2025年7月2日 文教委員会
盛岡一高バレーボール部に関わる
調査検証委員会設置についての請願に対する質疑(大要)
【斉藤委員】
盛岡一高事件は、高裁段階で被害者の2級後輩のバレー部員が陳述書を出しました。その陳述書の中には、顧問教師による暴力・暴言がどのように行われていたか、今までの資料の中では一番詳しい決定的な証拠だと思うので、その陳述書の資料をお配りできるように委員長にお諮りいただきたい。
【文教副委員長】
ただいま斉藤委員から申し出がありました資料につきまして、委員の皆様へ配布することにご異議ありませんか。
ご異議なしと認めます。それでは事務局に配布させます。
【斉藤委員】
いまお配りして、初めて見るということでしょうから、概略を簡単に説明をしたいと思います。
実はこの陳述書は、2018年6月に裁判所に提出されたものが県教委に届いたと。この6月というのを覚えておいていただきたいんですけれども、翌月の7月3日にあの自死事件が発生しています。ですから、自死事件が発生する直前にこの陳述書が出されたというものです。ここでは、被害者の2年後輩のバレー部員なんですけれども、「部活動のときには、こういうものだと思っていたけれど、卒業して大学で教諭学を勉強して、改めて暴力を振るうことは教師としてはやってはならないことだったと思うようになって陳述した」という中身であります。
1枚目の最後の2行目で「私たちの学年でもバレー部員はY先生から暴力を受けましたので、そのような点を含めて正直にお話したいと思います」と。そして2ページ目の3というところで、これは被害者の学年にどういう暴力があったか。4行目、「青森へ合宿に行きました。練習試合の試合内容が思わしくなかったところ、円陣を組んだ際、Y先生は、Aさんという3年生の顔を何発もビンタしました。私は中学校と高校を通じて、部活動中に先生から暴力を受けるのを見たことは初めてだったので、すごく衝撃を受けたのを覚えています。それ以来、Y先生がバレー部員に暴力を振るうところを何度も目撃し、私自身も受けました」と。大きな4番目ですけれども、3年生が引退した後の暴力の状況です。冒頭に、「F高バレー部入部以来、合宿中F高校体育館での部活の際、バレー部員がY先生から言葉で強く叱責されるのはもちろん、頬を平手打ちされるとか、髪を引っ張られて壁にたたきつけられるといった、多数の先生の暴力を目撃しました」ということで、暴力の種類について書いています。
ア)「髪をつかまれて、壁に激突させられる」―これは陳述した同級生が顧問の先生から、をつかまれたうえで体ごと壁に投げつけられて、壁に激突するという暴行を受けていました。
イ)「平手打ち」―Y先生が後輩を引っ張って壁際に投げつけるようにして立たせ、その後30分ぐらい繰り返し繰り返し怒鳴りながら平手打ちをしていました。30分ぐらいの間、Y先生の怒鳴り声とパチンパチンという音が響き、時々チラリと見ると、ワッペンのことで怒鳴られながら平手打ちを受けていました。
ウ)「ボールが投げつけられる」
エ)「鍵を投げつけられる」
そういう内用です。
ですから、被害者が3年生のとき、陳述した高校生は1年生ですけれども、被害者の3年生にもそういう暴力があった。後輩の自分たちの時代も暴力・暴言が行われていたということが大変リアルに詳しく証言をされています。
それで、これだけリアルな、これは実は被害者が最初に盛岡一高の校長等に訴えた中身そのものなんです。ここまで顧問の暴力・暴言・叱責が明らかになった段階で、ただちに手を打てば、不来方の自死事件はなかった。この陳述書、顧問教師の深刻な暴力・暴言に、残念ながら高校も県教委も向き合おうとしなかった。対応しなかった。ここに盛岡一高事件の一番深刻な問題があったと思います。
この陳述書、これだけリアルな暴力・暴言、被害者が訴えていた中身が赤裸々に明らかになった段階で、どう受け止めたのか。なぜ対応しなかったのか。それはどう検証されたのか。
【教育企画推進監】
陳述書についての受け止めでございます。こちらにつきましては、委員からお話いただきました通り、平成30年6月に仙台高裁に提出があったものでございます。こちらにつきましては、受領後、すぐに県教育委員会としましては、元顧問教諭に対して聞き取りを行ったところでございますが、当該教諭は陳述書に記載された行為について「記憶が定かではない」という表現をしたところでございまして、陳述書の内容が事実であるか判断できなかったところでございます。
また、こちらの陳述書につきまして、代理人弁護士と協議をしまして、陳述書を作成した元部員と原告の被害生徒におきましては、活動の期間が重なっておらず、当該陳述書については被害生徒への暴行の事実を直接裏付けるものではないということで判断したところでございます。
一方、当時の対応を、今回「岩手モデル」策定の過程での検証の過程で顧みますと、県教育委員会は陳述書について、あくまで訴訟上の資料として取り扱ってしまったところがございます。また、陳述書の内容の事実が確定していないという認識のもと、訴訟上の対応のみを進め、陳述書の内容を踏まえた適切な人事管理を行うという意識が希薄だったと言わざるを得なかったというところでございまして、結果としてバレーボール部の顧問を継続させることにつながり、その後の重大事案の発生を防げなかったと認識しているところでございます。こちらにつきましては、昨年5月末に策定した「岩手モデル」の中でのそういった経緯について明記させていただきまして、いまお話させていただいたような反省点を踏まえて適切な対応、そういった情報共有、学校と県教育委員会の情報共有、あるいは管理職同士の共有、そういったところをしっかりとすることで再発防止に取り組んでいくこととしているところでございます。
【斉藤委員】
これは第三者委員会でもどのようにこのことが指摘されているかというと、一審の段階でも二審の段階でも、深刻な暴力・暴言というのは明らかになっているんですよ。そのことについて、人事異動のときも、異動した不来方高校に対しても、県教委は何も知らせなかった。このことは厳しく第三者委員会の報告書で指摘されております。
「岩手モデル」の中で看過できない問題、私は以前も指摘したんですけれども、「岩手モデル」の5ページの中に、盛岡一高事件の経過について、「学校は被害生徒及び同級生部員4名から聴取を行った。被害生徒は、顧問教諭による長時間にわたる叱責・罵倒・暴力等の証言があったが、被害生徒以外の4名の元部員の証言内容は『体罰はなかった』というものであった」と。実はこの4名の証言が、県教委の裁判のときの調査によれば、2人は「高校から問い合わせがあった記憶はない」と答えているんですね。立本さんのご両親も、独自に同級生から聞き取りをして、裁判所にそういう証言内容も出していますけれども、2人は聞き取りを受けた記憶はないと。「体罰はあった」と証言しているんですよ。まとめられた「岩手モデル」、あなた方の調査でさえ、根拠のない4名の高校生の証言で「体罰はなかった」と。こんな記述ないじゃないですか。なぜこうなったんですか。県教委はずっと盛岡一高の調査を鵜呑みにしてきた。しかし盛岡一高は調査していないんですよ。4名だけ調査したけれども、その4名のうち2人は県教委の調査でも「記憶がない」と答えている。改めて県教委が調査した資料をいただきました。そんな根拠のないことをなぜ「岩手モデル」に書いたのですか。
【教育企画推進監】
当時の学校における元部員の4名からの調査の関係でございますが、こちらは訴訟上の資料として、先ほど委員からお話のありました県教育委員会が行った元部員3名からの調書の記録の中で、学校の調査についての「記憶がまったくない」ということで、2名の方からお話があったことについても、県教育委員会で取りまとめた聴取記録の方に記載の上、裁判所に資料として提出しているところでございます。あわせて、当時盛岡一高で調査した記録につきましても、裁判所に提出をしているところでございます。
そういった各資料の記載内容を踏まえまして、盛岡地裁の判決文を引用する形でお話いたしますが、本件高校の教諭らは、平成20年3月28日から同年4月4日にかけて、手分けをして生徒4名及び原告に対して電話で事情聴取を行ったと事実認定しているところでございます。また、判決文の中で、こちらは仙台高裁の判決文でございますが、高校が事情聴取を元部員4名にとどめ、それ以外の元部員からの事情聴取をしなかったことが不合理であるということはできず、この点において( )が認められないというところでの判決の記載もございます。
先ほどお話しました盛岡地裁の判決文の中の事実認定については、特段仙台高裁における判決文の中で規定されていないものでございまして、こういった状況を踏まえたうえで、改めて再発防止「岩手モデル」策定委員会の中で、関係者からの聞き取り等を行って、そういった各関係職員からの証言等を整理した結果においては、ご指摘いただいた学校における元部員4名からの聴取につきましては、事実として県教育委員会としては考えているということで整理しているところでございます。
【斉藤委員】
今のはとんでもないことですよ。あなた方が調査した記録が裁判所に出されています。このうち2名は、聞かれたことは「まったく記憶にない」と。4名についてあなた方は改めて調査したんです。そしたらこういう結果になったのです。あなた方が一番分かっているんじゃないですか。ここで「体罰はあった」と答えていますよ。あなた方の調査には「体罰はあった」と答えている。盛岡一高の4人の調査は全員「体罰はなかった」と。しかしその根拠は崩れている。調べたかも分からない。1人か2人は調査したかもしれない。そこまでは否定しません。しかし4名のうち2人は明確に否定している。「体罰はあった」と答えている。そんな分かりきったことをなぜ、「岩手モデル」にあなた方は4名が全員「体罰はなかった」と言ったと書かなければならなかったのか。自己矛盾ではないですか。だから「岩手モデル」策定委員会の7名の専門家のうち5名が連名で「盛岡一高事件については第三者で徹底して調査・究明すべきだ」と教育長に求めたんです。しかし教育長はまともにずっと回答せずに、「岩手モデル」を策定した直後に「必要ない」と断った。それに対して県議会議長宛に2人の委員から意見書が出されました。どういうことを言っているか。この理由として「県教育委員会が幾度も事案の解明を尽くしてきた旨の説明を繰り返していますが、その手法は誠にずさんなものであり、とりわけ我々が策定委員会の中で何度も要望してきた外部の第三者による調査・検証については一切拒み続け、専ら県教委内部での当時の学校・県教委関係者の聞き取りのみに終始した点で不当である」と。あなた方はよく議会で、「専門家と協力しながらやってきました」と言っています。その専門家が、あなた方の調査はずさんだと言っています。「そこで行われた聞き取りの内容についても、我々外部委員に録音データが示されることなど一切なく、県教委の裁量において要約されたものが示されたのみであった」と。だから外部委員に、調査の原本や録音は示されていないんですよ。あなた方が調査した概要しか示されていない。「元バレー部員たちに対する再度の聞き取り調査の内容を明らかにすることを改めて求めます」と。「うち、聞き取り対象者である元部員2名が『一高による調査を受けた記憶がまったくない』と証言していることが判明しています」「当時盛岡一高で何があったのかという事実関係には、まったく手が入っていない」と。だから「岩手モデル」策定委員会7名の専門家のうち5名が第三者による検証委員会の設置を求めた。いま裁判の過程で深刻な暴力の実態が明らかになったこと。それに県教委が対応しなかったこと。それが直後の自死事件につながったといってもいい。そして一高事件というのは、一審二審で審査されて、さまざまな体罰・暴言の事実が明らかになった。なぜ裁判になったかというと、盛岡一高がまったく調査しなかったからです。ごまかしに4名の調査をやったと言った。しかしわずか4名の調査さえ、2人の元部員は「記憶にない」と。この盛岡一高事件の闇を解明しなかったら「岩手モデル」に魂が入らない。
教育長、どう思いますか。
【教育長】
先般の本会議でのご質問にもお答えをしていることで申し上げている次第でありますが、「岩手モデル」策定委員会、このモデルの策定はそのための調査と合わせて取り組んできております。調査にあたって、7名の専門家に入っていただいたということで、事実関係を広くとらえて、こういったこともあったのではないかということを広くとらえて、再発防止していくということの中で、被害生徒ご家族から訴えのあった前任校、平成21年11月から不来方高校自死事案が発生した平成30年7月までの期間、これは第三者委員会の報告書、民事訴訟の判決、「調査はしている」という事実認定された事実、あるいは県教委が保有していた資料等を踏まえ、さらには当時の職員、関係した職員33名からの聞き取り結果をもとにこのモデルを策定したと。そのモデル策定の結果の過程で、委員からご指摘あったようなところについて、数点、我々の整理したものと被害者ご家族が把握している事実と齟齬があったと。その部分については、両論をしっかり書きましょうということで整理したしました。それらを踏まえて「岩手モデル」はできております。そういうことで、我々とすれば、各委員にもご回答申し上げた通り、相当程度これら民事訴訟、あるいはモデル策定の過程で事実関係は明らかにしてきたと。それから、相違のある部分については両論併記したということ。それから、相当程度記憶があやふやな方々がいらっしゃるということから、再度の調査というのは必要ないのではないかということでお答えを申し上げているということでございまして、我々は、あるものでやっております。一部、ヒアリングした結果、開示されていないという部分はありますが、それは策定委員会というよりも、教育委員会として当該顧問の懲戒処分を検討するにあたってヒアリングした資料については開示できませんということでお出しはしてございません。
【斉藤委員】
これは専門家がこういうことも指摘しているんですよ。「事実関係に対する見解の相違を、再発防止『岩手モデル』資料編に併記して整理した」としているけれども、「盛岡一高事案の保護者は、策定委員会において県教委から示された事実関係に納得していないどころか、多くの虚偽説明がなされていることを証拠を提示しながら逐一指摘しているものであり、これは到底『見解の相違』などという類の問題ではない」と。私もずっと策定委員会を傍聴してきました。家族の方々は根拠を示して、裁判資料も示して、独自の調査も示してやっているのに、それが「見解の相違」だと。そんなことはないでしょう。先ほど4名の調査の件もやりました。4名の調査などという根拠はなかったではないですか。県教委の調査でその根拠は崩れたじゃないですか。ところが両論併記になっていると。だから徹底して調査したら明らかになるんです。
最後に、昨日、県職員の上司のパワハラによる自死事件を取り上げました。実は前の職場というのは、あなた方の関わる職場です。不来方高校事件は2018年7月3日、この事件は2020年です。いわば自死する職場の前の場所で、同じようなパワハラがあった。調査でパワハラと認定された。そのパワハラの中身は、自死に追い込まれた職場でのパワハラとほとんど同じような中身でした。しかしそのパワハラは、当時全然問題にならなかった。人事異動の引き継ぎのときにもそういうことは伝わっていなかった。だからあの事件が起きたのです。あなた方は二度もこういう過ちを犯していいのかと。
やはり徹底してこういう問題は、自分たちだけでできないことははっきりしているのだから、第三者による検証委員会で本当に徹底して解明する、教訓を明らかにする。このことが大事だと思います。どのように受け止めていますか。
【教職員課総括課長】
最初に、委員から県職員の自死事案に関係して、教育委員会にも関係があるのではないかというお話がございましたが、その件に関しましては、ご遺族から故人を特定されたくないという意向が示されており、今回故人の勤務場所等について明らかにしない形で議案の説明あるいは記載が行われていると承知しておりますので、当該上司について県教育委員会での勤務経験があるかどうかについてお答えすることについては差し控えさせていただきます。
そのうえで、人事異動に関する引き継ぎの問題とかさまざまありました。この盛岡一高から不来方高校にこの教諭が異動する過程において、人事異動に関する十分な引き継ぎが行われなかったこと、あるいは県教育委員会、当然教職員課になりますが、教職員課においても前任校における校長からの報告を鵜呑みにして、人事管理を要する職員としての意識が薄く、そういったことから異動先である不来方高校の校長に対して情報共有が適切なものとならなかったということで、当時の対応が大変不適切だったということはモデルの過程の中にも整理しているところでございます。
そういったことの改善策として、令和6年に取りまとめた「岩手モデル」の中では、学校の管理職において、所属教職員に不適切な指導があった場合については記録を保管し引き継ぐことであるとか、県教育委員会としても十分にその情報を共有し、特に不適切な指導など非違行為に該当するような疑いのある教職員については、関係部署を確実に引き継ぐなどの対応を行うということにしているところでございます。
【斉藤委員】
不来方高校事件、その前段である盛岡一高事件というのは、本当に徹底して究明されるべきだと。13回に及ぶ策定委員会、専門家として参加した方々が「県教委の調査はずさんだ」と言っているんですから。そしてそれは2年後のパワハラ事件に教訓が生かされなかった。本当に第三者による徹底した調査を求めるべきだということを述べて質疑を終わります。