2025年4月15日 文教委員会
教育委員会に対する質疑
(大要)


・県立盛岡地区統合新設校体育館新築工事に係る問題について

【斉藤委員】
 今日の説明を聞いてびっくりしました。3月27日付の矢巾町からの提案ですが、本当に許されない内容だと思います。
 吟味しなくちゃならないのは、やはり覚書を昨年の5月30日に締結したと。この経過にもあるように、令和3年12月13日から2年余かけて協議をした結果、住民説明会もやって、教育長と矢巾町長の連名で印鑑も押して、覚書が交わされたと。
 経過を見れば分かるのですけれども、去年10月31日、県議会が議決したのが10月25日ですが、そして県教委がそれを受けて建築工事契約締結を行ったと。10月31日というのは議決の直後です。工事を契約しました、工事に入りますというあいさつに行ったら、「ゼロベースでの検討を求める」と。これは完全に覚書違反なんですよ。なぜかというと、令和6年6月11日、矢巾町議会定例6月会議で質問があって、矢巾町長はこの時、「費用負担は県2、町1」だと答えているんですよ。覚書の通り答えている。この段階では、覚書を町長は知らなかったわけではなく、認識して、是認をしていたということです。それが議会で議決されて、工事が発注された直後に、手のひら返しで「ゼロベースを求める」と。
 この覚書をよく見ると、最後の「第5」というところに、「この覚書によりがたい事情が生じたとき、また、疑義が生じたときは、甲と乙で協議する」と書いてあります。だから、矢巾町がまともに再協議を求めるのであれば、この第5項で、覚書によりがたい事情をあちらが言わなければならない。それで覚書が履行できなくなったというなら筋が通るんですよ。ところがそういうことを何も言わないで、事実上「覚書をゼロベースで」というのは、ちゃぶ台返しなんですね。矢巾町はこのお祭りをやっているんですが、お祭りならいいんです。これを行政でやっちゃだめですよ。
 今回の5つの提案も、覚書に至る合意事項というのはずっとあるんですね。当初の構想から、たしかに設計図も事業費も変わってきました。しかしその都度協議して、合意して積み上げてきたのがこの覚書だったということなので、私はこの5項目の提案について、「一方的に覚書を破棄するのですか。その理由は何ですか」と質す必要があると思います。県教委は覚書を守ると言っているので。なぜ覚書が実行できないのか。矢巾町の提案を見ると、「体育館建設費用に町財産が投入されることに、双方の合理性がない」なんていうことは、議論されてきたことですよ。管理の問題についても、負担割合に応じて管理責任がある、所有権はあるということも議会では回答されてきた。だからそういう意味で、この覚書を破棄する理由を単刀直入に聞く必要があると思う。この3月27日の5項目の提案というのは、私は検討にまったく値しないと思うけれども、県教委は今の段階でこれについて回答しているのですか。していないのですか。

【学校施設課長】
 3月27日付の文書に対しては、昨日、提案事項に対する回答として「覚書の趣旨と異なる内容が含まれており、同意することはできない」と町に回答したところでございます。

【斉藤委員】
 そのように言うんだったら、ここに書かないとだめじゃないですか。昨日回答しましたと経過に書かれていない。
 この経過を見ると、「矢巾町から県への通知」のところで、「事案解決のための課題整理と合意案」と書いているんですね。この書き方はだめですよ。そのように矢巾町は書いて持ってきたのですか。誤解されますよ、こんな書き方をしたら。せめて「矢巾町の新たな提案」という内容にしないと、意味不明ですよ。そういうずさんなところを詰めないとだめですよ。こういう揉めているときは、緻密に議論をすると。
 先ほど、覚書と違う中身だと回答したと言っていましたが、違うなんてものじゃないですよ。覚書を全面的に否定する、覆す内容になっていると。その事情はなんですかと聞き返さないといけないと思いますよ。この間の合意事項があるんだから。負担割合の2対1まで認めているんだから。
 10月31日を契機に、矢巾町の態度が豹変したんです。そういうことは認めがたいと。やはりこの覚書に戻って、覚書がなぜ実行されないのか、そのことを質す必要があると思います。
 昨日はどういう回答の仕方をしましたか。

【学校施設課長】
 まず、資料に昨日の部分が反映されてなかったことはお詫び申し上げます。
 回答ですけれども、日付としては昨日付で、メールと郵送であわせて発送したところでございます。
 資料の矢巾町とのやりとりの表の最後の行、協議事項等で「事案解決のための課題整理と合意案」と記載していることについてでございますが、これは3月27日付で矢巾町からきた文書の題名が、「岩手県立盛岡地区統合新設校体育館新築工事に係る事案解決のための課題整理と合意案について」というものでしたので、それをここに記載したところでございましたけれども、そういった題名の文書を受領したというところまで書かないと、ご指摘の通り誤解を招く形だったと考えております。

【斉藤委員】
 矢巾町長は3月議会で、「何でも県からメールだけで押しつけられた」と言って、「この間二度泣きました」と。浪花節ですけれども、重大なものはきちんと持って行ったらいいんですよ。窓口が総務課長だったら総務課長に持っていったらいいんですよ。毅然とした態度を見せると。顔も見ないでメールでやりましたというのではなく、ちゃんとやっていただきたい。そういう意味で、私は覚書を堅持する立場で徹底してやっていただきたい。そうでなければ、あなた方の責任で覚書が破棄されたと。そうすれば損害賠償も求償権もはっきりしますから。ここでも議論したように、覚書というのは契約と同じだと。そういう性格を持ちますから、相手が覚書を一方的に破棄したとなれば、ある意味責任は全部矢巾町と言ってもいいぐらいの問題ですよ。そういうことをはっきりさせて詰めていくという風にしていただきたい。
 本当に残念なことは、県立南昌みらい高校の開校式をやったばかりなんですね。こんなときに、一緒になって立派な体育館を造ろうという話が現段階で破棄されていると。こんな生徒を犠牲にするようなやり方はないと思います。ところが、矢巾町議会にも、町民にもこの経過はほとんど示されていない。だから何が起きているか分からないのです。議会にも丁寧に説明していないし、ましてや町民にも説明していない。町長のさまざまな言動を見ると、「覚書を明らかにしたくなかった」ということまで言っているんですよ。町民の前に明らかにしたくなかったと。県議会に請負契約案件が出されて明らかになって、こんな覚書や契約書は隠すようなものでも何でもない。そういうところにも大きな問題があるし、豹変した一つの例として、矢巾町の体育館担当のスタッフは全部代わりました。今まで2カ年ずっと県と協議してきたスタッフは全部代わりました。これも異常なことです。今までの経過を無視するという意味ですよね。それだけではなく、実は年度末に21人が矢巾町では退職しました。処分を受けた職員が、若手を含めて退職しています。本当に町政はこの問題だけでなく大変な状況にあるのではないか。だからこういうときは、堂々と筋を通して、誤りを正していく対応が双方にとっても必要だと思いますので、しっかり対応していただきたい。
 私は何らかの形で、矢巾町の皆さんにもこの間の経過が分かるような広報といいますか、そういうことが必要なのではないかと思いますよ。町民がまったく分からない中でやられている。実は住民説明会はやられているんだけれども、せいぜい20人前後なんですよ。いわば体育館の周辺住民しか対象にしなかったというか、結果的にはそうなって、住民がどういう議論があって最終的な覚書になったのかということが、ほんの一部にしか知らされていないということも大事な問題です。こういう経過が明らかになれば、ちゃんと覚書を守って矢巾町も県教委と一緒になって立派な体育館を造るべきだという世論を構築することは十分可能だと私自身は思っております。だからいつまでも長引かせることではなくて、この覚書を堅持するという県教委の姿勢、道理が多くの方々に伝われば、この局面は打開する道を切り開くことができるのではないかと思っております。

・いわて留学の取り組みについて

【斉藤委員】
 先日の新聞報道で、11校43名が新年度、いわて留学の留学生になったと。この数は、かなり全県的な規模で高校の魅力化と一体で、いわて留学の取り組みが広がってきたと。これはおそらく全国にも例がないのではないかと。本当に小規模校が自治体と協力して高校の魅力化に取り組み、小規模だけれども維持していくと。これは全国的にも稀な挑戦だと思います。
 この入学生の状況、いわて留学についてどういう効果が表れているか示してください。

【高校教育課長】
 いわて留学の過去5年間の入学実績は、令和2年度が4校19人、令和3年度が3校19人、令和4年度が8校31人、令和5年度が9校25人、令和6年度が9校32人となっており、今年度は11校に43人が入学し過去最多となっています。
県教育委員会としましては、今後も県内生徒の学ぶ機会の確保に配慮しつつ、いわて留学を実施する学校や地元自治体が継続的に県外募集を実施できるよう、いわて留学の一層の充実を図ってまいります。
【高校改革課長】
 いわて留学は、教育や文化、生活環境が異なる県外生と県内生のそれぞれの発想や視点、意見等の相違を共有・認識する面があり、そういった県外から入学した生徒と県内生徒が共に学ぶことにより、互いに刺激し合い、切磋琢磨するなど、高い教育的効果が確認されております。

【斉藤委員】
 高い教育的効果があまりにも簡潔でしたね。
 葛巻高校が起点になったと思いますが、葛巻高校は何としても2学級を維持すると。そうしないとゆき届いた教育が守られないということが出発点だったと思います。そのために、山村留学という制度を導入して、寮もつくり、今は公営塾もやって、今でも2学級を維持していると。葛巻高校には何度か私も行ったことがありますけれども、そういう取り組みが出発点になって、特に最近顕著なのは西和賀高校ですよね。昨年の委員会でも議論して、特例で2学級。そしたら見事に67人の入学生を迎えたと。これも本当に素晴らしいし、いま高校改革課長が言ったように、県外から来られる方々というのは、いま自分の目標を持ってくるといいますか、行き先がなくて来るのではなくて、学びたい学校で学ぼうという意識の高い生徒が来て、それが地元の生徒との切磋琢磨という状況。これは大槌高校もそうですよね。独自のさまざまな取り組みがやられています。
 もう一つは地元自治体の取り組みです。いま地元自治体の目の色が変わっていると。葛巻はまさにその通りで、自分たちの高校、自分たちの地域の未来がかかっているという意気込みで、予算も投入してやると。西和賀も温泉旅館を宿にして、公営塾もやって。到達点としては、葛巻にしても西和賀にしても、立派に国立大学に進学できる、そういう学力もつくということが新しい到達点を築いていると。もちろん就職もそうですけれども、進学の希望も果たせる。小規模校だけれどそういう高校がつくられている。これもすごいことだと思います。
 やはり高校再編を考えるときに、「生徒が少なくなっているから統廃合」という単純なことではなく、統合を一律に否定しませんが、小規模校でも進学にも就職にも希望に応えられる高校づくりができるという、本当に先駆的な取り組みになってきているのではないかと思いますが、もう少し立ち入って示してください。

【高校改革課長】
 委員の方から、葛巻、西和賀の取り組みがございましたけれども、以前新聞には、沼宮内高校では、役場で寮を整備していただき、そちらも過去最高の4人の合格者を出したということで、小規模校、特にも1学級校の存続については、それぞれの地元市町村の多大な支援をいただいているところであり、現在今月中に長期ビジョンを策定することで進めておりますけれども、1学級校・小規模校の取り扱いにつきましては、遠隔授業等も活用しながら、広大な地理的要因を持つ岩手県にとっては、やはり学校が身近なところにあるということは非常に重要なものと考えておりますので、その辺は高校再編計画においてもしっかり検討の上、学校の配置に取り組んでまいります。

【斉藤委員】
 よろしくお願いしたいと思います。
 全国的には1校2校素晴らしい県外留学の取り組みをやっているところはあるんだと思いますけれども、全県的にこれだけの規模で小規模校が地域と一体となって頑張っているところはないと思います。そういう点でも新しい挑戦だと思うので、ぜひ進めていただきたい。

・教員不足の現状について

【斉藤委員】
 先ほど欠員状況について、小学校で16、中学校3、高校3、特別支援学校11と。小学校の16の中には担任が配置できなかったということはなかったのか。特別支援学校の11も大変多いと思うけれども、これは本当に担任が配置できなかったことがなかったかどうか示してください。

【県立学校人事課長】
 支障が出ていないのかということだと思いますけれども、他の教員や管理職等が業務を担当することで、児童生徒に支障がないように対応していると把握しております。
 令和7年4月9日時点で、担任である教員の不在状況は、小学校2名、中学校0、高校0、特別支援学校0となっておりまして、他の教員や管理職等が業務を担当することによりまして、児童生徒に支障が出ないよう対応していると把握してございます。

【斉藤委員】
 小学校は2名担任が不在ということですね。これは深刻なことだと思います。早急に解決していただきたい。
 文科省は、例えば産休の場合、5〜7月の間、年度当初から配置できるという措置をとっております。あれは産休に限定されているんでしょうか。そして新年度はどういう体制がとられているのでしょうか。

【小中学校人事課長】
 現時点で数は認識しておりませんけれども、国では1学期に早期に補充に入ることができると。そして県とすれば、2学期以降についても、2学期のスタートの時点で10月11月から産休に入る場合は8月から入ることができるという対応をとっております。

【斉藤委員】
 まだまだ不十分だけれども、文科省もそういう対応をとっているわけだから、事前に配置をすれば一緒に授業をしながらスムーズに移行できるということになりますので、そういう対応をしっかりやっていただきたいと思います。

・旧特法の改正について

【斉藤委員】
 旧特法改正案が審議に入りました。これは前回この委員会でやりましたので立ち入ってはやりませんが、旧特法というのは、教員がいくら残業しても残業手当は出さないと。労働基準法適用除外なんですね。おそらく世界に例がないと思います。そして国内でも何が矛盾かというと、国立の学校、私立の学校は同じ教員でも労働基準法適用なんですよ。公立学校だけ超過勤務は出さないというのは本当に異常な、「定額働かせ放題」と言われています。これを放置したままでは、いま本当に教員のなり手を確保するのは至難の業だと。長時間労働、働いても手当が出ないと。調整額はいま4%で、今年度はわずか1%です。1%というのは3000円ぐらいなんですけれども、手当縮小というのがあって、実質1500円だと。これぐらいしか増えない。これは改善にも何もならない。現場で働いている教員にも、これから教員になろうという人たちにも、失望を与えるような旧特法改正案になっているのではないかと思いますが、これは教育長の立場として、旧特法について、例えば教育長の全国の会議とか小中学校の校長会議とかあると思いますが、そこではそれなりの意見を出していると思うけれども、それはどのようになっているか示してください。

【教育長】
 教員の処遇改善、いま委員からお話のありました旧特法に関する部分も含め、働き方改革や体制見直し、いわば文科省で三位一体改革ということで進めており、さまざまこの間も国会で議論された中で、旧特法については存知の上ということで、いま委員からお話のあった通り率を上げていくということで議論されていると。その課程で、全国の都道府県教育長協議会などもさまざま要望を国に対して差し上げているわけですが、それはやはり三位一体改革の国の改革をしっかり進めてほしいということでの要望はしておりますが、旧特法の是非については、まさにそれは国会でご審議いただくべきものだと思いますが、手元に資料がないので正しいことをきちんとご答弁申し上げている自信はないのですが、ただ、教員のこれまでの処遇や働き方、組織体制を含めてしっかり見直していかなければ、やはり次代の教員の確保・養成ができないという危機感を非常に持っているということは申し上げられると思います。そのうえで要望は差し上げているということでございます。