2025年3月10日 予算特別委員会
復興防災部に対する質疑
(大要)


・大船渡市の大規模山林火災について

【斉藤委員】
 昨日の夕方5時に鎮圧宣言が出されて、今日の10時に全地域で避難指示が解除されたと。一つの山を越えたという感じがいたします。防災関係の皆さんの連日連夜の取り組み、とりわけ緊急消防援助隊、最大時は2000名を超える規模で、24時間体制で三交代で消火にあたられたと。本当に心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。今朝の情報を見ても、まだ待機も含めて1000人規模で緊急消防援助隊が今日も活動するということです。
 先ほども出ましたが、私も何度か避難場所に行ってまいりました。やはり自分の自宅や地域がどうなっているかという情報が避難場所には十分適用されなかったと。これは、マスコミで上空からの映像が出るわけです。しかしどこまで燃えているかという正確な情報が伝わらない。大船渡市が1日に2回、午前・夕方と市長が丁寧な記者会見を毎日やっていたと。その情報は、先ほどお話あったように「お知らせ版」で届くんだけれども、一番知りたい自分の自宅や地域の状況というのが提供されなかったと。これは、自衛隊の偵察機や県警のヘリが毎日飛んでいるわけですから、適切な情報提供があってよかったのではないか。まずそのことについてお聞きします。

【防災課総括課長】
 住家の延焼状況などリアルタイムでの把握が、急速な延焼の拡大によりなかなか難しかっただろうというのがまず一つとしてございます。そういった中でも、避難者の皆様はご自宅がどうなっているかというのは、委員ご指摘の通り一番の知りたいことだったのだろうと考えてございます。
自衛隊や警察ヘリの情報につきましては、こちらとしても提供について検討いただいたところでございますけれども、技術的なところが今回間に合わなかったので、これについては提供の仕方について技術的な検討を加えていかなければならないだろうと思っております。
 そうした中で、先ほど委員もご指摘いただきましたが、民間のテレビ局で空撮映像とか市長の記者会見をYouTubeではリアルタイムで配信してございました。そういった情報がリアルタイムでいつ流れるのかというのが避難している方々が分からないと結局情報がいかないということもございますので、放送事業者がリアルタイムの情報をいつYouTubeに出すのかというのを知り得る限り情報収集し、大船渡市を通して避難所に情報提供したところでございます。

【斉藤委員】
 避難生活の改善なんですけれども、特に命を守るという点でいけば高齢者・障がい者の対策が大変重要だったと。今回4つの福祉避難所が機能したと思います。昨日17時の時点でも38人が福祉避難所に避難していると。ただ、結構な人数が避難しているんだけれども、対応する人員は増えないんですよ。そこに避難したときに、職員の体制も支援しないと大変なのではないか。
それから避難者の3分の2は、親類・知人宅への避難です。ここには情報が届かないということと合わせて、必要な支援物資、食事も含めて、「提供します」というアナウンスはありました。しかし十分なものにならなかった。3分の2はそういうところに避難しているので、その人たちを対象にした被災者支援センターのようなものが必要だったのではないかと感じていますがいかがでしょうか。

【復興くらし再建課総括課長】
 高齢者や障がい者への対応でございます。こういった方々の健康被害の悪化を防ぐため、先月28日に日本赤十字社の救護班がすべての避難所に入り、健康状態のチェックや支援ニーズの聞き取りを行うなどの後方活動により、医療・福祉的支援に確実につながる体制を構築してきたと認識しております。
 また、福祉避難所の体制でございますけれども、福祉避難所も必要な支援が行われる、配慮が行われるような建物の仕組みになっているところでございます。その施設職員だけではなかなか十分な対応が難しかったということも聞いておりますが、福祉施設同士で協定などを行っているというようなところも県内の中にはあったと認識しております。福祉避難所の今回の対応については改めて確認し、次なる改善につなげてまいりたいと思っております。

【斉藤委員】
 応急仮設住宅の整備も調整をされていると聞いていますが、綾里地区はたくさんの漁港があって漁村集落があると。そういう点でいくと、そういう集落単位で住田式の木造住宅などの整備を、何よりも被災者の要望を聞いてやる必要があるのではないか。その際、大震災では行われた電化製品3点セット、エアコンの整備を大震災並みにやっていただきたい。
 被災者生活再建支援法の適用も決まりました。物価上昇の中で、これも大震災のときに岩手県が市町村と共同で100万円上乗せして、沿岸市町村はさらに200〜300万円上乗せしたんですね。これで多くの被災者が自立再建しました。二重の被災ですから、今回もぜひ大震災並の支援、グループ補助金も含めてぜひ検討していただきたい。

【復興くらし再建課総括課長】
 避難指示の解除を受けまして、大船渡市と調整を図りながら被災者との生活再建を早急に進める必要があると認識しております。
 応急仮設住宅につきましては、建設型・賃貸型のほか、公営住宅の活用などが考えられます。大船渡市を交えて関係部局との協議を行っているところでありまして、供与の方式と所要数につきましては、被災世帯の人員構成や地域の結びつきなど、被災者の意向も踏まえながら、市と十分に調整し決定したいと考えております。
 住宅への家電製品などについてでございます。建設型・賃貸型住宅の場合、これまでの災害救助法の適用事例によると、給湯設備、ガスコンロ、照明器具は一体の設備とみなされておりますが、救助法の対象とならない可能性のある用品もございます。これらにつきまして、過去の災害時に受けた支援団体からの提供状況なども参考にしながら、また、救助法の対象・非対象につきましては、国とも協議しながら検討をしたいと考えております。
 被災者生活再建支援の県の上乗せでございますが、これまでも直近ですと令和元年台風19号などの際に、被災者生活再建支援法の適用対象外の市町村や適用にならない半壊世帯・床上浸水世帯にたいし、市町村への補助により支援金の支給を行う制度を設けた例がございます。今回は、強風により広がった火災が原因で住家被害が生じたものであり、過去にあまり例を見ない災害ということもございますが、今後被害状況が明らかになった場合に、被災者の生活再建についてのあり方は、市や関係部局と連携して検討してまいりたいと考えております。

・東日本大震災津波復興の残された課題について

【斉藤委員】
 第二期復興・創生期間以降の東日本大震災からの復興の基本方針の見直しが、昨年12月27日に復興推進会議において決定されたとお聞きをしていますが、岩手の要望がどのように取り入れられる方向なのか示していただきたい。

【復興推進課総括課長】
 国では、今年度当初から有識者によるワーキンググループを設置しまして、復興における中長期的な課題に関する本県の現状、また、意見等も踏まえながら第二期復興・創生期間後の復興施策のあり方の検討を進めているところでございます。
 ただ今お話ありました通り、国が昨年12月に決定しました第二期復興・創生期間以降の東日本大震災からの復興の基本方針の見直しに向けた主な課題等におきましては、心のケア等の被災者支援などについては、真に必要な範囲で復興施策による対応も検討するとされております。
 国では、本年夏に復興の基本方針を見直すということにしております。現在も議論が継続されていることから、今後においても必要な支援が継続されるよう被災者に寄り添った対応を求めてまいります。

【斉藤委員】
 「心のケア等」ということで、引き続き取り組まれる方向だと。
 岩手県も「いわて被災者支援センター」を設置し、ワーキンググループが現地に来たときにも、いわて被災者支援センターから聞き取りもしていただいたと思います。いわて被災者支援センターの今年度の実績、この取り組みも引き続き活動が取り組まれると受け止めていますが、いかがでしょうか。

【被災者生活再建課長】
 いわて被災者支援センターの今年度の取り組みの実績ですが、今年度は令和7年1月末現在で85人から相談があり、相談対応回数は2351回となってございます。
 今後ですけれども、来年度も引き続き弁護士やファイナンシャルプランナーと連携し、一人ひとりの状況に応じたきめ細やかな相談支援を行っていくこととしております。
 また、第二期復興・創生期間後ということでございますけれども、いわて被災者支援センターもさまざま相談ニーズがまだあるという状況だと認識してございますので、令和8年度以降についても復興事業として継続するように国に求めてまいります。

【斉藤委員】
 私がいただいた資料には、スクールカウンセラーの配置等も岩手県は要望しているということですが、これはどうですか。

【復興推進課総括課長】
 「心のケア等の被災者支援など」につきまして、「など」の部分には、被災した子どもたちへの支援も入っております。その中において、当然スクールカウンセラーについても入ってございますので、本県としては継続を要望している状況でございます。

【斉藤委員】
 岩手県が本当によく頑張って、ワーキンググループや国の機関に働きかけてきた成果だと思いますので、引き続き頑張っていただきたい。

・福島原発事故による汚染水の影響、対応について

【斉藤委員】
 汚染水の海洋放出による県内の影響、損害賠償請求の取り組みはどうなっているでしょうか。

【放射線影響対策課長】
 令和5年8月からの処理水の海洋放出に伴いまして、海洋放出前の令和4年度に比べまして、アワビの令和5年度漁獲分の価格が約4割、令和6年度漁獲分の価格が約5割低下したほか、ナマコの令和5年度漁獲分の価格が約3割、令和6年度漁獲分の価格が1月末現在での比較で約2割低下するなど深刻な影響が出ております。
 県内の漁業団体におきましては、東京電力と賠償に向けた交渉を行っておりまして、アワビについては、令和5年度分の損害について賠償の考え方が合意され、賠償金の支払いが行われております。ナマコにつきましても、令和5年度分の損害の賠償の考え方について合意がなされ、支払いに向けた準備が進められているとうかがっております。また、影響を受けた水産加工業者においても、賠償に向けた交渉を行っているとうかがっております。
 県におきましては、影響を受けた事業者に対する東京電力への損害賠償請求が円滑に進むよう、国や東京電力に対し政府予算要望に加えまして、沿岸市町村や県漁連と共同での要望も行っているところでございまして、今後におきましても中国政府の輸入停止措置の見直しの状況でありますとか、東京電力との損害賠償交渉の進捗等の状況を踏まえて、必要な要望を行ってまいります。

【斉藤委員】
 中国の輸入規制は見直しという報道はあるんだけれども、これはどのように進捗しているのか。中国・香港への輸出額の実績、現状を含めて示してください。

【放射線影響対策課長】
 本県から国に対しまして輸入停止措置の即時撤廃について、さまざま機会をとらえて要望してきたところでありまして、一定の前進が図られていると認識しております。国によりますと、現在中国政府が参加する形でIAEAによるモニタリング調査が進められているということで、この結果を踏まえて中国政府が輸入停止措置の調整に着手すると聞いております。報道では、輸入再開に向けた検討に入ったといったような報道も承知しておりますが、輸入規制緩和の具体的な内容ですとか時期について国からの説明はまだございませんので、今後の動向を注視してまいりたいと考えております。
 本県の水産物の輸出額の状況でございますが、県とジェトロ(日本貿易振興機構)が行っている貿易等実態調査というものがございますが、本県産水産物の令和5年度の中国及び香港への輸出実績額は約7億円となってございます。海洋放出開始後の実績を示す令和6年の実績額については、現在調査中で数字としては把握しておりませんが、農林水産省が公表している全国の数字によりますと、令和6年の水産物の中国への輸出額は61億円で、前年比約9割の減と承知をしておりますので、中国への輸出が事実上停止している状態でございますので、本県事業者においても同様の影響が生じているものと認識してございます。

【斉藤委員】
 中国は9割減だけれども、他のところへの輸出が増えたということも聞いていますが、これを最後に聞いて終わります。

【放射線影響対策課長】
 香港への輸出の状況でございます。先ほど申し上げましたジェトロと共同で行っている貿易等実態調査によれば、若干増えているという数字も出ておりますけれども、この調査はあくまでアンケート調査ということで、回答事業者には変動がございますので、県全体として実際に増えているのかどうかというのは正確には分かりかねているところでございますが、いずれ今後におきましても事業者の状況については情報把握に努めてまいりたいと思います。