かされていると感じたところです。しかし中には、避難から5日目になっても冷たい食事となっておりました。雑魚寝や夜は車中泊、ペットの関係もありましたけれども、こういう避難所もありました。県は避難所の課題も把握されていると思いますけれども、こうした状況を改善する必要があると思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

【八重樫副知事】
 本日の6時の時点で、市内12箇所の避難所に計1200人以上の方々が避難されており、ボランティアを含む関係者の尽力によって避難所の生活環境の確保に向けた活動が行われています。
 温かい食事については、避難所開設の早い段階から岩手県飲食業生活衛生同業組合による温かい汁物の提供などが行われており、風呂については、近隣の入浴施設への送迎バスが運行されています。
 段ボールベッドやパーティションテントについても、県が先月26日に即日送付した分を含め、すでに必要な数が現地に届いており、避難所での設置が進んでいることを確認しています。
 また、大船渡市では、車中泊の避難者を把握するため市への連絡を呼びかけていますが、車中泊を続けることは健康面の懸念もあるため、空きのある避難所に入っていただくなど今後の対応を確認してまいります。

【高田委員】
 温かい食事については、私も2日に行ったときに、全国からいろんな支援があって、温かい食事が提供されていました。しかし毎日がそういう状況になっていないので、これは改善していく必要があると感じております。
 どこの避難所に行っても共通した要望は、自宅がどうなっているのかという不安ですね。「何の情報もなく、いろんな情報が、バラバラの情報がたくさん避難所に寄せられる」「不安で不安で夜も眠れない」という声がどこの避難所に行っても寄せられました。火災の鎮火に全力を挙げる必要がありますけれども、被災者への情報提供のあり方も工夫して、被災者の皆さんに寄り添って、情報提供のあり方について対応していく必要があると強く感じてきているところです。この点についてどのような状況になっているでしょうか。

【八重樫副知事】
 東日本大震災津波の際に、情報の出し方のルールが定まっていなかったことを教訓とし、人的被害、住家被害、ライフライン等については、県では定時に被害状況を公表することとしており、今回の山林火災でも原則として1日2回の定時に報道機関に提供しているほか、いわて防災情報ポータルでも公表しています。
 一方、今回の山林火災は未だ鎮圧に至っておらず、消失建物の棟数については、大船渡市が昨日78棟と公表しましたが、避難している住民の皆さんが不安に感じることもあると思われます。県では、今週に入り県職員の市への応援派遣を強化したところであり、被害状況の把握と公表を適切に行うことができるよう支援してまいります。また、各報道機関が開設している特設サイトの動画情報や、自衛隊が撮影した空撮映像を避難所でも視聴できるよう調整しており、被災者の不安が払拭されるよう取り組んでまいります。

【高田委員】
 情報提供は本当に大事なことだと思いますので、ぜひしっかり取り組んでいただきたいと思います。
 今回の火災で多くの住宅が焼失しました。東日本大震災で被災し住宅を再建した被災者が今度は山林火災で被害に遭うという二重の被害に遭っているとの話も聞きました。また、漁業者も東日本大震災で被災し今回も大きな影響を受けたと。本当に大変な状況が続いております。私は、これまでの支援の延長線上ではなかなか生活も生業も再建できないのではないかと、現地に行って強く感じております。
 昨日知事は、「被災者に寄り添って、従来にない支援に取り組みたい」と。そして補正予算の提案も言及しております。ぜひ一日も早く実態を把握して、必要な支援につなげて、復興に取り組んでいただきたいと思います。
 いま国は、避難所となる学校の体育館へのエアコン設置を今後10年間で設置率95%を目標に掲げた新たな交付金を創設しました。計画的な整備をすべきですが、全国の状況、岩手の設置状況はどうなっているでしょうか。

【教育長】
 令和6年度文部科学省調査によれば、体育館内にあるミーティングルームやトレーニング室等に設置されているケースも含め、全国の小中学校・高等学校及び特別支援学校における体育館へのエアコン設置率は18.3%となっております。
 また、同調査による本県の設置率は1.4%となっております。
 体育館へのエアコン設置にあたっては、空調の効率を上げるため、床・壁・窓・屋根等の断熱改修や使用電力の増加に伴う受変電設備改修等が必要となりますので、財源の確保が課題となります。
 県立学校の体育館へのエアコン設置につきましては、教育委員会所管施設全体の整備計画の中で優先度を考えながら検討してまいりたいと考えております。
 市町村立学校につきましては、先頃文部科学省から令和6年度補正予算において、避難所となる公立小中学校等の体育館等への空調設備の整備を加速するために必要な経費を措置しており、積極的にその活用を検討するよう通知がありましたので、各市町村に対して周知を図ったところであります。

【高田委員】
 計画的な取り組みをしてほしいと申し上げましたので、ぜひ計画的な、10年間で達成できるような計画をつくっていただきたいと思います。
 近年「避難行動要配慮者」の犠牲者が多く、避難が困難な高齢者等への支援が必要となっています。要配慮者の個別支援計画の本県の策定状況はどうなっているでしょうか。

【八重樫副知事】
 令和6年4月1日現在、避難行動要支援者名簿に登録された全員分の個別避難計画を作成しているのは4市町、一部を作成しているのは28市町村となっており、全県の避難行動要支援者名簿登録者75817人のうち、作成済は19269人・25.4%となっており、全国平均17.5%を上回っているところです。
 作成が進んでいる市町村の取り組みとしては、民生委員や行政区長が名簿と計画を一括して作成した事例や、市町村社会福祉協議会に計画作成を委託した事例など、日頃から地域の見守り役である方や団体の協力を得て作成を進めている事例があります。また、一部の地域では、自主防災組織が主体となって計画を作成した事例もあるところです。
 県としては、研修会等の場を通じて、このような好事例を作成が低調な市町村とも共有するなど、市町村が作成を支援してきたところであります。

【高田委員】
 全県で25%というのは決して高くない数字だと思います。
 市町村でも取り組みに相当な格差があります。計画作成への人的・財政的な支援が必要ではないかと思いますし、同時に、避難訓練を継続的・実践的に行う中で作成につなげることがポイントではないかと思いますけれども、県の対応方針についてうかがいます。

【八重樫副知事】
 市町村の計画作成の課題として、津波災害発生時における避難支援や医療的ケア児等専門的な支援を要するケースの作成が困難であることが挙げられています。
 津波浸水想定区域における避難行動要支援者の計画作成支援として、今年度沿岸市町村や専門家等の意見交換を通じて、津波に特化した個別避難計画の参考様式を作成しており、来年度はこれを実証するため、市町村による計画作成や避難訓練のモデル事例作成等を行う方向としております。また、医療的ケア児や難病患者等支援が困難な方々の計画作成支援として、県が専門家の助言を得ながら、岩手医大等支援団体の協力のもと、避難訓練等の実施によるモデル事例作成を行い、支援団体から市町村へ作成を働きかける仕組みの構築も検討していく方向です。
 令和7年度当初予算案においては、このような課題に特化した取り組みのための予算を計上しており、市町村との好事例の共有や保健師・ケアマネージャー等専門職に対する計画参加を働きかけつつ、全県で計画作成が進むよう取り組んでまいります。