2025年7月2日 文教委員会
盛岡地区統合新設校の体育館新築工事に関する質疑(大要)
【斉藤委員】
今日新たに、矢巾町との協議で4月23日付で矢巾町から2項目の通知があったと。5月8日に担当課長と直接面会のうえ通知の趣旨を確認したと。これはどなたがどなたに会って、通知の趣旨はどういうことだったのですか。
【学校施設課長】
5月8日ですけれども、県教委から私、学校施設課長が矢巾町を訪問しまして、先方は4月から矢巾町の教育委員会事務局の文化スポーツ課が所管課になっておりますが、そちらの課長さんと面会をさせていただきました。
趣旨につきましては、まず4月にお互い担当が代わりましたので、顔合わせをするということと、通知の趣旨の確認ということで、特に確認したいと思った部分というのは、矢巾町からはある意味覚書と異なる内容の主張を3月に通知をいただいていて、それに対して「同意できない」という回答を4月14日に差し上げていた。その後に、この4月23日付の内容Aで、「双方協議の場を設けていただきたい」ということが記載されておりましたので、そういったやりとりの上でどういった内容の具体的な協議をしたいという趣旨なのかということを確認をさせていただきました。もしかしたら3月の通知以外の何かお考えがあるのか名ということも確認をしたくて行ったところでしたけれども、従来からのお考えを表明されたというのが結果でございます。
【斉藤委員】
矢巾町が突然、「県は住民への説明が必要」ということの趣旨は何だったのですか。
【学校施設課長】
こちらについては、通知に記載の通りでございまして、あくまでも実施主体は岩手県だということで、岩手県が住民に対して説明をするべきだということでございましたので、5月8日にお話しした際にも、そこはこれまでも県と町と一緒にやってきたところですので、現時点では県がやるということは難しいというお話をしたところでございます。
【斉藤委員】
矢巾町は、最初は戦略プロジェクトの室長が担当でしたね。そして総務課に代わって、今回文化スポーツ課に代わったと。総務課に代わったときが「ゼロベース」のときなんです。今度はわずか1年も経っていないですね、文化スポーツ課だと。文化スポーツ課長さんは、この間の協議の経過が出ているんだけれども、この経過はご承知なんですか。
【学校施設課長】
お話をした範囲では、あまりこれまでの経緯について十分に引き継ぎを受けたというわけではないということで、過去の経過につきましては「あまり答えられない」ということで、「これからどうするかのところを担当しています」というお話でした。
【斉藤委員】
だから交渉にならないんですよ。2年半もかけて交渉協議をして、教育長と町長が署名をして覚書を交わした。そして工事契約をやって、工事が始まった途端に「ゼロベースで」となった。我々は本当にびっくりしているんですよ。矢巾町がちゃぶ台返しかと。だいたいこの間の経緯が分からなくて交渉にならないと思うんですよ。
例えば、4月23日付のAは、共創プロジェクト検討委員会が3回開催されたと。その後の経過は書いていないわけですよ。この共創プロジェクト3回の段階は、たしかにハンドボールコート2面なんですよ。ところがその後、日照権の問題とか、事業費がこのままだったら32億円になるということがあって、面積を縮小するなりして、最終的には去年の4月18日の実施設計図面が確定して、今つくろうとしている体育館の内容が確定したということなんですね。それを踏まえて覚書が結ばれている。だから、この間の協議で当初の案というのは修正されてきたけれども、その協議を通じて最終的な実施設計図面というのを、事業費と合わせて確定されたと。それで覚書が結ばれた。
先ほどもこの間の経過が大事だという意見もありましたけれども、この間の経過を踏まえた議論でないと噛み合わない。この間の経過を無視しているからこの議論は進まないんですよ。だからその点で、この異常な事態がまだ続いていると思います。
それで、5月26日には、県が4月23日付の通知については「対応できない」と回答したと。損害賠償の精算についても協議したいと言ったら、「損害賠償金の精算協議は一切応じることはできない」と。
先ほど飯沢議員も言いましたが、覚書は契約と同じなんだと。そういう認識は確認しましたか。
【学校施設課長】
「覚書の法的な位置づけ、効力についてはどのようにお考えになりますか」ということは口頭でお尋ねをしましたけれども、そこについては「コメントできない」ということでした。
【斉藤委員】
だから協議の前提というか常識というか、そこが完全に欠けているということも率直に指摘したいと思います。
県議会の常任委員会の議論では、そういうところも含めて喧々諤々議論して、覚書の重要性というのはやってきたと。そして負担割合の2対1というのも、これは使用時間に応じて2対1になったのだと。そういう裏付けも持って、それを覚書にも明記をされているわけです。
そういう意味で、担当が3人目に代わって、代わる度に無責任になっていくと。本当にこれは重大だと思います。だいたいこの間の経過を承知しないで今後のことを話し合いましょうなんて、何を考えているのかと。行政というのは、県職員であろうが町職員であろうが、法律に基づいて仕事をする、この間の経緯に基づいて仕事をする、当然のことですよ。
それで、実は去年の12月10日に、矢巾町議会に説明があったということですね。矢巾町の全員協議会。このときに、ほぼこの経過と同じような内容が町から示されました。そういう点では、まったく知らないわけではないんです。この間の協議の経過、覚書の締結まで、12月10日までは事実経過については基本的に県と町の認識は一致していた。ただこれは口頭の説明で、経緯の表だけは出されましたけれども、それ以外は口頭の説明なので、本当にしっかりした文書がないんですね。ほとんど町議会には説明されていない。だから町議会の方々は分かっていませんよ全然。これも異常なことだと思うんですよ。
先ほど飯沢さんが言ったことで、私も同じ体験がありました。県議会の常任委員会で一度継続審議にしましたね。その後、矢巾町長は私のところに来たんですよ。「なんとか進めてくれ」と。県議会で喧々諤々議論しているさなかは、町長も「このまま進めてくれ」と。私も直訴されました。だからその後「心変わり」したということなんですよ。そういう点では、この経過の中にも「負担割合は2対1だ」と町長は議会で答えていますから、このときもまともだった。覚書を締結して、工事を着工した途端に「ゼロベースで」と。「建設用地に立ち入るな」と。だから工事が中断した。建設用地というのは、不来方高校に隣接して、矢巾町から見れば遊休地で、お互い本当に良い場所だった。今さらハンドボールコート2面とか観客席の問題とか、なぜこんなことを言うのかと。あの場所だったら絶対つくれない話です。事業費を考えたらつくれない話です。最初はそういうことでスタートしたけれども、最大限ベストの、事業費だってある程度抑えて、それでも県教委単独、町単独ではつくれないような立派なものです。太陽光発電もついて、エアコンもついて、さまざまな設備がついて。2対1で町民も使えると。双方にとってこんなに良い整備計画はなかったと思うんです。それだけに突然「心変わり」したのはなぜなのかと思っております。
そこで今日出された文書でもう一つお聞きしたいのは今後の対応です。既存施設を活用する―盛岡南高校を活用するなど、生徒の学びに支障が出ないように対応していくと。先ほど教育長の話では、来年の1月までは当初の、来年の3月までの工事完了だった。ですからそれは、当初通りいってもやはり必要だった。しかしいま工事が半年以上中断していますから、半年以上それが延びるということがはっきりしています。いま南昌みらい高校、県下最大の高校が矢巾にできたと。1年生2年生3年生、何学級になっていますか。
【教育次長】
3年生11学級、2年生11学級、1年生8学級の30学級となっています。
【斉藤委員】
南昌みらい高校は8学級規模なんだけれど、南高校から2年生3年生が来ていて11学級なんです。本当に大変な規模です。部活などでどのような形で南高校の体育館は活用されているんですか。
【学校施設課長】
南高校の体育館の活用でございますけれども、まず体育の授業で活用してございまして、今年度南昌みらい高校における体育の授業に必要な1週間あたりのコマ数が45コマあるんですけれども、そのうち15コマについては盛岡南校舎の体育館を使用してございます。部活動につきましても、不来方高校で活動する際の設備がない部活動がございまして、陸上部・ボクシング部・登山部・体操部・ソフトテニス部については、盛岡南高校の方にバスで行って活動している状況です。
【斉藤委員】
体育の授業ではバス何台、部活ではバス何台、経費はいくらとなってますか。
【高校改革課長】
バスにつきましては、マイクロバスを1台リースしております。体育の授業の借り上げではバスを2台、実はバレー・ハンドボール・バスケットも盛岡南の体育館を利用しておりまして、そちらの方いっせいに移動したいということで、学校を統合するときに「統合準備金」という積み立てがあるんですけれども、その一部を活用して4月から6月までに2回に分けて、大型バス2台を契約してピストン輸送している状況でございます。
【斉藤委員】
大変な経費がかかっているし、これは予想以上にかかると。これは子どもたちも大変なことです。せっかく県下最大の新設校ができたのに、予定していた立派な体育館ができない。これは本当に子どもたちに大変な犠牲を強いていると。それを受け入れた矢巾町はこんな冷たいことをやっている。私は二重に許されないと思います。
そこで今後の対応の二番目ですけれども、損害賠償について。損害賠償というのは何が対象になるかということだけ聞きたいのですが、一つは、詳細設計まで含めた設計費用、これはダメになったら無駄になりますから対象になりますね。もう一つは、工事発注してからの、ほとんど工事にならなかったけれども準備した経費、こういうことになりますか。
【学校施設課長】
損害賠償といったときに、整理しなきゃいけないのは、請負業者に対する県からの損害賠償ということについては、実際に契約してから工事契約解除までにかかった実費、それから工事が完成した場合に工事業者が得られたであろう利益=実質利益と言うようですけれども、この実費額と実質利益が業者に対する損害賠償の対象になります。
いま矢巾町との精算ということになりますと、実際にどの範囲を矢巾町に精算を求めるかということについては、弁護士とも相談しながら対象について検討していくことになりますが、対象として考えられるのは、委員が先ほどおっしゃったような設計委託料、すでに設計した委託料と、業者に支払った損害賠償、バス輸送でのかかり増し経費というのが検討の対象にはなるのかなと考えております。
【斉藤委員】
分かりました。それなりの額になると思うし、負担割合が2対1、全面的に矢巾町が悪いということになれば全額請求することだってあり得るのではないかと思います。
今後の対応の3番目ですが、「南昌みらい高校新体育館早期建設を求める請願について、町において今後審議するとのことであるから、その状況を注視していく」と。私も注視しております。やはり地元のみなさん、南高校・不来方高校関係者が中心となって、なんとか新しい南昌みらい高校の体育館を早期につくってほしいということで、町議会に対する請願が出された。署名は町長宛です。新聞報道を見ますと、5月30日に2508筆で議会請願がなされた。ところが、6月議会に出されたのですが、町議会は審議しなかった。こんなことあるのかとびっくりしました。議会に請願が出されて総務委員会に付託されて、ところが総務委員会は「予定がつかない」というので6月議会で審議しなかった。町もびっくりだけど町議会もびっくりです。署名は町長宛なので、町長に6月20日に2827筆に増やして、このときは副町長が受け取ったようですが署名は提出したと。これが今の経過です。6月議会で請願が決着がつけば、県の対応としても新たな局面が切り開かれると思っていましたが、残念ながら7月7日に町議会は請願を審査すると先ほど連絡がありました。ぜひこれを見守りたいと。この請願というのは、新しい体育館を早期につくってほしいということですから、私が考えるベストは、町長が気持ちを変えて当初の計画に立ち戻ると。そうすれば設計図も生きるわけだし、この間の工事中止の分の損害賠償はあっても、それほど傷は深くならない。そして早く工事ができると。業者のみなさんもそれを望んでいますよ。今度は随意契約だっていいわけだから。そういうことがベストだと思うけれども、これは町議会の議決ということを見守るしかないんですけれども、そういう方向に大きく局面が打開できればベストだなと。
教育長、私の意見についてどのように思いますか。
【教育長】
まず申し上げられるのは、現時点で我々は覚書を破棄していないということでございます。これまでの経過を経て出来上がった図面、そして覚書、住民に説明したという事実は変わらないと思ってますので、現時点で我々から「覚書を無しにしましょう」ということは考えてございません。ということで、まずは状況を見守るという姿勢でおります。
【斉藤委員】
ぜひ町長には2827筆寄せられた署名、聞くところによるとハンドボール関係者から700筆以上寄せていただいたということでした。あそこはハンドボールの町で、中学校も強い。町民全体もハンドボールに燃えていると。そういう人たちが使える立派な体育館なんですよ。だから本当に大きな反響があった署名だったと思いますし、7月7日の矢巾町議会の審査を本当に見守りたいと。
そのうえで、覚書について、何が町の事情で変わったのかということもしっかり問いただしていただきたい。覚書は契約ですから。契約に至る経過があるわけですから、契約を結んでから何が変わったのかと。今までの経過を無視したようなことであったら全面的に矢巾町の責任ですよと。そういう詰め方を担当者とはやっていただきたいし、この間の経過が分からない担当者とは交渉できませんよ。担当者が2人目3人目と代わること自身に町の誠実さを感じないけれども、しかし回復するわずかな可能性もあると思いますので、しっかり進めていただきたいし、何よりも南昌みらい高校、新しい高校の生徒の期待に応えると。これが県教委の願いでもあり矢巾町の願いでもあると思います。そういう意味で覚書を堅持してしっかり進めていただきたい。