2025年3月13日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑
(大要)


・新型コロナ対策について

【斉藤委員】
 私は一般質問で、5類以降の感染拡大の波、第9波から第12波の感染状況について、第12波が医療施設・高齢者施設のクラスターが一番多かったということを明らかにしました。定点観測の感染者数が感染状況を正確に反映していないんじゃないかと思いますけれどもいかがですか。

【感染症課長】
 定点報告については、医療機関から報告される患者数を集計し、感染症の発生の傾向や水準を踏まえた感染症の流行状況を把握することを目的として実施しております。
 また、クラスター報告については、国の通知に基づき施設内での同一の感染症に罹患した方が10人以上になった場合に、各施設から保健所に届け出をいただいているものであり、社会福祉施設等における感染拡大の状況を把握するとともに、衛生管理を強化することを目的としております。
 このことから、定点報告数とクラスター報告については必ずしも一致しないものの、新型コロナの感染状況の流れを大きくつかむことができ、感染症の発生動向の把握において重要な指標となっております。
 県では、地域の感染状況の把握につきまして、これら定点報告数、クラスターの発生状況のほか、医療機関の医療逼迫の状況や医療従事者の離脱状況等により総合的に判断しているところです。

【斉藤委員】
 私はかなりリアルに一般質問では取り上げました。第12波のときのピーク時の定点観測は14.75でした。第9波のときは県議会議員選挙のさなかの時期で35.24と全国で一番岩手が感染者数が多かった。しかしそのときの高齢者施設のクラスターは63件、医療施設のクラスターは23件、合わせて86件でした。直近の第12波は昨年の12月〜1月にかけてということになりますけれども、高齢者施設のクラスターは73件、医療施設のクラスターは34件で、合わせて107件。私は部長の答弁を何度も紹介しましたけれども、クラスター数というのは地域の感染状況とリンクすると。この比較が一番客観的だと思うんです。
 そういう意味では、やはり5類に移行して、コロナは終わったかのような、国をあげてそういう雰囲気をつくっているけれども、決してそうではないと。ここの事実に基づいた情報発信というのは必要なのではないか。
 これも指摘しましたが、コロナによる死者数が年間では、実は2024年が岩手県は一番多かった。全国の状況はどうなっていますか。

【感染症課長】
 新型コロナウイルス感染症の死亡者数については、国の人口動態調査によりますと、全国では2022年が47635人、2023年が38080人、2024年1月〜10月が31376人となっております。
 現在流行しているオミクロン株については、令和5年5月の5類移行前に開催された国のアドバイザリーボードの分析においては、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いものの、デルタ株に比べて入院リスクや重症化リスクは低いとされています。このことを踏まえまして、オミクロン株流行以降については、感染者数が死亡者数に影響しているものと考えております。

【斉藤委員】
 全国的にいいますと、合計しますと死亡者数は13万3847人なんですよ。そしてすでに去年の8月で13万人を超えたんですけれども、5類移行後、23年5月以降に亡くなったのは約44000人で3分の1を占めていると。死者数の割合は今高いんですよ。岩手県も実際にそうでした。岩手県の死者数は、10月までのデータで、去年の1月〜10月で437人、一番多かった令和4年の431人を上回っています。定点観測だけ見ていると落ち着いたようにしか見えない。しかし、コロナによる死者数はすでに去年が一番多かったんです。
 この問題について、こういう分析もあります。22年以降4人に1人が介護施設や老人ホーム、自宅などで亡くなっていると。第一線で活躍されている東北大学の押谷教授は、「季節性インフルエンザと大きく違うのは感染力。想像を超えるようなものだった」と言っております。5類に移行したものは何だったのかと、「多数の死者を見ないことにした」と。これが5類に移行した大きな問題だったのではないかと。これは本当に鋭く指摘しているんじゃないでしょうか。「5類に移行した後もパンデミックは続き、多くの人が亡くなっていたのに、社会が忘れようとしたのではないか」と指摘しています。
 死者のこのような増加、本来なら国、感染症の研究所などの機関が分析して、警告を発するべきだと思うんですよ。県としてもこういう事実をしっかり分析して、県民に知らせる。そして何よりもコロナによる死者をなくす具体的な対策を講じるべきだと思いますけれども、これは部長に聞きましょう。

【保健福祉部長】
 死亡者数は、5類になるまでが7万5千人、その後13万3千人、岩手県も650人が5類までに亡くなっていたのが、その後はご指摘の通りです。コロナが決して無くなってるわけではなくて、今なお高齢者にとってはリスクの高い感染症でございます。
 分析につきましては、5類移行後、オミクロン株なんですが、変異株の状況がどうなっているかとか、患者様の年齢の状況だとかクラスターの発生状況、ワクチン接種後や罹患後の免疫状態がどうなっているか、そういったような情報は5類前は国の方で分析があったんですが、5類移行はなかなかそういった発信がなくて、ここら辺をなかなか地方自治体で分析するのは限界がありまして、こういった分析については国に対して期待しているところでありまして、我々も把握できるデータにより県の分析は不断に進めてまいりたいと思いますし、県民の皆様方に対してもきちんと発信をしてまいりたいと思います。
 やはり高齢者施設でのクラスターが大きな課題であります。これは5類移行後も同じと考えておりますので、5類になる前からある程度協力医療機関との連携なども進めてまいりましたので、今後におきましても、特に高齢者施設でのクラスター対応にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

【斉藤委員】
 先ほど紹介しましたけれども、いま亡くなっている方の4分の1は病院以外です。特に高齢者施設で一番クラスターが発生していますから、第8波のときに四百数十人亡くなったけれども、120人ぐらいは高齢者施設の留め置きだったんですよ。この教訓をしっかり受け止めて、高齢者施設でクラスターがたくさん発生しているだけに、本当に命を守る対策をしっかり講じていただきたい。

・第9期介護保険事業計画について

【斉藤委員】
 高田県議も総括質疑で取り上げました。去年4月1日の特養待機者が750人だったのに、第9期施設整備が3カ年かけてたった494床にとどまっていると。保険料は天引きされても、入りたい特養ホームには入れないということに計画が最初からそうなっているのではないか。第8期の計画と施設整備の実績も含めて示してください。

【長寿社会課総括課長】
 特別養護老人ホームの第8期の計画につきましては、当初504の計画がありましたところ、8期の最終におきましては154の整備実績となってございます。これにつきましては、新型コロナウイルス感染症等の関係、施設整備にかかる検討等が進まなかったものなどが影響したものと考えております。
 第9期の整備計画につきましては、先ほど委員からご紹介ありました通り、特別養護老人ホームの開設が494床となっております。

【斉藤委員】
 第8期の実績が本当にひどいんですよね。504床の計画に対して154床しか整備されなかった。だから第9期の計画には、第8期にできなかったものがズレ込んでいるんですよ。ズレ込んで494床なんですよ。そういう意味で、本当に介護保険の存在意義が問われているんだと思うんです。保険料は9期でどんどん上がる。しかし入りたい特養ホームには入れない。最初から入れない計画になっている。もちろんこれには理由があります。一つは、介護職員を確保できないこと。もう一つは、社会福祉法人が借金して施設を整備しても元がとれないということです。ここにきちんと本来なら国が手立てをとらなければならないと思うけれども、だからといって県や市町村がそれでいいということにはならないと思うんです。本当に入るべき人、750人というのは「早急に入所すべき人」なんです。そういう人が入れないで自宅の介護になっていると。
 私が決算のときに聞いたときには、介護のための離職が1000人規模だと。社会で介護するという実態は完全に崩れているのではないか。
 一番の解決策は、国の負担を6割に増やして、介護報酬を引き上げる。そして介護職員の待遇を改善する―実はこの提案は、自民党・公明党が政権から外れたときに主張した政策なんです。自民党も野に下がればまともなことを言うと。しかし政権に入ったらそれを投げ捨てたんですね。そういう意味で、やはり国の負担で介護保険制度を抜本的に改善して介護報酬を引き上げないと、「保険あって介護なし」ということになりかねないと思うけれども、部長いかがでしょうか。全国知事会なんかも要望していると思うけれども、いかがですか。

【保健福祉部長】
 県ではこれまでも国に対しまして、令和6年度の介護報酬改定の影響の調査のうえ、安定的なサービス提供が図られる適切な水準の介護報酬を設定すること、介護給付費全体が増大し地方公共団体の介護保険財政を圧迫することが懸念されるため、公費負担割合の見直しや被保険者負担が過大にならないよう支援策を講じることなどについて要望しているところでございます。
 県民が介護に不安を持たず、安心して老後を送るため、介護保険制度の円滑かつ安定的な運営と適切なサービスの供給が図られるよう引き続きさまざまな機会をとらえて国に働きかけてまいります。

【斉藤委員】
 「介護格差」という岩波新書から専門家が書いて出ていますけれども、本当にいま介護保険制度というのは「保険あって介護なし」という状況に陥っていると。
 この問題の最後に、私たちがアンケートをやりますと一番切実なのは、「年金でも入れる特養ホームの増設」なんですよ。そこで、低所得者でも入れる特養ホームの整備の状況はどうなっているか示してください。

【長寿社会課総括課長】
 特別養護老人ホームは、大きくユニット型の個室と多床室に分かれておりますが、多床室に入所する場合は、一般的にユニット型個室に比べて利用料金が低く抑えられております。特別養護老人ホームの施設の整備にあたりまして、国では要介護高齢者等の尊厳の保持と自立支援を図る観点から、ユニット型個室の整備を推進しているところでございますが、本県では、低所得の方の入所が可能な多床室の整備の必要性も考慮しまして、居室人員を4人以下とすることができる独自基準を設け、地域の実情に応じた多床室の整備も認めているところでございます。また、多床室についても、ユニット型個室と同額の補助を行っているところでございます。
 県内のユニット型個室、多床室の状況ですが、令和7年2月1日現在で188施設9352床のうち、ユニット型個室は108施設4830床、多床室は80施設4522床となっておりまして、おおむね同程度の割合となっております。

【斉藤委員】
 ぜひ年金でも入れる特養ホームの整備に取り組んでいただきたい。

・福祉・消費生活関連相談拠点施設の整備について

【斉藤委員】
 基本設計の概要を示していただきたい。新しく拡充される内容は何か。
 秋田県・福井県の類似施設を研究したようですけれども、そことの比較。
 人員体制の増員はどうなるか示してください。

【管理課長】
 旧県立盛岡短大跡地の8100平米を活用いたしました、施設規模延床面積約4900平米として整備する計画としてございます。現在、自主設計に向けた最終調整を行っているところです。新しく拡充される内容についてでございますけれども、利用者のプライバシーや心理的安全性を確保するため、これまで共用であった福祉部門の相談室を機関ごとに設置したうえで、部屋数を増やすとともに、一時保護教室は相部屋から個室化したうえで部屋数も増室するといったようなことを考えてございます。また、一時保護児童の学習機会を確保するため、学習図書スペースの拡張や屋内運動場新設など、学習支援機能の充実を図ることとしております。
 他県との類似施設との比較でございます。秋田県では昨年度、秋田県子ども・女性・障がい者相談センターを開設しまして、延床面積は約3100平米。また福井県では今年度、福井県児童・女性相談所を開設いたしまして、延床面積約3900平米のものを設置したとうかがってございます。
 人員体制についてでございます。現在の人員体制につきましては、福祉総合相談センターが93名、県民生活センターが9名となってございます。また、福祉総合相談センターの職員定数は、虐待相談件数の増加に伴う法定配置数の増加等により、令和6年度に1名、令和7年度には8名の増加を見込んでおります。福祉総合相談センターと県民生活センターの移転新築後の職員体制につきましては、相談機能を一元化した福祉・消費生活関連相談拠点施設として機能する体制とすべく、関係部局と検討を行ってまいります。