2025年3月7日 予算特別委員会
警察本部に対する質疑
(大要)


・上司のパワハラ暴行による自死事件について

【斉藤委員】
 大船渡の山林火災については、大変なご奮闘をされていることに心から敬意を表します。
 そこで厳しい質問に入りますが、若い警察官の自死問題で、昨年12月に求償権を行使するということで、この理由、対応についてお聞きしました。重要な答弁がありましたので、改めてその答弁を引用しますと、「求償権の行使の可否に関する具体的な検討を行いました。検討の過程におきましては、元上司には、自身の指導が行き過ぎた指導であるという自覚があったこと。故意による暴行や長時間にわたる叱責を複数回行っていたこと。そして部下の心身の健康に注意すべき義務があったにもかかわらず、その注意義務を怠ったという重大な過失が認められたところであります」と。求償権を行使するということは本当に異例なことですよ。その重大性について私は聞いたんですけれども、その理由はこのような答弁でした。
 そこで立ち入ってその中身についてお聞きしたい。「故意による暴行や長時間にわたる叱責を複数回行っていた」と、その具体的な中身を示していただきたい。

【参事官兼首席監察官】
 この事案の調査は、職員の自死という非常に重大な事案であるとの認識のもと、発生した警察署の内部調査ではなく、ハラスメントを調査を独立して行う警察本部の警務課と、非違事案調査を行う警察本部の監察課職員が、発生所属の影響を受けることなく行っており、行為者である上司をはじめ交番署長や同僚など関係した職員からも広く聴取したほか、亡くなった職員の状況についても、ご遺族のご協力を得て確認しているところであります。
 この調査によりまして、平成30年の5月頃から同年12月頃までの間において、「パトカーの運転指導をするにあたり、当該職員の頭部を右平手で1回叩いた」こと。またこの日とは別な日に、「指示に従わなかったことに対し、パトカーを運転中の当該職員と同乗中のもう1名の職員の頭部を右平手でそれぞれ1回ずつ叩いた」ことが明らかになりました。この暴行につきましては、傷害を及ぼすものに至るものではなかったことから、これらを暴行事実で平成31年3月に、盛岡地方検察庁に書類送致しておりますし、「複数回にわたり立たせたままの長時間の叱責や不適切な言動があった」ことが明らかになり、これらの動向と行き過ぎた指導についてパワーハラスメント行為として認定されたところでございます。

【斉藤委員】
 暴行の実態は詳しく今示されました。運転中に殴るということは本当に危険な、異常なものです。もう一つは「不適切な言動」の中身がないんですよ。いまパワハラというのは、暴行以上に本人を追い詰めるんです。ですから「不適切な言動」はどういうものだったか。5月〜12月は8ヶ月間ありますから、どういう言動だったんですか。

【参事官兼首席監察官】
 具体文言につきましては、過去に報道されていると承知しておりますけれども、この議場の場でお話するのは相応しいものではないことから、具体の文言は差し控えさせていただきますが、人格を否定するなどと認定された、指導の範囲を超えた行き過ぎた言動があったものであります。

【斉藤委員】
 この議会の場では語れないような人格を否定する言動があったということですね。特に不適切な言動、人格を否定する言動というのは、本当に若い人たちを追い詰めるんですよ。私は一般質問でも紹介しましたが、不来方高校でのバレー部員の自死事件は、執拗な人格を否定する叱責でした。それが本人を追い詰めて自死に至ったと。これは調査では、詳しくどういう言動がどういう時期に、どのように、どんどん強まっていくんですね。だから自死の一因だったという判定をした。あなた方も、パワハラが「自死の一因」だと判定したにもかかわらず、処分にあたらない「本部長注意」にしたと。私はここに異常さを感じて繰り返し取り上げているのであります。
 先ほどの答弁に戻りますけれども、「部下の心身の健康に留意すべき義務があったにもかかわらず、その注意義務を怠った」と。これは具体的にどういうことですか。

【参事官兼首席監察官】
 部下の心身の健康に注意すべき義務と重大な過失につきましては、調査の結果、それから専門家の知見としての弁護士相談をもとに検討した結果、元上司や亡くなった職員を含め、部下・職員を管理監督する立場にあって、当然ながら部下・職員の心身の健康に注意すべき義務を負っていたにも関わらず、その注意義務を怠ったと。この点につきまして「重大な過失が認められる」と判断したものでございます。

【斉藤委員】
 具体的には、労災が申請をされて認定された。その理由は、「公務による精神障害の発生」、そしてその精神障害が「自死と相当な因果関係がある」と認定されたんですね。このことですね、注意義務を怠ったというのは。

【参事官兼首席監察官】
 調査の結果、パワーハラスメントとされた行為につきましては、警察官として法令の規定に則り、適正に職務を遂行させるうえで必要な指導を行うに際して発生したものであり、いわゆる「いじめ」や「嫌がらせ目的」ではなく、またそうした行為も常時行われていたものではなかったこと。行為職員の暴行の程度は傷害に及ぶものではなかったことが把握されたところでございます。また、個人のプライバシーに関わるため、詳細にわたる答弁は差し控えさせていただきますが、当該職員の健康状態等についても、ご遺族からの確認を含め踏み込んだ調査を行っているほか、調査の過程においては、当該職員に表見的な自死言動は認められず、精神疾患の発症やその兆候の把握にも至らなかったところであります。
 こうした結果から、自死の唯一の原因を特定するには至らなかったものでありますが、「パワーハラスメントが職員の自死の一因となったことは否定できない」とされたところでありまして、そういう意味において因果関係については認識しているものであります。

【斉藤委員】
 ちょっとずれた答弁でありました。本部長の答弁は、「部下の心身の健康に注意すべき義務があったにもかかわらず、その注意義務を怠った」と。こういう重大な過失なんですよ。健康の問題なんです。だから労災認定で「公務によって精神障害が発生した」と。あなた方は最初の調査で、パワハラはやっているけれども、精神障害の発生のことは調査の中では明らかにできなかったんですか。

【参事官兼首席監察官】
 調査にあたりましては、詳細にわたる内容については、プライバシーに関わることから具体の答弁は差し控えさせていただきますが、亡くなった職員につきましては、ご遺族からの確認も含め健康状態にも踏み込んだ調査を行うなど、関係する職員、ご遺族からの聞き取りにつきましては、正誤の判断を含め何度も繰り返し行っていたものでございます。その結果、精神疾患の発症の把握には至らなかったというところであります。

【斉藤委員】
 パワハラによって精神疾患を発症したというのが労災の認定であります。しかし、そういうところまで調査がいかなかったと。きわめて不十分だったと思いますよ。「パワハラが自死の一因」と因果関係まで認めていて、懲戒処分にもならないということ自身が、本当に軽い処分に済ませたと思います。だから遺族から労災の申請が行われて、損害賠償請求が行われたと。あなた方は事態の重大性に鑑みて、本部長の答弁にあるように、「重大な過失が認められた」と。そのことで求償権を行使して、1662万1240円を辞めた元上司に支払わせたわけです。こんなのは本当に異例ですよ。
 公安委員長はこう言いました。「社会通念上、許される範囲」だと。私は社会通念上許されない範囲だと思います。パワハラで死んでいる。そのパワハラによって精神疾患が発症して、それが自死の原因だったと。あなた方はこの重大性を認識して求償権まで行使した。重大な過失があったと。ここまであなた方が事態の重大性認めているのに、2ヶ月後に「本部長注意」という処分にもならない対応をしたということに問題がなかったのか。
 今でも「重大な過失があった」と本会議の答弁で認めました。それでもわずか2ヶ月間の調査で「パワハラが自死の一因」と認めながら「本部長注意」で済ませたと。問題ないと今でも思っていますか。

【警察本部長】
 当時の処分についてでございますけれども、繰り返しになるかもしれませんが、まずこの事案の調査につきましては、発生した警察署の内部調査ではなく、しっかり独立した警務課と監察が所属の影響を受けることなくやっておりまして、聴取の関係もですね、交番署長や同僚、関係した職員を広く聴取しております。また、亡くなった職員の状況についても、健康状態も含めてご遺族の協力を得て確認をしておりまして、そういった意味でも当時の調査は丁寧かつ必要十分なものだと認識しております。
 処分についてでございますけれども、この事案では、パワーハラスメントと認定した指導、これは動機が業務上に関するものであって、「いじめ」や「虐待」の意図によるものではなく、指導を必要とする理由も認められた一方で、その指導が暴行を伴っていたということで、行き過ぎた指導と認定したことを考慮した結果、本部長注意という処分となっておるところです。不利益処分というのはですね、憶測に基づいて処分することはできないところでございますし、行為の動機、対応、職責の内容等を総合的に勘案したうえで決定されるものでありまして、この事案の処分につきましても丁寧かつ必要十分な調査を実施し、当時の調査によって明らかになった事実と事案にかかる書状等総合的に勘案したうえで、当時の基準に基づいて行われたものであり、適正なものであったと承知しているところでございます。

【斉藤委員】
 パワハラと精神疾患、精神疾患の発症は把握できなかった調査ですよ。そして暴行は異常な暴行です。運転中に暴行しているのだから、こんな危険な行為はないでしょう。そしてこの議場の場で述べられないような、人格を否定する叱責があった。因果関係は認めているけれども、不十分さはあってもこれだけの重大な事実が明らかになったにもかかわらず、そして結果的には8300万円の損害賠償、そしてあなた方はそれに対して2割の求償権まで求めた。あなた方が、重大な過失があったと、異常だと自覚して求償権まで行使したのです。ここまで認めながら、「本部長注意」は間違いでなかったと。社会通念上そういうことは通用しないでしょう。不十分だったけれども2ヶ月あなた方なりの調査をしたでしょう。しかし結果的には8300万円の損害賠償を支払い、それでも足りなくて2割の求償権を発動したんです。「重大な過失があった」と答弁で認めた。それがなぜ「本部長注意」で済むんですか。それが正しかったと済まないんじゃないですか。

【参事官兼首席監察官】
 暴行の理由につきましては、パトカーの運転方法を指導するにあたり、当該職員の頭部を右平手で1回叩き、パトカーがぐらつくほどの暴行でもなかったということで認められております。それからもう1回運転中の当該職員の頭部を右平手で叩いたということですけれども、その動機といいますのが、業務の適性を確保するうえで必要な指示をしていたのに、その指示に従わなかったことに対して暴行に及んだということになっております。業務上必要な指導でございまして、「いじめ」や「虐待」の意図によるものではないということでございますけれども、行き過ぎた行為ではありますけれども、調査によって、「看過することなく指導のタイミングを逸すれば、県民に不利益を及ぼし、あるいは信用失墜を生じさせるなどの不適切事案を発生させる恐れがあったもの」と認められております。そのために指導を行ったと。ただその指導には行き過ぎが認められたというところでございます。

【斉藤委員】
 自動車学校でそんなことをやったらクビですよ。運転中に叩くなんていうことは。そして人格を否定する叱責・暴言というのは、「いじめ」「虐待」です。あなた方は本当につじつまの合わないことをやっている。この場で言えないような人格を否定する叱責があった。本当にこのパワハラが「一因」どころかそのものが原因だったと、はっきりしているじゃないですか。
そういう意味で、この間さまざまな形であなた方が検証してきたが、やはりつじつまが最後合わない。もっと社会通念上県民に伝わるような対応をしなければ、県警は誤りを認めなければ。それが冤罪の温床になると。このことを指摘して終わります。