2025年3月17日 予算特別委員会
農林水産部(第1部)に対する質疑(大要)
・高病原性鳥インフルエンザ対応について
【斉藤委員】
1月に発生した高病原性鳥インフルエンザで、県職員1万人余、24時間体制で取り組まれたことに改めて敬意と感謝を表します。
発生農場への支援策と営農再開の見通しはどうなっているでしょうか。
【振興・衛生課長】
発生農場に対しましては、家畜伝染病予防法に基づき、国から殺処分された鶏等の評価額全額の手当金や、一般社団法人日本養鶏協会からの経営支援互助金が交付されるほか、国の融資制度により鶏の購入など経営再開に必要な資金の活用が可能となっております。
現在、県では、発生農場に対し、支援制度の内容等を丁寧に説明しながら、国からの手当金等が速やかに交付されるよう、評価額の算定などの事務手続きを支援しているところです。
発生農場が経営を再開するためには、国の防疫指針に基づき、発生農場の飼養鶏等を殺処分・埋却し、農場の消毒を繰り返して実施し、その後、県の検査により、農場内の床や壁等から高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されないことや、衛生管理が適切に実施できることを確認した上で、生きた鶏を鶏舎内で飼養してモニタリングする最終的な検査で陰性を確認する必要があります。
発生農場では、これらの経営再開に向けた準備を進めておりまして、県では、発生した5農場のうち1農場について最終的な検査を終え、この農場では3月15日から鶏の飼養を開始しております。
県としては残りの4農場について、雛の導入などの準備が整い次第、再開に必要な検査の実施等により、経営再開を支援していきます。
【斉藤委員】
すでに5農場のうち1農場は再開していると。
今回国から疫学調査のチームも派遣されたと思いますけれども、今回の鳥インフルエンザの感染経路はどこまで明らかになっているのか。今後の対策を含めて示してください。
【振興・衛生課長】
高病原性鳥インフルエンザの発生防止に向けては、野鳥などを介した農場内へのウイルスの侵入を防止する対策の徹底が重要となります。
このため県では、渡り鳥が飛来する10月までに、100羽以上を飼養する全ての養鶏農場に家畜保健衛生所の職員が立ち入りし、飼養衛生管理の徹底を指導しております。
今年1月、本県で感染事例が連続して発生したことから、県では、事態の深刻さを踏まえ、各農場でのまん延防止対策を強化するため、農場の管理者等を対象に国や家きん疾病の専門家を招いた会議を開催したほか、低温下で消毒効果を高めるため、車両等の消毒薬を高濃度で使用するなど、寒冷地に対応した対策等により飼養衛生管理のレベルを一段上げた取組を進めているところです。
現地に入った国の疫学調査チームが現在原因の分析中ですが、令和7年度は、平時から、養鶏農場の管理者等を対象にした連絡会議を開催し、今回の強化した取組や、国の疫学調査チームの分析結果も踏まえ、対策強化の取組事例等を共有するなど、生産者や関係機関・団体等と力を合わせ、本県の養鶏農場で、高病原性鳥インフルエンザが発生することがないよう、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
【斉藤委員】
そうすると、感染経路の究明は調査・分析中だということですね。
・コメ不足の要因と課題について
【斉藤委員】
24年産米の相対取引価格、販売価格の推移はどうなっているでしょうか。コメの価格が下がっておりませんけれども、その要因をどうとらえているでしょうか。
【流通企画県産米課長】
令和6年産の岩手県産「ひとめぼれ」玄米60キログラム当たりの相対取引価格は、昨年11月が2万858円、12月が2万3,573円、今年1月が2万5,419円となっております。
また、岩手県産「ひとめぼれ」5キログラム袋の店頭販売価格は、昨年11月が3,297円、12月が3,273円、今年1月が3,316円となっています。
米の価格が下がらない要因については、昨年8月の南海トラフ地震臨時情報等を受けた買い込み需要などにより全国的に店頭で米が品薄となり価格が上昇したところです。それ以降、令和6年産の新米の出回り後においても集荷競争が続いており、価格が下がることなく更に上昇しているものと認識しております。
【斉藤委員】
岩手県産ひとめぼれは、前年度と比べますと昨年度は1月は15258円が6年産米は25419円となっております。店頭販売価格は前年と比べると1.6倍で、全国も1.69倍と言われていますから、とんでもない上昇になっていると。
この要因は、結局は政府の言い分は破綻したと。十分コメは足りているけれども、流通で詰まっているという言い分で、備蓄米の放出にも背を向けていた。しかしいつまで経っても、新米が出てもコメがどんどん上がる。結局コメが不足しているからなんですよ。そこに一番の原因があるんだと思います。
まず何よりも、昨年需要量は705万トンで、コメの生産量は661万トンです。生産と需要だけ考えても44万トン少なかったわけです。備蓄米があるから大丈夫だと言っていたけれども、全然大丈夫じゃなかった。今の生産量というのは需要に追いつかない、44万トンも少ないものになっていると。
本当に減反をやりすぎて、生産基盤がギリギリのところにきて今回のコメ不足が発生したのではないかと思いますがいかがですか。
【水田農業課長】
米の取引価格についてでありますが、米の取引価格は、需給バランスなど、民間の取引環境の中で決まっていくものであると認識してございますが、主食用米の需要が、国全体で長期的には減少を続けており、最近では毎年10万トン程度減少していることを踏まえて、農業者や産地が自らの経営判断により主食用米や麦・大豆などについて需要に応じた生産を推進しているところでございます。
国では、JA全農など主要な集荷業者に集まる米が例年に比べて減少するなど、米の流通に目詰まりが生じたとしておりまして、今後は米の販売事業者に義務付けている国への届け出について、対象事業者を拡大することも検討していると聞いているところでございます。引き続き、国の実態把握等の動向も注視しながら、対応していきたいと考えてございます。
【斉藤委員】
国の破綻した言い分を代弁してもまったく意味がないと、そのことは指摘をしておきます。
コメの生産基盤の減少の実態について、主食用の水稲作付面積、生産量、稲作農家の推移は10年前と比べてどうなっていますか。
【水田農業課長】
主食用米の作付面積等の推移についてでありますが、国の作物統計調査によると、本県の令和6年度の主食用米の面積は43,100ヘクタール、生産量は24万5,200トンで、平成27年度と比べ、作付面積は10%の減、生産量は9%の減となっております。
また、国の農林業センサスによると、最新の令和2年度の稲作農家数は27,272経営体で、5年前の平成27年度と比べ21%の減となっております。
【斉藤委員】
岩手県でもコメの作付面積が減少して、生産量も減少している、農家も20%も減少していると。
いま本当にコメを増産しなければならない。コメの増産と備蓄こそ必要ではないか。これは鈴木宣弘先生が県議会の県政調査会でも言ったんだけれども、中国は1年分を備蓄していると。日本のコメは1.5ヶ月分ですよ。何かあったらすぐに飢餓になります。本当に備蓄そのものもあまりにも少なすぎる。
政府は、足らなくなったら大変なので30万トンぐらい輸出量を増やすと言っていますけれども、これは小手先の議論で、食料安全保障というんだったら、中国に負けないような備蓄と増産をしなければならないと思うけれども、いかがですか。
【水田農業課長】
米の増産と備蓄についてでありますが、国による米の全国の需給見通しでは、主食用米の需要は、毎年10万トン程度減少すると見込む中、西日本の作付面積減少率が高くなっており、本県をはじめ東北などの主産地が、生産を維持・拡大していくことが必要と考えております。
こうした見通しに加えまして、本県のJA等の需要動向も踏まえ、岩手県農業再生協議会では、令和7年産の主食用米の生産目安を前年産実績から約1,300ヘクタール増やしたところです。
備蓄米については、大凶作などにより民間在庫が著しく低下した際に、放出することとなっているほか、今般、主食用米の円滑な流通に支障が生じる場合に、国が集荷業者に対し買い戻し条件付きの売り渡しを行うことができることとなったところでございます。備蓄米の本来の主旨である不測の事態に備えるための備蓄水準については、制度を運用する国において、適切に判断されるものと考えます。
【斉藤委員】
政府の今年の需要量は、昨年実績に対して31万トン減なんですよ。毎年10万トンずつ減ってきて、なぜ去年は705万トンになったのかと。そういう分析もなしでは今年も確実にコメ不足が起きてしまう。そういう政府のやり方ではないのかと。
水田活用交付金の実績と水田の活用実態はどうなっているでしょうか。
【水田農業課長】
水田活用交付金の実績等についてでありますが、令和5年度の水田活用の直接支払交付金については、本県への交付金額は約112億円となっており、前年度から8億円減少していますが、麦・大豆等の畑作物を対象とした「畑作物産地形成促進事業」と、新市場開拓用米や加工用米等を対象とした「コメ新市場開拓等促進事業」を加えると、前年度と同程度の交付実績となっております。
令和6年産の作付状況については、水田全体の作付面積は約69,500ヘクタールで、前年と比べ約1,400ヘクタール減少しています。作物別に見ると、前年と比較して、飼料用米や飼料作物などが減少している一方で、主食用米やホールクロップサイレージ用稲、輸出用米などが増加しております。
【斉藤委員】
結局水田面積が1400ヘクタール減少しているんですよ。主食用米は300プラスになりましたが、飼料用米が936トンのマイナス、飼料作物が933トンのマイナスと。いわば、酪農を考えたら自給飼料を増やそうと言っているときに、自給飼料がこれだけ減っていいのかと。本当に政府のやり方は食料安全保障に逆行したやり方だということは指摘をしておきたいと思います。
・酪農・畜産の課題について
【斉藤委員】
2020年比で、飼料・肥料・燃油、その他農業資材の物価高騰の実態、農家への影響についてお聞きします。
【振興・衛生課長】
国が実施している農業物価統計調査では、令和2年を基準とした場合の本年1月時点の農業物価統計を見ますと、総合物価指数が122.3、肥料138.7、飼料が139.3となっております。
原油価格については、国の調査によると、本年1月時点の東北地方におけるA重油の価格は、1リットル当たり111.1円と、高騰前の令和2年と比べ57%上昇しています。
酪農経営については、国の「畜産物生産費統計」の公表値に、「農業物価統計」の公表値を単純に掛け算した数値を示しますと、令和6年の搾乳牛1頭当たりの収支が約15万円となっており、畜産物生産費統計の令和2年の公表値と比べ約10万円の減少となります。
【斉藤委員】
そうすると、令和6年の試算では1頭あたり10万円ですよね。100頭だったら1000万円ということになります。これだけの減収が強いられている。
国は配合飼料に対する補助を減らしたんですよね。若干飼料が下がっているということで。いま高止まっているので。岩手県も頑張っているけれども、残念ながら1頭あたり1万円の補助は今回は計上されなかったと。しかし1頭10万円の収入減のときに、国も県も補助を下げたらどうなるか。大変厳しい状況になっているのではないかと思いますけれども、いかがですか。
【振興・衛生課長】
配合飼料費への補助については、令和6年12月補正予算で、配合飼料価格安定緊急対策費補助として、約16億6千万円を措置したところでありまして、第3四半期分については補助額の算定に用いる配合飼料平均価格が2月20日に公表されたことから、3月下旬に生産者への交付を予定しております。同じく第4四半期分についても、県としては、まずは事業主体と連携しながら、速やかに生産者に交付されるよう取り組んでまいります。
また、直近の配合飼料価格は低下傾向にはあるものの、依然として高く、畜産経営に大きな影響を与えていると認識しております。このため県では、配合飼料価格安定制度を所管する国に対し、価格高騰が続いた場合でも、畜産経営体の再生産が可能となる十分な補填金が交付されるよう、制度の拡充を繰り返し要望しているところであります。
県としましては、現状をしっかり把握しながら、必要な対応を今後も国に求めてまいります。
・いわて農業生産強化ビジョンについて
【斉藤委員】
良いことは書いているんですけれども、目標がありませんから、どこまで県が本気でやろうとしているのか。
農業生産額を増やす、生産量も増やすというんだったら、耕地面積を増やすとか、何よりも担い手、農業の担い手を抜本的に増やさなければならない。新規就農者が286人程度で推移していますけれども、これだったら今の生産額を増やす基盤がないのではないか。この点で、目標はいつ示されるのか。そして増やそうと思ったらそれにふさわしい基幹的農業者や新規就農者をどう増やすのか。
【農業振興課総括課長】
「いわて農業生産強化ビジョン」では、「いわて県民計画」に掲げる政策を一層推進するとともに、農業生産の増大や人材の確保などの方向性を示し、本県農業を強化するため策定するものでありまして、今般公表した素案では、食料自給率と農業産出額を目標に掲げております。
委員ご提案の新規就農者確保の目標については、今後も県内全ての市町村や農業協同組合長、生産者や農業団体等と意見交換を重ねまして、共通理解を図りながら、さらに検討を進めていきます。
最終案については、本年7月を目途に公表したいと考えております。