2025年3月14日 予算特別委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・物価高騰のもとでの中小企業対策について
【斉藤委員】
岩手県は商工団体と協力し、定期的に物価高騰に伴う事業者の影響調査を行っています。これは大変大事なことだと私は評価をしたいと思いますけれども、11月末時点の一番新しい調査ですが、物価高騰の影響、売り上げの減少、利益率の低下、価格転嫁率はどうなっているでしょうか。
【経営支援課総括課長】
エネルギー価格・物価高騰等に伴う事業者の影響調査について、昨年11月末時点に実施したものの結果でございますが、「エネルギー価格・物価高騰等による経営の影響が継続している」が86.8%となっております。そのうち「売り上げの減少」を影響にあげる事業者は38%、「利益率の低下」64.9%となっております。
また、原材料費・人件費などの増加による販売受注価格への価格転嫁の状況につきましては、「価格転嫁を実現した」が14.4%、「価格転嫁を一部実現した」53%、「価格引き上げの交渉中」6.1%、「これから価格引き上げの交渉を行う」3.3%、「価格転嫁はしていない」または「価格変動の影響はない」5.2%、「価格転嫁は実現していない」13.2%となっております。このうち「価格転嫁を一部実現した」と回答した事業者の転嫁率は、「10%未満」が45.3%、「10〜30%未満」が35.4%、「30〜50%未満」が8.3%、「50〜70%未満」が6.7%、「70〜100未満」が4.3%となっております。
【斉藤委員】
資材や原材料が高騰している中で売り上げ減少というのは二重の打撃なんですね。そして利益率が低下しているのが64.9%ということで、本当に大変な状況になっていると。そういう中で価格転嫁できたのは14.4%ですから、一部転嫁の場合も答弁あったように、8割は30%未満なんですよ。ほとんど転嫁されていないのが実態で大変深刻な状況だと。
そうした中で、物価高騰による中小企業・小規模事業者の課題と県の対応策について示してください。
【経営支援課総括課長】
影響調査におきましては、経営課題に挙げられた割合が高いものとしまして、「原料・資材高騰への対応」が54.3%、「人材確保」が49.5%、「価格転嫁」が48%、「賃金の引き上げ」が42.6%などとなっております。これらの課題に対応するために、県では国や商工指導団体と連携しまして、まずは円滑な価格転嫁の促進に向けたパートナーシップ構築宣言の普及拡大に向けた取り組み、それから利益率の向上や効率的な業務運営、新たな顧客層の獲得といった小規模事業者の経営革新計画の策定などの生産性向上に向けた取り組み支援と伴走支援、そして物価高騰賃上げ支援金による賃上げ原資の補填や中小企業者等賃上げ環境整備支援準備補助による持続的な賃上げのための生産性向上に向けた取り組み支援といったものを展開しているところでございます。
【斉藤委員】
その通りだと思うんですけれども、いま大企業を中心にして「満額回答」になっているんですね。これは大企業の社会的責任を考えたら、下請け中小企業に対して下請け単価も上げないといけないと思うんですよ。そうしなかったらパートナーシップ構築宣言だけでは、本当の意味で価格転嫁は十分には進まないと。だから、大企業に対して賃上げ並に下請け単価を引き上げよという強い要求、これは全国の商工団体連合会もやっていると思いますけれども、その取り組みをぜひ進めていただきたい。
コロナ禍のもとでのゼロゼロ融資は大変大きな役割を果たしましたが、ゼロゼロ融資の実績と返済の状況、条件変更等の伴走型の支援資金の対応状況はどうなっているでしょうか。
【経営支援課総括課長】
新型コロナウイルス感染症対応資金―いわゆるゼロゼロ融資の融資実績、これは令和2年5月1日から令和3年5月31日まで展開されたものでございますが、トータル件数は12110件、額は1944億790万円余が実行されました。この対応資金の今年2月末時点の件数残高は、貸付残高を有する件数は6908件で、貸付残高は695億5317万円余でございます。
返済の状況でございますが、先月末までに約定返済が開始されたものは6474件・612億5491万円余、今月以降約定返済開始予定のものは434件・82億9826万円余でございます。
新型コロナウイルス感染症対策資金―いわゆる伴走支援資金でございますけれども、ゼロゼロ融資の返済開始に伴う借り換え需要に対応するために、国の保証制度の改正に合わせて、令和5年1月10日に県の貸付要件を緩和いたしました。その要件緩和以降の保証承諾実績は、先月末時点で2924件・747億9541万円余で、そのうち借り換えは2092件・578億8587万円余でございます。
これら新型コロナウイルス感染症関連の融資にかかる条件変更―据え置き期間や最終期限の延長等の状況でございますが、先月末時点で、対応資金は547件・73億4601万円余、対策資金は161件・45億9647万円余でございます。
【斉藤委員】
ゼロゼロ融資は12000件余と大変な活用をされたわけですけれども、返済の時期になって物価高騰に直面しているんですよ。ですから、いま言われたような伴走型支援をぜひ継続して強化していただきたい。
こうした中で軽視できないのが、社会保険料の滞納による倒産です。この実態、これに対する対応はどうなっていますか。
【経営支援課総括課長】
東京商工リサーチ盛岡支店によりますと、令和6年1月から12月までの県内企業の倒産件数は76件ありました。このうち、社会保険料等公租公課の滞納が確認されたものは11件でございます。また、今年の1月、2月の県内企業倒産件数は13件ございましたが、同じく社会保険料等公租公課の滞納が確認されたものはそのうち2件となっております。
対応でございますが、国におきましては令和6年6月から運用を開始しました事業再生情報ネットワーク―これは再生可能性の高い中小企業の情報について、中小企業活性化協議会などから関係省庁を通じて公租公課の徴収現場、具体的には年金事務所や税務署、金融機関等に共有することで、公租公課の適正な納付計画の策定、関係機関による処理方針や支援の判断、決定に資する( )として構築したものです。
県が商工指導団体・金融機関と設置しております、いわて中小企業事業継続支援センター会議におきましても、社会保険料未納で督促を受けた企業が事業再生計画の策定に向けて相談中であることを同ネットワークに相談した結果、柔軟に対応いただけるということになり、結果的に事業継続できたといったような事例も共有しております。
【斉藤委員】
令和6年の76件の倒産のうち11件、14%ですよ。本当に金融機関が再建の協議をしているときに差し押さえられて倒産したというケースもあるし、続いていますから、いま対応しているということですので、本当にこういうことがないようにぜひやっていただきたい。
商工会・商工会議所・中央会への支援、とりわけ経営指導員の指導が中小企業対策の鍵だと、立派な答弁がありました。そして実際に処遇改善も行ったということですけれども、東北6県の中で岩手県の支援額、経営指導員の数はどうなっているでしょうか。
【経営支援課総括課長】
東北6県との比較、令和6年度の状況でご説明させていただきます。商工会・商工会議所及び商工会連合会につきましては、本県は115名でございます。それに対しまして、青森県は111名、宮城県168名、秋田県141名、山形県97名、福島県186名ということで、各県で設置基準等も異なりますので、ある程度のばらつきはあります。
中小企業団体中央会については、本県は19名でございます。青森県16名、宮城県16名、秋田県18名、山形県15名、福島県19名となっております。
【斉藤委員】
処遇改善で、商工会・商工会議所等については、9933万円の処遇改善がアップしたということですが、それでも令和7年度は13億8890万円なんですね。東北各県と比べると、残念ながら山形県に次いで2番目に低いということで、今回の処遇改善は評価するけれども、やはり東北の中では下から2番目なので引き続き強化していただきたい。
中央会への支援は、指導員19人というのは東北で一番なんですね。一方で、当初予算額で見ると、増えても1億2100万円で、これも一番少ないんですね。それが実態ですので、引き続き強化をしていただきたい。
・中小企業賃上げ支援金とさらなる支援について
【斉藤委員】
中小企業賃上げ支援金の申請状況と特徴を示してください。
【労働課長】
3月11日時点において、申請件数は法人で185件、個人事業主45件、合計230件でございます。申請人数は2108人、申請額1億2648万円でございます。
従業員別で見ますと、5人以下は94件で41%でここが一番多いゾーンでございます。6人以上20人以下59件、21人以上50人以下は41件、51人以上100人以下は18件、101人以上が18件でございます。
業種別では、一番多いものが卸売業・小売業で42件、製造業36件、建設業35件となってございます。
【斉藤委員】
ちょうど申請から20日経過しました。順調に伸びていると思いますし、今の答弁ですと5人以下の小規模・零細の方々が申請をしているということが今の段階では特徴的なのかなと。ただ人数を見ると、21人〜50人規模が人数では597人分で一番多いんですね。だから20人以上の中小企業のそうした申請も着実に出ているのではないかと。
物価高騰賃上げ支援金の第二弾をやったときにお聞きした際、最低賃金を下回っている労働者が53000人、前の最低賃金に張り付いていた、いわば59円上げなくちゃならない人たちが約11000人いるということですので、この11000人は基本的には賃上げをされていると見ていいのではないかと思いますが、ぜひ周知徹底して、すでに賃上げされているところがまだまだあるでしょうから、今回はこの賃上げ支援金を活用したいと、中央会のアンケート調査でも48%が活用見込みという調査もありますので、ぜひ周知徹底を図っていただきたい。
あわせて、生産性向上という観点で、中小企業等賃上げ環境支援事業費補助はどのように活用されているか。来年度はどのような予算化をされているか示してください。
【経営支援課総括課長】
令和6年度におきましては、67者に対して9600万円余の交付決定を行っております。具体的には、この補助金を活用して、生産工程の内製化を進めて外注費削減により製造原価率の向上を図った。それから、新たな顧客獲得のため店舗を改装し新たなサービスを提供するスペースを確保した。また、令和5年度の当該補助金で整備した設備をより効果的に活用するために外部専門家に委託して新商品の開発を行った。さらに、最新IOT機能を装備した自動販売機を導入して24時間無人営業を可能としたほか、多言語案内やキャッシュレス決済機能によりインバウンド対応も含めた営業体制を整備した。こういった具体的な取り組みにご活用いただいています。
来年度につきましても、今年度と同じように1億円を当初予算案に盛り込ませていただきまして、引き続き中小企業者の取り組みを支援してまいります。
【斉藤委員】
時給59円の最低賃金の引き上げというのは、中小企業にとっては大変なものです。そこで心配しているのは、「賃上げ倒産」が出ていないかと。今の段階でどのように実態を把握しているか示してください。
【経営支援課総括課長】
岩手県中小企業団体中央会が令和6年8月から9月にかけて県内の中小企業組合の役職員に対して実施した「最低賃金引き上げに関する調査」によりますと、その影響について「大いにある」27%、「ある」35%、「少しある」25%ということで、計約88%の方々が影響ありとしております。加えまして、その中のコメントにおいては、「人件費増加分を販売価格に転嫁するまでに時間がかかる。転嫁するまでにコスト削減が非常に難しい状況である」ですとか「人件費上昇に見合う販売価格への転嫁ができるか不透明であり、価格転嫁ができなければ企業存続も難しい」といった意見もございます。やはり最低賃金の引き上げが経営環境に一定の影響を与えている状況にあると言えるかと思います。
なお、賃上げ倒産につきましては、東京商工リサーチによりますと、令和6年1月から今年の2月までの期間において、県内企業において賃上げを要因とする倒産は見られなかったところではありますが、ただ、同期間内に人件費の増加などを一因とする倒産は、令和6年は4件、今年は1月と2月で1件ございました。
【斉藤委員】
ぜひ中小零細企業にとっては、賃上げもかなり大きなハードルです。しっかりした支援策を引き続き強化してやっていただきたい。